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農家嫁が想う「規格外商品」と「付加価値」との狭間。

果樹農家に嫁いで初めに農産物で衝撃的だったこと。

①あまりにも美味しい新鮮な果物。

②旬の時期に畑に山盛り置かれている果物の山。

これは、どちらも衝撃的で、両方あって余計に良くも悪くも私のショックを増長していた。

私だけではなく、農家にいる全員が「もったいない」「どうにかしたい」とは思っている。

そりゃあ、丹精込めて自然と向き合い1年がかりで作った農産物は我が子そのもの。

一つも無駄にしたくない気持ちは、農家自身が一番わかっている。

本当はそもそも農家の本質的なしあわせを考えると、「贈答用」「規格外」なんて基準を作ることは、自然相手のものなのにどうなんだろうと思うところもある。

毎年、すべてにおいての条件は絶対違うし、天気だけはコントロールできない。形なんて全く同じものなんて自然界でできるはずがないのだから、「規格」をつくる事が不思議でしょうがなく、日々空を見上げながら葛藤するわけである。

(そこから私の場合は、畑の"ありのまま"現状とその"不思議"を伝えることで何か変わるかもしれないと思うところから、スムージーアドバイザーを取得して食育ワークショップを続けているのだが、そこはまた。)

とは言え今の世の中の仕組みに文句だけ言っていてもしょうがないと思うわけで、農家の女性たちは「規格」に漏れた農産物を台所で腕を振るって料理にして家族に食べさせたり自分が楽しんできた。

果物をいろんな調味料で煮てみたり、果物でもおかずに使えないかとか、お菓子にはやっぱり合うよねとか、まるで理科の実験のように台所で農家の女性は頭をひねっている。

特段に美味しくできたものが家族にも認められれば作った甲斐があるし、さらに自信がつけば、ご近所さんにもお茶の時にお出ししたりしたくなり褒められれば嬉しくなる。

そんな一連は農家の女性なら日常のようなもの。

ちなみに我が家では、りんごを収穫し終え落ち着いた後で、蔵に保存しておいたりんごを義母がドライフルーツにする。

夜ご飯の片付けが終わってテレビをみながら無心でりんごを切る。乾燥機はそんなに大きくない家庭用機械なので、乾燥機が空いていればひたすら切っていた。

それが出来上がると子どもだちのおやつになる。子どもたちが美味しいと喜んでるのは作った本人は嬉しいし、私もお友達におすそ分けしたりすると、決まって喜んでもらえるのでとても嬉しかった。

(ちなみに、そういうのがきっかけで、私のブランドが出来上がってきた。それはまた違うところで。)

で、それでも食べきれない。もちろんご近所に配ったり親戚におすそ分けしてなんとか減らすがそれでも減らない。

そうすると、畑の隅に集めて土に還すという流れになる。(この様子をみて嫁いで衝撃を受けた私。)

そういう流れから「じゃあ少しでも誰かに食べてもらえたら・・」となり「加工品を作ろう」となっていたのがしばらくの日本の傾向だった。

小さい農家は、そもそも加工している時間も余裕もないのでその選択肢すら取らない場合もある。

加工を目指した農家でも、ここ最近は、農家自身が「加工」と「生産」は別の事業だと経営的にも体力的にも実感したことや、研修なんかでも商品開発のノウハウも浸透してきていて、プロダクトアウトの商品はNGだとわかってきた。

例えばジャム。スーパーには大手企業の認知度の高い安価な商品がずらっと並んでいるし、直売所に行けば「○○農園ジャム」が勢ぞろい。

これだけ競合が多い市場でどう自分の商品を売るか。(そもそも売りたい場合と、趣味なのかでも変わるけど。)

そこで言われてくるのが必ず「付加価値」をつけるという事。

何が「価値」とするかは、もちろんそれぞれ違うし、表面だけでは「本当の価値」は付けられないのでかなり掘らないといけない。

一般的には、特性、性能、機能、パッケージデザイン、などなど商品自体の価値の場合もあるが、その農家さんの背景やストーリー、想い・・なんかもある。

とにかく他と違う魅力的な"何か"=【付加価値】を伝える事を徹底することで、初めて手に取ってもらい購入してもらうことができるというわけだ。

そこで気づくのが、前文の方で書いた【規格外】の話。

規格を作ることは、自然界や農家からすると違和感がある一方で、農産物に【付加価値】をつけた状態が、まさに「贈答用」や【規格外】商品ということだった。

その基準をつけたことで、形が整っていて色も綺麗で味も間違いなく美味しい(だろう)というもの程高く売ることができる。桃やりんごはお中元やお歳暮に届けられる果物なのである程度先の売り上げも見える。

だけど、そこから外れてしまったモノたちが【規格外】として、農家の女性たちのお料理のネタになりおすそ分けになり、そしてそれでも食べきれないものが畑の隅に山盛りになっていったのだった。

今はその私たち人間がつけた【付加価値】に、自分たちで苦しんでいる。

割り切っている人も多いかもしれないが、私としてはなんとかそこを色んな人や果物たちがしあわせな形で着地できないかと願う。

農産物自体に、規格という事ではない【付加価値】をつける方法もあるのでまたそこの話も掘っていきたいと思う。

農家の【付加価値】と【規格外】の葛藤はまだまだ続く。


フリーランス農業女子:愛実

\今日のManami’s  comment/
エジプト人のご主人を持つお友達が教えてくれた話。エジプトに行くと農産物が規格関係なくマーケットで積んで売られていて、そこの主婦たちは、その中から「本当に良いもの」を見分けて買って行くそうです。その「見分ける力」は、子に受け継がれていく。「生きる力」ってきっとこういう事なのかもしれないなと思いました(*^^*)

【Berry's Garden】
福島発アグリブランド、Berry's garden代表。「Pocket of “love berry” time:日常のちょっとしたスキマに、愛、実る時間を。」 をテーマに、クオリティや想いを大事にした日常の一息つけるスキマ時間を幸せに感じられるアイテム・イベント・ライフスタイルと「可愛い楽しい農」を提案。“あなたのスキマに幸せをお届けしたい”という想いをブランドを通じて発信している。

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