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何かを見たときの覚書。
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#映画

「人生会議」と2本のドキュメンタリー映画:自分がどのような最期を迎えたいかを伝えておくこと

1月末に「人生会議」のことを呟いた。 このつぶやきをする少し前に運転免許の更新に行った。 20代後半で未だ原付のみの免許で、なんなら今回は初回更新者として講習に参加した。新しい免許とともに、臓器提供意思表示のお知らせももらった。 私がどこかで脳死状態になったら私の臓器が新鮮なうちに提供してもらえればいいな、と思っているが、これは思っているだけではどうにもならない。 残された家族や親戚、友人らを困らせないためにも、生きているうちに自分の最期をどう迎えたいかを伝えておく必要

台湾映画〈孤味〉:四姉妹物語のひとつとして

〈ストーリー・オブ・マイライフ(以下、若草物語)〉、〈海街diary〉を見て、次は台湾の女性たちの物語を見た。台湾映画〈孤味〉(英題:Little Big Women、邦題:弱くて強い女たち)。父の葬儀を機に集まった女性たちが過去を振り返りながら、現在を強く生きていこうとする話。 はなしの始まり主人公の1人、林秀英は台南で有名なレストランのオーナーだ。彼女は夫が家出をした後もひとりで海老揚げ春巻きを看板料理に屋台を切り盛りし、女手一つで3人の娘を育てながら店も大きくした。

映画〈海街diary〉:喪服と日常映画

長女、幸(綾瀬はるか)、次女佳乃(長澤まさみ)、三女千佳(夏帆)と彼女らの腹違いの妹すず(広瀬すず)の四姉妹が海街鎌倉でひとつ屋根の下、それぞれの想いを抱えながら家族になろうとする物語。豪華俳優陣と是枝裕和監督の映画だ。 このnoteでは映画の感想を姉妹たちの喪服に注目して書いている。また、是枝監督のインタビュー記事を読んで、〈海街diary〉を鑑賞するためのひとつの視点を述べている。 鎌倉や山形の風景はとても綺麗で、鎌倉の四姉妹が暮らす家の様子はとても「日本っぽい」「Th

映画〈ストーリー・オブ・マイライフ:わたしの若草物語〉

長女メグ(エマ・ワトソン)、次女ジョー(シアーシャ・ローナン)、三女ベス(エリザベス・スカンレン)、四女エイミー(フローレンス・ピュー)。主人公の次女ジョーの女性作家としての人生とマーチ家4姉妹の美しい時代を描いた映画〈ストーリー・オブ・マイライフ:わたしの若草物語〉を鑑賞した。このnoteは映画のネタバレを含んでいる。 Netflixでは2月13日で配信が終了することになっているため、まだ観ていない方はお早めに! 原作の『若草物語』は昔読んだことがあったが、長女メグが結

映画「否定と肯定」:真実を追求すること

映画「否定と肯定」が8月26日(木)までGYAOで無料公開だったため、26日夜に大急ぎで鑑賞。 今も昔も差別主義者や歴史をひずめようとする人たちがいる。そしてそれを支持し、拡散する人たちがいる。この映画からホロコーストの事実、否定論者の論法、歴史を否定する人たちや差別主義者と対峙する姿勢、そんなことを考えさせられる。また、すでに事実として認められていることに対して、改めて「真実であること」を証明することの難しさも伝わってくる。 あらすじ歴史小説家デイヴィッド・アーヴィング

映画「プライベート・ライアン」:終戦の日の夜に

2021年8月15日(日)第二次世界大戦の終戦から76年を迎えた。終戦の日は出来る限り「第二次世界大戦」や「戦争」がテーマの映画を見たり、関係のあることをしてみようとしている。 先の8月6日に広島で行われた平和記念式典で、こども代表が「平和への誓い」でこのようなことを言っていた。 「本当の別れは会えなくなることではなく、忘れてしまうこと。 私たちは、犠牲になられた方々を決して忘れてはいけないのです。 私たちは、悲惨な過去をくり返してはいけないのです。」 私たちは平和にな

映画「ビューティー・インサイド」:どんな姿でもあなたはあなた

昨日の夜、映画「パラサイト」の大雨のなか豪邸から逃げ出すシーンから最後までを見た。これで「パラサイト」を見たのは4回目ぐらい。大雨のなかみんなが走っていくシーンは「上にある豪邸」から「下にある半地下」まで"下っていく"ことが顕著に現れていて好きなシーンだ。しかし、この不安定な気持ちでは安眠できない。ということで、 ”Netflixマッチ度94%” を信じて「ビューティー・インサイド」をみた。Netflixのマッチ度、これは恐ろしい。見終わってから「マッチ度94%」に納得し

