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料理が生きる力になる

重いっ、くさいっ。クレームブリュレにスプーンをさすと、ズボッとやわらかなプリンの沼が現れるように、後半に行くほど、重くて深くてくさいシーンが登場します。

町田そのこさんの作品は、家族の問題を抱えた人や、生い立ちに問題がある主人公が登場するイメージがありますが、この本は、これでもかっ!というほど、後半に行くにつれて家族に問題を抱えた人物が続々と登場しては複雑に絡み合っていきます。

タイトルにもなっているように、そこの軸となる部分には必ず料理があり、一つ一つの料理が深い傷を癒していくという物語なのですが、私には少々恥ずかしくて目を伏せたくなるようなくささを感じました。

でも、料理には人を救い、癒す力(生きる力)があるというメッセージは大好きだし、経験者でないと表現できないようなリアルな心情の描写はさすがでした。

クレームブリュレのような、降り積もった雪に足をとられてしまうような小説でしたが、冷たい沼から抜けたときの爽快感や温かさを味わえる一冊でした。

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