子供のためのオルセー美術館(72)ゆれる、赤。ひなげし/モネとドービニーとあと、
季節は6月、夏の近づくフランス
まだちょっと寒いけど、道ばたにひなげしが咲いています。フランスではコクリコ、と言います。
コクリコは、ひとつの株から50000粒も種ができるんだって。だからもう自由自在!
小さな種は風にふかれ、どこまでも飛んで行って花になります。
今日はそんなコクリコの花を見にいきましょう。
ここはパリの郊外、アルジャントイユ。パリの人たちの人気の町です。
風だ!
丘をふきおろす風は、青い空の雲を散り散りにして、
コクリコや背の高い葉っぱを、優しくかきまわします。
コクリコの赤い花びらは、あっち向いたりこっち向いたり。
ひらひらぐるぐる、ひらひらぐるぐる。
そんな赤いのを、いくつもつんで帰ろう。
さて、ここはゴッホもいたオワーズのバルモンドラ
どこまでも続く広い畑を耕す人が何人もいます。
コクリコのいっぱいなことといったら! どこまで続くんでしょう。
こっちと、
あと、あっちの方にも。
きらきらの赤は空の雲まで届きそう。
あそこの馬、白いの見える? しっぽをふって気持ち良さそうでしょ。
まぶしいくらいたくさんのコクリコを描いたのは、若いモネやゴッホよりずっと年上のドービニーでした。
いつもフォンテヌブローの森を描いていたドービニーは、こんなまぶしいコクリコの絵を描いてみんなをあっと言わせました。
そしてとっても大きい絵だったのです。
さあ、最後のコクリコ、
誰が描いたか、わかるかな?
そう!
やっぱり描いてた、ゴッホも。
コクリコの赤いの、みんな大好きなんですね。
Claude Monet
Coquelicots 1873
Première exposition impressioniste, 1874, n° 95
クロード・モネ
コクリコ 1873
第一回印象派展1874
Charles François Daubigny (1817-1878)
Les Champs au mois de juin 1874
Salon, 1874, n° 522
Herbert F. Johnson Museum of Art
シャルル・フランソワ・ドービニー(1817-1878)
6月半ばの田園 1874
サロン1874
Van Gogh
Champ de coquelicots 14 JUIN 1890
La Haye Kunstmuseum Den Haag,
ファン・ゴッホ
コクリコ畑 1890年 6月14日 今回は部分 参考
お読みいただきありがとうございました。
季節の花、鮮やかなひなげしの赤はいかがでしたでしょう。
今回初めてご紹介したドービニーのコクリコの絵は、現在開催中の印象派150周年企画展でも最も大きく横幅が220cmある大作です。この絵は当時伝統的なサロンの展覧会に出品されましたが、同じ年に開かれた第一回印象派展に展示されてもおかしくない斬新さでした。
1861年当時のドービニーへの批評が残っていますがそれは、10数年後、1874年に印象派を始めた画家たちが批判された内容と同じでした。
「ドービニー氏は、このような真実で正確で自然な感覚を持つ風景画家でありながら、第一印象に満足し、細部をこれほどまでに軽視しているのは本当に残念だ。彼の絵はスケッチにすぎず、それもそれほど高度なスケッチではない。従って、この緩い画風は、画家の将来にとって危険なものであり一刻も早く捨て去らなければならないと思われる」(テオフィル・ゴーティエ)
ドービニーは、クールベと同様、印象派の新しい世代の画家に影響を与えた画家のひとりでした。
企画展デモビデオ
参考 ドービニーのバルビゾン派オルセー美術館5分