見出し画像

【LTRレポート】いつまでもお元気で(中学校吹奏楽部 FAREWELL Concert)

(初投稿2023/3/31、最終改稿2023/4/4)

 2023年3月29日の水曜日、東京都町田市の町田市民ホールで、町田市立木曽中学校吹奏楽部(顧問・指揮:田向正人)の「FAREWELL Concert 第10回定期演奏会」が開催されました。17時開場・17時半開演、あいだにそれぞれ10分の休憩をはさんだ三部構成の堂々たる演奏会でした。NPO法人ロングタイムレコーダーズからは3名が、有限会社ディーアンドエーミュージックとともに撮影録音等の記録スタッフとして参加いたしました。

 この吹奏楽部は東京都中学校吹奏楽コンクールで5年連続金賞を受賞するなど、とても優秀な団体だそうで、以前から拝聴するのを楽しみにしておりました。私は吹奏楽についてまったく詳しくありませんが、13歳から15歳と思われる中学生たちは、あらかじめ決められたとおりに動きながら演奏したり、選曲もバラエティに富んでおり、さまざまな可能性に挑み実現させているのだなということはわかりました。(Ⅲ部ではピアノ伴奏による合唱も披露!)

 3年生は2020年に入学しているわけですから、中学時代の3年間をコロナ禍のなかで過ごした子どもたちになります。さまざまな制限がかかるなかで、練習も充分にできなかったかもしれませんが、パフォーマンス全体から精一杯の想いや気概が伝わってきました。

 Ⅲ部は、卒業生9名が順に椅子からたちあがって紹介されるコーナーがメインです。吹奏楽部顧問の田向正人先生が各人にたっぷり時間をとって愉快だったり危険?だったりするエピソードを交え、愛情をもってプレゼンテーションしていきます。数百人の観客のかたがたからも笑いや拍手が起き(そしてたぶん涙も)、この日のピークとなる時間を全員で共有しました。3年間の努力と研鑽にたいするひとつのご褒美であり、これほど自分が「承認される」体験は一生で一度かぎりかもしれません。<世界が手を差しのべてあなたがたを歓迎しています。未来は今、あなたがたの掌のうえにのっているのです!>と心のなかで叫ばずにはいられませんでした。そして私たち年長者はかれらのために何ができるのか、問われているのだと感じました。全員の紹介を終えて、田向先生は、この日巣立っていく9人に「あなたたちともっと音楽がやりたかった」とわずかに震える声でおっしゃいました。

 15歳の中学生のかたがたには、この先、ワクワクすることや楽しいことがたくさんあると思いますが、つらいことやたいへんなこともいろいろあると思います。そんなときに、三年のあいだ真剣に音楽に打ち込んだ事実と記憶は大きな力となるはずです。誠実な演奏家であればあるほど、完全に満足できる演奏など、生きていくなかでまず無いかもしれません。しかし手が届かないとしても、たしかにあのむこうにあるはずの「なにか」を必死で求めた経験は、このさきとても自分の力になるであろうエネルギーを蓄えるのに役だったのではないでしょうか。

 田向先生はひとりひとりへの言葉の最後には必ず「いつまでもお元気で」と声をかけられました。そうです…ここから巣立っていっても、いつも、いつまでも、元気で幸せにすごしてね、という祝福の言葉は、なによりの贈りものであったでしょう。かれらの内側を照らしつづけるであろう、静かな炎に着火したという意味で、田向先生は素晴らしい教育者であると思います。今後変化し続ける(し続けなければならない)かれらの、土台となる基礎部分に、大黒柱になりうる太い杭を打ち込んだわけですから。土台がしっかりしていればたくさんの工夫が可能になり立派な家が建ちますよね。そして人間というのは変わりつづける(=成熟していく)必要があるのですね。この先、変化し続けることは、多くの困難をともなうわけですが、それは高校以降の生活のなかで生まれてくる次のストーリーになります。楽しみですね。

*****************************

翌日そとに出ると町田のあたりは桜が満開(すこしだけ散り始めていました)、今年は新緑が早いのか、ピンクとグリーンが調和して美しかったです。

(J)

*【LTRレポート】は、NPO法人ロングタイムレコーダーズがイベントのサポートや取材などでかかわった活動のレポートになります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?