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青春はきつね色

いつかの定食屋で。


B「とんかつ定食二つ。ごはん大盛りで」

今日は卒業式だった。卒業式の後、久しぶりに会った腐れ縁のクソ野郎と二人で高校近くのとんかつ屋に行くことに。
A「高校も卒業か~」
B「そうだな」
卒業、してしまった。受験も一応終わった。
A「大学決まった?」
B「国立の結果待ち。お前は?」
A「受かった」
B「どこ?」
A「〇〇大の文学部」
B「へー」
まあ、それくらいしか会話がない。今は受験終了直後で、時間の大半を占めていた勉強がなくなった。受験勉強中は解放されたらうぇーいwwwと遊びまくってやると思っていたのだが・・・。現実は布団の上に寝転んでぼ~っとして、たまに手の届く範囲にある漫画を読んだり、何となくテレビつけて眺める。それくらい。
友達誘ってどっか遊びに行け?学校ないから会わないし。
じゃあメールで聞け?

「やっほー!大学受かった?www遊びいこうぜーwww」

五分後
ん?電話?あいつからだ。
「もしもし~」 
「・・・コロス」
ブツッ
あ、やっちゃった☆


とまあこうなる可能性もあるので・・・
そういうわけで、とりあえず日々をぼ~っと過ごしていた。
そして、今に至る。いやまあこいつだったら気にしなくてもよかったかもしれん。
A「なあ、俺らさ、高校生じゃなくなるんだな」
制服は卒業である。
B「そうだな」
春からは大学生になる。
A「大学生になったらさ、映画の料金高くなるじゃん?」
B「うん。高校生料金じゃなくなるからなぁ。千円じゃ見れなくなるなぁ」
A「だから、受験が終わってからさ、映画観に行ったんだよ」
B「へぇ、何観たの?」
A「恋夏」
B「あぁそれテレビでCMやってたな。 ・・・ん?」
あっれぇ。なんかひっかかるような...
B「あのさ、それって高校が舞台の青春恋愛映画・・・?」
A「うん」
B「・・・甘酸っぱい感じの?」
A「うん」
B「でも、途中から辺境の島でバトルロワイヤルとかになったり?」
A「ううん」
B「先生の頭爆発して命がけのお遊戯始まったり?」
A「いや」
B「クラスの冴えない根暗男子が女子生徒を催眠してイケメンから寝取ったり...?」
A「しねぇよ。健全な青春映画だぼけ」
B「どんな感じの...?」
A「どんな感じって、少女漫画原作の王道恋愛ものって感じだったけど」
B「少女漫画好きだっけ?」
A「ほとんど読まない」
B「ですよね」
おっとぉ...? 追及したくない可能性が...こいつ実は顔はいいんだよな...アホのくせに勉強はできるし...くっそ...
A「・・・誰といったの?」
まあ、姉とかと行ったのだろう。いや姉だよね?妹さん?
彼女?僕の記憶ではこいつに彼女はいない。いないよね?ね?僕と同じで。ね?
A「いや一人で」
B「なんで?」
A「え?」
B「す、好きな女優さんでも出てたの?」
A「いや別に。可愛かったけど」
ま、まあこいつのことだ。何となく見たのだろう。まぁ僕は信じていましたよ。
B「面白かった?」
A「まあ、面白かったよ。今まであんな感じなの見たことなかったから新鮮だった」
B「へぇ」
A「なんか青春!て感じでよかったな。登場人物たちの感情をストレートにぶつけ合うところとかすごいグッときた」
B「おおぅそうか...お前純粋だな... 青春かぁ。俺も見てみようかなぁ。なんか興味でてきたわ」
A「うん...まぁ、ね? 映画は、よかったよ」
B「映画“は”?」
A「俺さ、気づいちまったんだよ...映画の舞台さ、高校、だったんだよ...」
B「スゥ...」
A「高校で繰り広げられる恋模様。感情のすれ違い、そして生まれるドラマ...」
B「あぁぁあああああああああ!!!!!」
A「高校、だったんだよ...」
B「いやいやいやべ、別に恋愛だけが高校生活じゃないしぃ。俺は楽しかったしぃ」
A「知ってるよ。俺も別に後悔してるわけじゃないんだ。うん...」
B「な?楽しかったよな?」
A「うん...でも...」
B「でも?」
A「でもなんなんだろうな...この敗北感は...」
B「やめろぉおおおおおお!!!!」
A「俺らなにしてたんだろうなぁ...」
B「いや...うん...」
A「高校生活、甘酸っぱかったか?」
B「しょ、しょっぱかったかな...?ほとんど野郎どもと遊んでたから、あ、汗臭かったかな?」
A「恋愛、したか?」
B「しししししし、したし!」
A「話しかけることすらできずに教室で目で追っていたことは恋愛とは言わないぞ?」
B「意地張ってゴメンナサイ...」
A「高校生!青春!恋愛!みたいなのってさ、もう手が届かないものなんだな...」
B「いや、ほら!バイトして金貯めて風俗行って制服オプションつければいいだろ!」
A「AVでさ、学園ものって人気ジャンルだけどさ、あれは別にいまJKとヤリたい、というよりも俺らみたいに学生で何もなかった奴らがさこんなことがあればよかったなぁっていう願望のねじ曲がった姿なのかな。高校舞台のエロ漫画とかもな」
B「やめろぉおおおおおお!!!!女子高生もの見れなくなるだろ!!!!」
A「AVとかエロ漫画でJKものが好きですってさ、高校で恋愛できませんでした、何もありませんでしたって自己紹介してるようなもんなのかな...」
B「やめろなんか胸が締め付けられる!!!ま、まあ私はOLものが好きなので?関係ないというかなんというか...」
A「お前さっき女子高生催眠ネトラレもの読んでるって白状してたしな」
B「やめてぇえええええ!!!!!」
A「大丈夫、俺も好きだ」
B「お前と一緒でもうれしくねぇええええ!!!! ...あとでお勧めあったら教えてくれ」
A「ふっ任せろ。 ってちがうそうじゃない」


