小説「オレンジ色のガーベラ」第7話
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第7話
ちひろのオフィスから帰ってきたみずほは、早速自分の机に向かった。
元来真面目なみずほは、やりたくてウズウズしていたのだ、ちひろに言われた宿題を。
「えっとぉ、過去の自分を癒やすのかぁ。一つ一つやっていこう!その時のシミュレーションを思い出して過去の自分になって感情を感じるワークは、あとでお風呂タイムに回して、と。
昔の自分にお手紙を書こう!さて、いつのみずほちゃんに書こうかなぁ?」
そのようの頭の中で考えていたみずほは、鼻の下にシャープペンを当てて、しばし思案した。
「そんなに昔じゃなくてもいいよね。例えば、この前のちひろさんと会ったときの自分宛てでもいいんじゃないかな?」
そう思いついたみずほは、早速書き始めた。
「みずほ、こんにちは。数ヶ月後のみずほです。あの日お父さんが仕事の還りが遅くなったのに、雨が降ってきましたね。それなのに、傘を持って行かなかったことにも知っていましたね。氣を利かせるつもりで勇んでバス停に向かったのに、自分の傘は持っていなくて。
でも、どうしてあの時、ずぶ濡れになっていたのですか?お父さんの傘を差していても、きっとお父さんは怒らなかっただろうに。
なにかしらお父さんに訴えたかったんだよね。でも、それがうまく表現できなくて、その気持ちがぐるぐるしてしまって……。
辛かったねぇ。なかなかお父さんにうまく伝えられないよね。勇氣出したいんだよね。みずほは良い子だよ。
頑張ってる。でも、何を伝えたいかもう一回考えてごらん。きっとうまくいくかもしれないから。
少し後のみずほはとっても元気に過ごしています。未来は大丈夫。風邪もひかなかったしね(笑)
強力なサポートしてくれる人と出会えるよ。
だから、なんくるないさーって、なぜか沖縄の言葉だけど(笑)
大丈夫。お父さんとの関係は、なにかしらの学びのため、経験のためなんだ。だから、きっと乗り越えられるよ。
今のわたしじゃまだ解決策までは見えてないけど。大丈夫なことだけは分かってる。お父さんのことを一緒に解決してくれる人がいるってうれしいよ。そういう人が身近に顕れるから。
一人で自分のなかでぐちゃぐちゃ考えてうまくいかなくても、それも学びなはずだから。大丈夫。みずほの未来は明るいのだ!」
書いていて、みずほは吹き出しそうになった。癒やすというより今の自分を含めて励ましている手紙になってしまったから。
「あれ〜?もう少ししんどいワークかと思っていたのに、なんか自分を応援した手紙みたい。面白いなぁ。もうちょっと小さい頃のみずほに書いてみるか!」
次に書いたのは幼稚園の頃のみずほ宛てだ。
「みずほちゃん、こんにちは。
今日もあなたは泣いていましたか?よく泣いてばかりいましたね。みずほちゃんは心の中に表現したい思いがあっても、なかなか言葉に出なくて、苦しかったですね。自分の思いを勝手に想像されて、全く違う親切をされて、また泣いてしまったり。
お父さんに、なぜみずほは泣くんだ、って怒られるとまた涙がいっぱい出てしまいましたね。
でも、大きくなっていくと、少しずつ自分の思いを言葉に出来るようになりますよ。人より成長が少し遅かっただけだから。決してバカでもなんでもないです。
あなたは心優しい子です。
お母さんと一緒に買い物に行った時、重そうな買い物袋を一つ持って、うんしょうんしょ、と運んでいましたね。近所の一つ年下のまあ君の手を引いて一緒に幼稚園まで行ってあげましたね。
お父さんのご飯茶碗にご飯をよそってあげましたね。
とても頑張っていましたね。
泣いてもいたけど、きっと笑顔だったときもあるでしょう。うれしいときもあると思います。泣いた悲しいこともあるとは思うけど、あなたの未来は明るいです。
大丈夫。きちんと成長できるから。
ちゃんと順調に育っています。それほど胸は成長していないけど(まぁ、それは幼稚園生のみずほちゃんにはまだ氣にしなくていい話しですね)。
みずほちゃん、あなたは大丈夫。今は泣いてばかりかもしれないけど、泣かない日が圧倒的に多くなる未来が来ますから。
だから、泣きたれば泣けばいい。あれ?励ましているのかな?(笑)
ともあれ、大丈夫です。みずほちゃん、安心して大きくなってください。
未来のあなたより」
うわー!なんかうれしい。こんな氣分になるんだ。とっても不思議だなぁ。
これ、全人類がやったほうがいいんじゃない?
わざわざお金払わなくても紙とペンがあれば、誰でもできるじゃん。あ、文章は書けないと難しいか。
でも。
なんか軽くなったなぁ。
うん。そうそう。大丈夫だよ、って思えてきた。
不思議な感覚。
あれ?お父さん大好きだぁ、って思う。自分のわだかまりが少し溶けたのかなぁ?
なんかちょっとじんわり幸せ。これが自分を癒やすということなのかぁ。
ちひろさんはこういうワークを自分でもやっているのかな?すごいなぁ。こういうのを教えてもらえて、ありがたいなぁ……。
そこまで思いを巡らせていたみずほは、ハッと時計を見た。
「あ!今日はお母さんに夕食の手伝いするって約束してた!もう6時だ。お母さん台所いるかな?」
書いた便箋を机の引き出しにしまい、階段を駆け下りて行った。その足音はとても軽快だった。
(2,166文字 トータル16,721文字)
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