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インド映画「息がつまりそう」:2016年の高額紙幣廃止

今日、2021年3月29日(月)はホーリーだ。

インドに行っていたら、今日は色粉を投げ合って悦びに満ち溢れた日を周りの人たちと分かち合っていただろう。一昨年はホーリーの時期にインドに行っていた。日本の元号が「令和」になった発表をインドのホームステイ先のベランダで見たのを覚えている。

今日がホーリーだからということではないが、インド映画を見た。


インド映画「息がつまりそう(Choked: Paisa Bolta Hai)」

銀行員の妻サリタとミュージシャンを目指していたが今は無職で借金まみれの夫スシャン。ある日、水道管から紙幣の束が湧いてくる。それに気がついたサリタは紙幣をヘソクリし、夫の借金を返し、隣人の結婚お祝いも準備をする。しかし、突然金回りの良くなった妻を不審に思うスシャン。夫婦仲は最悪。加えて、インド全土で高額紙幣の切り替えが突如発表さる。サリタとスシャンの運命はいかに。。。 


2016年の高額紙幣廃止

インドでは2016年に高額紙幣が一斉に廃止された。

どういうことかというと、11月8日夜、突然、モディ首相の演説がテレビで放送され「11月9日午前零時から現行の500ルピー紙幣と1,000ルピー紙幣が無効となる」と発表されたのだ。

私も「またインドに行くから」と思って換金していなかった紙幣があったが、それらは突然価値を失った。その時どうも銀行に行けずに、本当に紙幣が紙になった経験をした。


映画の中でも、隣人のタイが結婚式の資金で困難する場面が描かれている。

このように、何かの支払いの準備をしていた人たちは「新紙幣で支払ってください」と言われお金が準備できなくなってしまった。

私が聞いた話では、銀行が遠い田舎の事業者が旧紙幣で支払いを受けており、そのお金を新紙幣に切り替えることができず、途方に暮れ自殺してしまうという話だった。銀行が近くにある都市部でさえ混乱したのだから、田舎や農村部では本当に苦しい出来事だったと推測される。


他方でモディの決断力はすごいなとも思った。

2016年以前にインドに行ったときは、紙幣でなんでも買い物をした。しかし、高額紙幣廃止後にインドへ行った時にはキャッシュレスがものすごい勢いで普及していた。私は現金を用意して行ったが、それよりインドで使えるQRコード決済のアプリを入れて行けばよかったと思ったくらいだ。リキシャーもUberで呼べるようになっていたから、ほとんど現金を準備していかなくても問題ないような感じだった。(もちろん少しは現金は必要。高額紙幣はお釣りが大変だから嫌われる。)

現金が突然、廃止になる、使えなくなる、という経験をすると現金よりカードやQRコード決済などのキャッシュレスの方が信用できるようになる。


日本だとITやキャッシュレスを促進しようとしても、

「使い方がわからない人もいる」「キャッシュレスは心配」

と声が上がり、どうしてもだらだらした長期計画になってしまう。


他方、インドはどうか。

「明日から使えないのでよろしく!」「長期的にはいいようになるからね」

との一声で混乱は起きるが、それを越えられれば一気に改革がすすむ。


どちらにもメリット・デメリットがあるため、どちらが良いかは決め難いが、少なくとも日本のキャッシュレスやICT活用はだらだらしすぎだから、「使えない」「使い方がわからない」と言っている人を重点的に配慮するんじゃなくて、「これを使わないと今後生きていけないから、それまでにここまでみんな習得して!」と提示するべきだとも思ったりはする。


映画の話に戻る。

映画の中ではインドのlower middle classの生活の様子が描かれている。混雑した電車に乗って仕事に出かける様子。キッチンの様子。排水溝からじわじわ漏れてくる水。何故か水浸しになっている床。洗濯が適当にかかっている室内。結婚式の前に女性たちだけで集まって、ヘナをする様子。ボードゲームをしている埃っぽい感じもいい。

なにより、へそくりをかき集めに行く場面がよかった。ありとあらゆる場所に隠してあるのだが、その隠し場所に行くところが家の中の構造や配置を説明しているようだった。こんなところに隠すのか!という驚きだ。

ボリウッド映画だと煌びやかなインドがよく出てくるが、Netflixは世界に向けたものだ。生活描写が多くないとなんとなく雰囲気が掴めない。個人的にはもっと多くてもいいぐらいだった。

終盤でキッチンの水場が綺麗になっているところがある。あそこからまた人生が変わるのだろうなと予感させられる。そして最後、サリタの服が明らかに変わっている。

やや物足りない感じはあるし、フラグが回収しきれてないようにも感じる。途中退屈なところはあるが、4時間や3時間の大作じゃないので、休憩を挟まず見ることができた。

次はなにみようかな。

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