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【随想】ドラマ『ブラッシュアップライフ』バカリズム

ブラッシュアップライフを見ている。
リアタイはできなかったが、再放送されるというので。
バカリズムの才能が爆発している。
お笑いよりドラマの方が向いてるんじゃないか。
俳優たちの演技力もさることながら
ガールズトークのシーンの台詞回しがえげつない。
本当にバカリズムが台詞を一言一句書いてるのだろうか。
作り物感、言わされてる感、嘘くささがない。
日常をそのまま切り取ってきたような。
つまり、とても自然なのだ。
それでいて、ストーリー運びに不必要な台詞も特にない。
すべての台詞が伏線となって
2周目、3週目の人生を充実させていく。
噛めば噛むほど、味がしてくるというやつだ。
また、ユーモアにも無理がない。
公衆電話へひらすら歩くはじめてのおつかい。
エヴァ戦闘BGMで巻くドラマの現場。
朝最初に扉を開けない気味悪い上司。
毎年妹のLINEで気づく父の誕生日。
カラオケでの不倫暴露コント。
ごんちゃんのタトゥー。
ドラマ内でドラマを作るメタ中のメタ。
雑魚寝したがる友達。
お決まりのポーズで撮るプリクラ。
塚地武雅のハイスピード。
ポテトフライサービスからのドリンクサービス。
忙しいときのマネージャーのタレントの売り込み。
10億円稼ぐ男の広告。
玲奈ちゃん豹変からのマキシマムザホルモン。
愚痴言うための外ランチ。
来世が聞いたことのない動物シリーズ。
ヘッドマッサージを風呂場で使わない父。
薬の飲み方に厳しい麻美。
特別出演、友情出演の意味。
撮影現場での無駄な自己紹介タイム。
夢庵のシャインマスカット。
原型をとどめないあだ名の持ち主たち。
クリアされている逆転裁判。
一軍の服を着ただけの父。
朝10時くらいから出勤している風の顔。
買ってきたお菓子をすぐに紹介しないなっち。
「あるある」や「裏切り」や「すかし」といった
普通に日常で起きそうな笑えるシーンが満載なのである。
しかも、ツッコミが心の声というのがバカリズムらしい。
日々の観察眼がものすごくきめ細かであることが分かる。
まだ4話目だが
1話ごとにエンディングで各エピソードに合わせた
当時のヒット曲が流れる。
1話は国武万里「ポケベルが鳴らなくて」
2話は槇原敬之「僕が一番欲しかったもの」
3話は中島みゆき「ファイト!」
4話は斉藤和義「やさしくなりたい」
粋な演出だ。
そのほかにも
ゲームボーイアドバンス、逆転裁判、ポケベル、公衆電話、カラオケ、シール帳、ラウンドワン、プリクラ、携帯での赤外線通信、花咲舞が黙ってないなど、平成を彩った数々の小道具が出てきて楽しい。
シール交換なんて、よく覚えてるなぁ。
懐かしい。
あれで交渉力を学んだなんて、その発想はなかった。
テンポ感もよい。
1週目を踏まえた上で2周目、3週目の今を追体験すると、
全然違った風に日常が立ち現れてくる。
これは奇妙な感覚だ。
1週目が勝手に伏線になっていくのだ。
3週目に突入すれば伏線をどう回収すべきか、
視聴者も自然と、能動的に考えながら見ることになる。
だからこのドラマは1週目が肝心要である。
ネタで言うところのフリになるからだ。
そう思うと、1話目の見せ方は秀逸だった。
2周目3週目で描かれる要素を、
すべて自然な会話の中で登場させている。
嫌らしくない。
だからあの時言ってたあのことね!と、
物語や人物相関図が繋がっていく気持ちよさを味わえる。
これが無理矢理詰め込まれていたり、説明的であったりしたら
シラケてしまうが、冒頭にも言ったように
抜群の会話劇でごく自然に描かれるので
感動もひとしおなのである。
一つ疑問があるとすれば、
タイムリープしているのが主人公の安藤サクラであるが
なぜこの人だけが何周も人生を送っているのだろうか。
他の人で2周目3週目の人がいないのが違和感である。
まあタイムリープものでそれは野暮なのだが
どうしても気になってしまうのは仕方ない。
水川あさみが今後どのように関わってくるのか
見物である。

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