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階段本棚

自宅に帰る日程を翌日に遅らせてまで立ち寄りたかった早稲田大学にある国際文学館。通称、村上春樹ライブラリー。念願だったその館内に立ち入ると、この施設を象徴する場所『階段本棚』にやはり足が向く。大階段向かって左側の本棚には村上春樹氏の描く物語を起点に、そこから導かれる言葉や考え方、社会の移り変わりなどをテーマにした本が配架され、右側の本棚には、様々なジャンルの世界で、日に日に広がり変わり続ける文学の流れを俯瞰している識者たちによって選ばれた本が並んでいる。

大階段向かって右側の「現在から未来に繋ぎたい世界文学作品」と題した本棚には僕が自宅に所蔵する本と同じものがいくつもあった。だからだろうか、この棚にとても心惹かれた。夜通しこの場所で過ごしたいなと思うほどに。だけど、その日は家に帰らなくちゃならないから、夜通しどころか、そもそもそれほど長居はできなかったんだけど。だから仕方なく、当たりをつけた本を壁面から次々と手に取り、扉を開いた先にある最初の数ページにさっと目を通して、これは面白そうな本だなと思ったら、館内スタッフの方からお借りしたシャープペンシルを使い、著者と題名をメモ帳に書き写していった。

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発つべき時間が迫る中で慌ただしく情報を書き留めた本5冊。手に取りたい本はもっとあったが残念ながら時間切れだ。次回は、開館から閉館まで丸一日その場所で過ごせるくらいの時間を携えて戻ってこようと心に決めた。最後に手にした本を書架に戻し終えた時、大階段の上のほうでここではない世界へと繋がる井戸のある風景の表層を切り取る無機質なシャッター音が響いた。つい反射的に視線を向ける。だがそこに人影はなかった。

◎メモに書き留めた5冊

・スティーヴン・ミルハウザー『私たち異者は』

・滝口悠生『高架線』

・キム・ヨンス『世界の果て、彼女』

・レベッカ・ソルニット『わたしたちが沈黙させれれるいくつかの問い』

・保坂和志『小説、世界の奏でる音楽』





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