見出し画像

タコス警察メキシコ研修編③ Pujol

タコスといえば屋台が一番だ。メキシコ人の間で、この一文の支持率は間違いなくPRIよりもAMLOよりも高い。

しかし、この大多数の意見に挑戦している人物がいる。最新の世界レストランランキングで13位に位置するレストラン "Pujol" の創設者エンリケ・オルベラだ。

The challenge that chefs face trying to present Mexican food is that we have these ingrained ideas of what Mexican food is and isn’t. It’s thought of as being fairly cheap, people wouldn’t spend a lot of money on Mexican food whereas they would on French food or Italian food.
Colman Andrews
Most people in Mexico will tell you that the best tacos are eaten on the streets. So it was a challenge for us. How can we make a better taco than the ones that are sold in the streets?
メキシコのほとんどの人は、最高のタコスは路上のやつだというだろう。だから、それが我々にとっての挑戦なんだ。どうやって路上のタコスより美味しいものを作るか、はね。
Enrique Olvera

かっこいい。我々タコス警察も路上のタコスが一番だと思っているが、こう言われると反論のしようがない。
決まりだ。これは食べて判断するしかない。

今回の同伴者は不動産会社で営業をバリバリこなす男性Mさん。タコスへの愛は特にないが、Pujolのドキュメンタリーを見せたら居ても立ってもいられなくなってしまった感度の高いパンピーである。

※「路上のタコスよりうまいのか?」という問いに答えるため、彼には特別研修を施してから臨んでもらった。

完全予約制のPujolの入り口でスーツ姿の屈強な男性に名前を告げると、カウンター席に通された。経験したことのないレベルの格調の高さを感じさせる店内にビビるタコス警察。

ファーストドリンク。先に酔わせて感覚を麻痺させる気だな。受けて立とう(うまい)。


まずは前菜3品が出てきた。胡麻豆腐のような食感のタマル(実際に豆腐にインスピレーションを得ているらしい)は絶品であった。
小さなトルティーヤは表面をカリッと仕上げ、中には貝の旨味が詰まったソースが入っていた。
ベビーコーンがまとったソースはマヨネーズの甘みとコーヒーの苦味が絶妙だった。
3つすべてに微かに入った唐辛子の味はメキシコ料理へのリスペクトだろう。これまでの経験を凌駕する美味しさだったが、タコスが本番だ。そんなことは関係ない。

2品目は省略して、3品目から、ようやくタコスが登場した。なんと、ナスのタコスである。トルティーヤにはhoja santaというメキシコの薬味を貼りつけてある。見た目を綺麗にしたところで、惑わされんぞ。

ぱくり。いや、うまい。めちゃめちゃうまい。ストリートタコスの味わいに必要不可欠な脂を、いや肉さえも用いていないのになんだこの旨味は。このナスはたんぱく質でできているのか。

続いて、カリフラワーのタコス。カリフラワーは鶏の脂で揚げてある。カリフラワーの甘みに脂の旨味と香りがプラスされ、さらにサルサがインパクトを加える。

※カリフラワーの素揚げがタコスとの相性抜群なことに気づいた我々は、のちにこのアイデアをパクることになる。

5品目はホタテのトスターダス。

6品目はカジキのアル・パストール。ここまでくれば、絶品であることは言うまでもない。下に敷かれたパイナップルは遊び心だろうか。
アル・パストールといえば、脂と攻撃的な辛さが特徴的なタコスである。もはや、アル・パストールとはなんなのか、わからなくなってきた。

7品目はワタリガニのタコス。脱皮直後のワタリガニを絞めることで、殻が柔らかい状態で出すことができる。それを揚げたのだから、中にはもちろん、カニのエキスがたっぷりと閉じ込められていた。


8品目のモレ・マドレ。モレとは、カカオなどの香辛料を混ぜ合わせたメキシコの代表的なソースだが、Pujolでは、何百日も継ぎ足してより深みのある味を作り上げている。黒い方が継ぎ足したソース、明るい茶色の方が新しいソースである。

In Mexico, we grow up eating mole. It is central to Mexican cuisine. If you’re celebrating something, then you’re having mole. Mole is chaos. There is ingredients from almost everywhere in the world, and when you put them together, it makes sense. They become Mexican for some magical reason. And I think that summarizes Mexico.
Enrique Olvera

ちなみに、各料理に合わせたドリンクも提供された。特に地域性にこだわっているようで、オアハカ料理であればメスカル、西海岸料理であればバハカリフォルニアのワインといったように、フードとドリンクの産地を合わせていた。


本題に戻ろう。Pujolのタコスは路上のタコスより美味しいのか。美味しい。以上である。ここのタコスには、完全に圧倒された。

最後に、エンリケ・オルベラの言葉を紹介して締めくくろう。

In order to produce a taco that is amazing, you must understand how a taco is built. And I am not referring to diagrams and case studies about a taco. I’m just saying you have to eat a lot of tacos to know how a good taco feels in your mouth.
Enrique Olvera



恐れ入った。だが任せてくれ。日本のタコスの平和は、我々タコス警察が守る。



今日のタコス屋
Pujol (ウェブサイト http://pujol.com.mx/
予約必須
Tennyson 133, Polanco V Sección, C.P. 11560, CDMX, México

おすすめのメニュー
調査時点で二つのコースがあったが、フルコースを強くおすすめする。

参考
Chef's Table, シーズン2, 第4話, エンリケ・オルベラ

(ところでMさんは・・・?)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?