見出し画像

【リハビリ関連】運動療法は練習よりスパーリング

(決してふざけた記事じゃありません)

えばらです。

医療現場で患者さんと向き合う理学療法士には実技練習はつきものです。学生のうちから検査技術、介助技術、運動療法の技術を学びますし、経験が浅い理学療法士は職場で練習しあったり、講習会で実技を学び日々研鑽します。

先日、NPO法人ペイン・ヘルスケア・ネットワークの事業の一環で、『道場破り』という企画をやりました。

道場破りについてはこちらFBページ↓↓

この企画、言ってしまえば単なる勉強会、実技練習会です。

今のご時世では感染拡大の観点でなかなか開催しにくいのが現状でして、今回も人数を最小限に抑え、3密回避、強制換気のもとで行いました。

そこで改めて感じたのは、

「言葉で伝えられないことを感じ、議論し、習得できる実技の良さ」

です。この事業の中でyoutube用動画を撮影していました。私は『やさぐれキャラ』で仕切っていましたのですが(この件につきましてはいずれ公式チャンネルで公開されると思います)、キャラ設定が高じてしまい、

『もうさぁ、能書きはいいから、スパーリングやろうぜ!スパーリング!』

とふいに心の声が現実に出てしまいました。

実技練習は、何も考えずただ言われたことをやれば終わります。それだと方法は身につきますが、一緒に学べる背景の理論や基礎知識がふっとび、せっかくの学びの場が非常にもったいないことになります。無意識に口に出たスパーリングやろうぜは実技練習を刺激する劇薬のようでもあります。

スパーリングとは、ご存じのように主にボクシングなどの格闘技で使われる用語で、実戦形式に近い形で行う練習です。ヘッドギアなど防具を付けて行い、安全には注意しますが実際に打撃をヒットさせ、関節技を仕掛けに行きます。

運動療法の実技練習とスパーリングとの共通点を挙げながら、感じたものをルールとして挙げ、運動療法実技練習を再考したいと思います。

画像1

ルール① 目的をもって行う

「何のためにやる?」をはっきりさせましょう。

「実技がうまくなりたい」では目的がフォーカスされておらずまだまだぼやけています。
昔新人PTに「もっと強くなりたい。強くなるにはどうしたらいいでしょうか?と言われたことがありましたが、これはさらに意味不明です。強くなるってなんだよ!ほんとにもう。
話はそれましたが、実技で習得したいターゲットに絞らないとだらだら練習することになります。

ちなみに今回の道場破りでは、『非器質的疼痛に対する評価と運動療法』、中でも会陰部の痛みに絞っています。しかも、メカニズムと評価実技そのものは動画で事前学習してもらいました。講習開始時にわかっていることと分からないことが明確になっているのです。
そのおかげか、当日は焦点が定まった質疑応答から入ることができたので、非常にスムースでした。評価方法も方法は事前に伝えておいたので、
『何のためにやるのか』
『どこを見ているのか』
『解釈をどうしたらいいのか』

を伝えることができました。知りたいことや教えることを絞るのも目的を持ち深めるのに必要なプロセスです。実技練習目的がはっきりしますね。

ルール② やられた者がやり返す

ハンムラビ法典のことではありません(笑)。

画像2

運動療法スパーリングでは、まず
実技が出来る者を『コーチ役』
受ける者『被験者①』

を設定します。

コーチは①に対して実技を行い、実際に受けて感じたことを覚えておくようにします。①役には感覚が鋭かったり、身体感覚を言語化できるものが最初は適任だと思います。

そして終了したら、①が次の『被験者②』に自分が受けたものを提供します。やられた者がやり返します。関節を動かしたり、筋を伸長させたり、介助したりは受けた者が一番よくわかっているとNDT(neuro developmental thrrapy)系運動療法の実技練習会で学んだことを生かしています。

腰痛体験記(楠田なおこ)

なのでスパーリングは最低3人いると効率よく行えます。コーチと①が実技をしている間、②はその様子を俯瞰で観察して手順を確認しつつ、間違ったところがないかレフェリー役を兼ねるといいでしょう。

同じ行程を2周くらいしている間に、受けた者の身体感覚は学習が進みますし、患者・クライアントが受ける気持ちに近づくことができます。

ルール③ スパーリング中は変な遠慮や手加減や容赦をしない

画像4

講習会で教えていると目立つのが、どう考えても見たり聞いたものと違うことをやってしまうこと。どんなに丁寧に説明しても、耳や目から入った情報を脳で認知して、手を動かそうとするときに違う動きとして出てしまうことが多いです。

その時に、被験者①になる人は触れられたり把持されているところが合っているのかどうかを、被験者②の観察と合わせて修正し間違いを正します。違うことやって覚えてしまうのが一番よくないことだからです。

またストレッチであればターゲットマッスルがしっかり伸長されているかを施術者と被験者で確認します。上腕二頭筋を伸ばしているつもりでも、三角筋前部繊維に伸張感を感じているのなら、できているが効率は良くない(内容がよくない)ことを伝えます。

実技練習は持ち方や、介入の程度により痛みが生じることがあります。痛みが生じているのに我慢するのもよくないです。施術者は被験者の表情を見ながら行いますが、自制内を超える痛み(患者さんを想定して)は伝えるべきです。

特に目上の方、経験年数が長い方に対して、下の者が遠慮しがちですが、実技練習でも遠慮はなしです。言いずらい?みんなが成長する場に言いずらいも何もないです。指摘した方がむしろ有益であることを、グランドルールとして実技練習が始まる前に毎回確認しましょう。

ルール④ 受けた感想をフィードバックする

私のTwitter実技はスパーリングだと書いたところ、こんな意見をいただくことができました。

ガチで格闘技をしていて、将棋にも造詣が深い理学療法士の堀先生からのお言葉、ありがとうございます。すごく共感します。

施術者に気を使って合わせる必要はなく、被験者は感じたことをしっかり伝えます。施術者との言語でのすり合わせを通じて、身体感覚を表現する練習にもなります。また感じられなくても、繰り返すことが重要です。

『効かなかったとか言ったら悪いかな?』その考えが成長を妨げます。接待プレーのような考えはむしろ邪魔です。的確に感じたことを伝えましょう。熟練した者も、改めてフィードバックを受けることで新たな知見を得ることができます。

一方施術者はフィードバックを受け止め、自分の手ごたえとの乖離がないかを確認します。ここでのやり取りにより、熟練した者と経験が浅いものの間にある考え方の違いを確認することでき、その差を埋める工程となります。

画像3

やりっぱなしに終わらずに感想戦をぜひ行ってください。

youtube『痛みと闘うチャンネル』のご紹介

弊社youtubeチャンネルでも、実技を行つています。

運動療法例:ターンバグ

実際私が話しているこの動画、運動指導を言語化するところに一番時間をかけています。撮影本当に大変だったな~と思い出しました。

普段いかに無意識に指導しているかを痛感しました。モデルさんは運動に長けている方でしたので、短時間で容易に適切な運動方法をマスターしましたが、初めてやる人、運動が苦手な人は本当に細かい部分まで行うこともあります。リハビリで日々行うことですので、手を抜かずに行きたいですね。

チャンネル登録もよろしくお願いいたします。

まとめ

理学療法士が行う運動療法の実技練習にスパーリングの要素を入れることを提案しました。
実技の目的を明確にして、やられた人が感覚をつかんで次に人にやる、容赦や手加減をしないようにし、終わったらフィードバックを心がけましょう。

サポートはこちらで受け付けております。 頂戴した分はNPO法人の運営に役立てます!