映画「ファーザー」:混乱を体験する

レイトショーの時間帯に映画館に行くのが好きなのだが、こんなご時世だから気軽に映画館には行けなくなってしまった。「ふらっと映画館に行く」なんてことはもう昔の話なのかもしれない。 「ファーザー」を観に行った。このnoteは鑑賞直後の感想だ。私がもっと年齢を重ねたり、立場が変われば考えることも変わるだろう。*以下ネタバレ 映画を見に行く前日夜にたまたま映画を紹介するテレビ番組で「ファーザー」を見かけた。その中で印象的だったのは、映画を見ている側が"認知症"になっているように混乱

短編映画「隔たる世界の2人」:繰り返される悲劇

Twitterでこの映画を良かったと呟いていた人を見かけて、面白そうだったから見た。32分の短編映画であっさりしすぎず、重くなりすぎず、伝えたいことも明確で良かった。BLM運動のことを全く知らない人にはとてもいい導入になり得る映画だ。 短編映画「隔たる世界の2人(Two Distant Strangers)」主人公の黒人男性は朝、女性の家から愛犬の待つ自宅に帰ろうとする。しかし、アパートメントから出た先にいる白人の巡査に声をかけられる。揉めた末、主人公は警察官に殺される、、

インド映画「パッドマン 5億人の女性を救った男」:生理用品が買えない問題

今日は2018年に公開されたインド映画「パッドマン 5億人の女性を救った男」を見た。Netflixで配信されており、時間は2時間10分だ。生理を経験したことのない人には是非見て欲しい。女性たちが生理で困っている現実があることを知るためにはとてもいいように感じた。 インド映画「パッドマン 5億人の女性を救った男」 主人公ラクシュミは妻想いの青年だ。結婚してから、妻ガヤトリの幸せを一番に考えてきた。 ある日、妻ガヤトリは生理になった。 生理になった女性たちは家の外(ベランダ

インド映画「息がつまりそう」:2016年の高額紙幣廃止

今日、2021年3月29日(月)はホーリーだ。 インドに行っていたら、今日は色粉を投げ合って悦びに満ち溢れた日を周りの人たちと分かち合っていただろう。一昨年はホーリーの時期にインドに行っていた。日本の元号が「令和」になった発表をインドのホームステイ先のベランダで見たのを覚えている。 今日がホーリーだからということではないが、インド映画を見た。 インド映画「息がつまりそう(Choked: Paisa Bolta Hai)」銀行員の妻サリタとミュージシャンを目指していたが今

映画「長いお別れ」:言葉がわからない苦痛

これが三日坊主というやつで、1月1日、2日と順調に更新していたのに4日に3日のことを書いている。 昨日、1月3日日曜日。 Amazonプライムで映画「長いお別れ」をみた。 1日にパラサイトを見て、2日はNetflixの「今際の国のアリス」がついていたため、人が殺されるシーンばかり見ていた。気分転換にと心温まりそうな映画を選んだ。 山﨑努が演じるお父さんの認知症がだんだん進み、バラバラだった家族が再び家族になる話だ。山﨑努の演技はものすごくて、「認知症のおじいさん」その

2020年、今年は「韓国コンテンツ」にハマった年だった。

そろそろ、2020年が終わる。noteもfacebookも「今年を振り返る」的な文章で溢れている。 別に12月下旬だからといって「今年を振り返る」的なことを書かないといけないわけではない。別にこれが2月でもいいわけだし、5月でも9月でも11月でもいいのだ。しかし、この「区切りを作る」/「時間を区切る」ことが「文化」であって、「12月を年末だ」と感じること自体が「socializationした身体」ということになる。 そのsocializationされた私の身体は、2020

映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』 - 不安が差別を生むこと

映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』をNetflixでみた。 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』を見てから、コン・ユ氏とチョン・ユミ氏の出ている作品を見たいなと思っていた。やや「コン・ユ目当て」だ。 ソウルから釜山へ行く高速列車に謎のウイルスに感染した女性が1名乗車する。その女性はゾンビとなり、客室乗務員の女性に噛み付く。列車では瞬く間に感染症が拡散する。列車に乗り合わせた乗客たちは、止まることのない密室の高速列車で生き残るために必死にゾンビと戦う。 コン・ユ演じる