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小説「オレンジ色のガーベラ」第15話(最終話)
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第15話
「じゃあ、次回は来週同じ時間にお越しください。ゆっくりで大丈夫ですよ。お薬は止められるものですから。
ではまた。お氣をつけて」
その日最後のクライアントを見送ったちひろは、アップルミントとローズマリーのフレッシュハーブティーを淹れた。
さっぱり氣分に変えたかったからだ。
じっくりと葉の成分がお湯に出ていく様を眺めながら、お得意の取り留めのない思考の
小説「オレンジ色のガーベラ」第14話
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第14話「結局、統合失調症だとされたのは、常識的に考えるとおかしなことを言っていたからなんですよ」
そうみずほは話し始めた。
「あ、俺もそう。大人の『こうあるべき』から外れると、みんな病院で診断を仰ぐんだよね。自分の子供がどんな状態でも理解してやれ、って思う。
本人だってそれまでの精神状態と違うのは分かっているから、不安で堪らないんだよ」
同じく真也も賛同した。
小説「オレンジ色のガーベラ」第12話
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第12話
みずほの件はこれで落ち着く。あとは、真也のほうも正子が態度をはっきりさせれば、一件落着だ。
ちひろは緑茶をすすりながら、ぼんやりと考えていた。
最近、がっつりと薬を飲んでいる患者さんで断薬したいというクライアントさんが来訪しない。もちろん、どんな人でも「このままではいけない、人生を変えたい!」と強く思えば、薬から卒業することは
小説「オレンジ色のガーベラ」第11話
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第11話「中川先生、うちの息子が……」
鈴木正子が電話口の向こうで泣くじゃっている。聞けば、真也とぶつかってしまったらしい。
「でもね、先生。わたし、知らなかったんです。息子にそこまで危険な薬を飲ませていたなんて。お医者様に言われた薬を飲ませていれば、真也はきっと良くなるって思っていたんです。でも、飲んでものすごくぼーっとしているのを見て
小説「オレンジ色のガーベラ」第10話
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第10話「ねぇ、やっぱり薬止めるのは良くないのかしら?
お医者さんも『まだ続けたほうがいいですよ。様子みましょう』っておっしゃっていたし……」
母正子が真也に言った。正子は自分で決められずオロオロしているようだった。
「あのね、母さん。薬止めたほうがいいと思って、中川先生のカウンセリング受け始めたんでしょ?保険きく訳じゃないから、安くないじ
小説「オレンジ色のガーベラ」第8話
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第8話「こんにちは。お世話になります。よろしくお願いいたします」
そう言いながらオフィスのドアを鈴木正子が入ってきた。真也も一緒だ。
「中川先生、よろしくお願いいたします」
礼儀正しく深々と頭を下げた。
「お二人ともよくいらっしゃいました。ありがとうございます。さぁ、お掛けになってください。お茶を淹れましょう」
二人並んでソファに座る。
「外は暑かったでしょ
小説「オレンジ色のガーベラ」第7話
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第7話
ちひろのオフィスから帰ってきたみずほは、早速自分の机に向かった。
元来真面目なみずほは、やりたくてウズウズしていたのだ、ちひろに言われた宿題を。
「えっとぉ、過去の自分を癒やすのかぁ。一つ一つやっていこう!その時のシミュレーションを思い出して過去の自分になって感情を感じるワークは、あとでお風呂タイムに回して、と。
昔の自分にお手紙を書こう!さて
小説「オレンジ色のガーベラ」第5話
4話まで読み逃しのかたは、こちらからどうぞ
第5話
正子と真也のカウセリング計画に目処がついたところだった。
お氣に入りの緑茶を淹れて、一口飲む。僅かな苦味と深い緑の香りが口の中に流れ込んでくる。
ちひろはお茶の時間をゆっくりと味わっていた。
一段落したときのこのティータイムは、自分の心と身体を労ってくれる。
ちひろのお氣に入りのひと時だ。
そこに電話のベルが鳴り響く。
「も
小説「オレンジ色のガーベラ」第4話
全話収録しています。3話までお読みでない方はこちらからどうぞ。
第4話
ちひろは軽いため息をついた。
新しいクライアントさんと話した後は、身体のどこかに凝りを感じる。今日は肩甲骨が固まった氣がする。
肩をぐるぐる回しながら、先程まで書いていたメモを眺める。
クライアントさんと話しているときは、パソコンを開かない。時折メモする程度だ。
精神的に落ち着いていない人でも、なるべくリラック