A「まぁとにかくな、いいか、高校生ってのはな、三年だけなんだよ。そしてその三年ってのはな、心が悩んで悩んで成長する三年間なんだ。未熟だから失敗もいっぱいする。だから、高校生活は青色なんだ。だから、青春の恋愛は甘酸っぱいんだ。」
B「なるほど...?」
A「と、いうのを俺は恋夏で学んだ」
B「...」
A「よ、要するに大事なのは恋愛ではないんだ。恋愛はアクセントでしかないんだ」
B「...本音は?」
A「...はい。高校生で彼女作って制服デートとかしてみたかったです。JKと付き合いたかったです。手をつないで一緒に下校したり、図書館で勉強したりしたかったです。卒業式で第二ボタンがなくなってる男どもがクソ羨ましかったです。もういっそのこと自分でとってしまおうかと思ったけど、私の第二ボタンを欲しい人が現れるかもと、ギリギリまで第二ボタンをそれとなく主張していましたが、欲しがる人は現れませんでした。高校生活終わっちまいました。制服という期間限定アイテムを失いました。友情?なにそれおいしいの?」


「お待たせしましたー。とんかつ定食二つです。味噌汁熱いので気を付けてください」

A「俺らの高校生活何色だったんかなぁ...」
B「そりゃあぁ、青りんごのような青色。 ...青色ではなかったな...」
A「なんか、高校生活のほとんどお前と駄弁ってた気がするわ...茶色だな...」
B「恋愛は、だ、大学があるし...」
A「きつね色...」
B「え?」
A「きつね色だな。高校生活で男どもの油にまみれ、煮えられて鍛えられた俺たちはとんかつだ!揚げたてじゃぼけぇ!!」
B「おぉ!そうか!食べごろじゃないですか!大学でサークルに入って美人な先輩に喰われるんですね!わかります!唇が油で濡れるんすね!なんかエロいですね!」
A「その妄想キッモ!だがそうだ!青春が青いなんて誰が決めた!?青りんごは赤く熟すだけだからな! ...いや、りんごは赤いと甘くておいしいな...むしろ赤いほうが人気だな。とんかつは揚げられてからじゃないと食えないな...」
B「つまり俺らがやっとスタートラインに立ったのに対し、高校で甘酸っぱい生活を送ったやつは真っ赤なあまぁい大学生活を育むと...」
A「うぉおおおお...」
B「四月になったらなんとかなるさ。たぶん...くそ、しょっぺぇなぁこのとんかつ...」



友情は一生ものさ!うん! ね!

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