子供のためのルーブル美術館(37)小さくたって超人気・ルーベンスのスケッチ/大きい絵を小さく描ける実力者
小さな絵でも大きくとらえる
ルーベンスは、フランドル(今のベルギー)の有名な画家です。
あまりの人気に他の画家は、違う町に引越していくほどでした。
今日はそんなルーベンスのスケッチを見てみましょう。
スケッチはささっと早く描く小さい下絵。
ルーベンスは、これから描く大きい絵を想像しながら小さなスケッチを描くのが得意でした。
いつもの絵はこんな特大!
スケッチはこれ。とても小さいけど、
よく見るとなんか大変なことが起こってるんじゃない?
木はとぐろをまいてゴツゴツと
飛んでいる天使の手が赤い服のおじいさんの手をつかみます。
激しい風。黄色の布がうねうねと、宙を舞っている。
苦しそうにたおれている少年の足、空を飛ぶ天使の足。
不思議なことに、おじいさんの手と天使の手は、少年の頭を守るように優しいのです。
足もとの火、煙。
火が消えていくその瞬間、青空がのぞきます。
こんななめらかな筆なのに、嵐のような激しいお話の一瞬が目に見えるようです。
次の絵はまたちょっと違うお話。
このスケッチも、ルーベンスはもういとも簡単に、柔らかい線で一気に描きます。
戦いの神様に、行かないで、と両手で止める女神ビーナス
たくましい戦いの神様が思わず振り返ってしまう、優しいお顔のつややかな平和の神様。
少しの色となめらかな線のスケッチ。
なのに、お話の力強さ、それに優しさまで伝わるようなルーベンスの小さな絵は大人気でした。
400年前のルーベンスのスケッチは、今でも最高傑作のひとつと言われているのです。
Rubens, Petrus Paulus
La Parfaite Réconciliation de la reine et de son fils, après la mort du connétable de Luynes, le 15 décembre 1621, dit autrefois L'Entrevue de Marie de Médicis et de son fils, à Coussières, près de Tours, le 5 septembre 1619, ou encore La Paix confirmée dans le Ciel
1e quart du XVIIe siècle (1600 - 1625)
1621年12月15日王女とその子息の和解 1619年9月5日マリー・ド・メディシスとその子息の会見、または天上の平和の確認とも 1600-1625
Pierre Paul RUBENS
Le Sacrifice d'Isaac par Abraham 1620-1621
D'apès la Bible, Livre de la Genèse
ピエール・ポール・ルーベンス
聖書『創世記』より、アブラハムによるイサクの犠牲 1620-1621
Pierre Paul RUBENS
La déesse Vénus cherche à dissuader le dieu Mars de partir au combat ou Allégorie de la Guerre et de la Paix 1634-1635
D'après l'épopée la Thébaïde du poète latin Stace (40 ? - 96).
ピエール・ポール・ルーベンス
女神ヴィーナスが神マルスに出陣を思いとどまらせようとする あるいは戦争と平和の寓意 1634-1635
ラテン詩人ステース(40 ? - 96)の叙事詩『テバイド』に基づく。
お読みいただきありがとうございました。
ルーベンスのデッサン、恐らくあっという間になんの迷いもなく描いたのではないでしょうか。多作で知られ大作の注文も多く時間のないルーベンスですが、だからこその即興性、見事でした。ルーブル美術館では小さな仕切られた部屋にあるので見逃してしまうかもしれません。
ルーベンスは大きい作品が有名ですが、また改めてモネのような空の絵を描いた晩年の絵をいつか取り上げたいと思っています。
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