子供のためのオルセー美術館(84)白と黒で描く大気/ブラックモン・第1回印象派展でターナーを描く
ここはイギリス、テムズ川の鉄橋。
向こうから1840年に世界で初めて作られた機関車がやってきます。
時速80キロ!それでも当時は、世界最速機関車です。
霧の中から現れた機関車は、煙突から煙を3回、ぼっぼっぼーっと吹き出しました。ゆくての線路には、横なぐりの風と雨。
霧が立ち込める田園風景の大自然と、それに立ち向かう最新機関車をイギリスの画家ターナーは描いたのです。
1871年、ロンドンの美術館でこの絵を見た、モネやピサロはとても驚きました。
この激しく動くしめった空気、光りはどうでしょう。
これまでに見たことのない絵!
そして版画家ブラックモンも同じように感動して、このターナーの絵を版画におこしました。
ブラックモンは、マネやドガ、ピサロに、銅版画の技術を教えた版画の先生でした。
風でうねうねと動く蒸気の空、ぶつかってくる風と雨。
だっだっだっと迫る黒い機関車も、白い雲の中を走っているみたいです。
川辺で手をふる人々、ボートに乗っている人もいるのが見えますか。
ブラックモンはターナーの絵を黒い線だけで表現することができました。
そしてこの作品は、印象派の友人たちに頼まれて、第1回印象派展に他のいくつかの版画と共に展示したのでした。
Félix Bracquemond (1833-1914)
La Locomotive, d'après J. M. Turner 1873
Pointe-sèche Paris, Bibliothèque nationale de France,
フェリックス・ブラックモン
機関車 J.M.ターナーから 1873
第1回印象派展、1874 エッチング部門
ドライポイント フランス国立図書館蔵
JMW Turner
Rain, Steam, and Speed – The Great Western Railway 1844
the National Gallery, London.
ターナー
雨、蒸気、スピード 1844
今日は、ロンドンにあるターナーの傑作を版画にした、印象派と関わりのあるブラックモンをご紹介しました。
版画は色のある絵画に比べると地味ですが、捉えどころのない大気の動きを線だけで表現するブラックモンの版画は見事でした。印象派の画家たちがこぞってブラックモンの版画連盟に名を連ねるなど銅版画は人気があったようです。
ブラックモンはマネがあの有名なオランピアを版画におこすのを手伝ったそうですし、数えきれない銅版画を制作しました。ゴッホが賞賛した『Du dessin et de la couleur(デッサンと色彩)』という本も執筆している実力者です。
そして驚くことに、北斎の花鳥図や広重など、ヨーロッパの画家で日本の絵を初めて直接模写したのは、なんとブラックモンでした。
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