見出し画像

第4章 比べる

画像14

 今回の内容は以下の3つです。
1. メリットとデメリットを比べる
2. 想定される反論や批判と比べる
3. 暫定的結論を下す

1.メリットとデメリットを比べる

 まず、メリットとデメリットを比べるについて。
 メリットとデメリットを比べるとは、ある問題への解決策の実行以前と以後の現実への影響力を比べることです。

 以下の文章のメリットとデメリットを比べてみましょう。

 私はA子に告白するべきかどうか。私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ。なのに、私は彼女と友達のまま徒に時間が過ぎて胸が苦しい。だが、私がA子に告白すれば、彼女と付き合えた場合、私は嬉しい。一方で、仮に私が彼女に告白した場合、振られる可能性がある。その場合、私は彼女と離れ離れになり、胸が張り裂けるような苦しみに襲われるかもしれない。

 では、どのようにして上記の文章のメリットとデメリットを比べればよいのでしょうか?
 それは、私がA子へ告白することに対して肯定側、否定側に分かれて、私がA子へ告白する以前と以後の現実へのプラスとマイナスの影響力を比べればよいのです。

 そのため、上記の文章のメリットとデメリットを比べられる状態にしましょう。

 まず、議題を明確にしたうえで、肯定側と否定側の主張を考えましょう。例えば、今回は議題は「私はA子も告白するべきか、否か」とします。そして、肯定側は「私はA子の整形を止めるべきだ」、否定側は「私はA子の整形を止めるべきではない」とします。

画像1

 次に、肯定側立論では、メリットを3つの点を根拠に立論します。

 メリット
 メリットとは、問題に対して解決策を実行することによって得られるプラス要素のことを指します。例えば、今回だと私がA子に告白することで生まれる「A子と付き合える」という利益がメリットに該当します。

 ①内因性
 内因性では、ある解決策を実行する以前に問題が存在することを指摘します。例えば、今回だと、私がA子に告白する以前の「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」という状態が内因性に該当します。

 ②重要性
 重要性では、内因性で挙げた問題が現実に対してどのくらい強い影響を及ぼすかを指摘します。例えば、今回だと、「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」という内因性によって生まれる「私は彼女と友達のまま徒に時間が過ぎて胸が苦しい」という被害が重要性に該当します。

 ③解決性
 解決性では、内因性で挙げた問題に対して、その問題への解決策が実行された以後にその問題が解決されることを指摘します。例えば、今回だと、「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」という内因性に対して、私がA子に告白する以後の「彼女と付き合えた場合、私は嬉しい」という利益が解決性に該当します。

画像2

 最後に、否定側立論では、デメリットを3つの点を根拠に立論します。

 デメリット
 デメリットとは、問題に対して解決策を実行することによって得られるマイナス要素。例えば、今回だと私がA子に告白することで生まれる「A子と離れ離れになる」という被害がデメリットに該当します。

 ①固有性
 固有性では、ある解決策を実行する以前に問題が存在しないことを指摘します。例えば、今回だと、私がA子に告白する以前の「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」という状態が固有性に該当します。

 ②発生過程
 発生過程では、ある解決策が実行された以後に問題が発生することを指摘します。例えば、今回だと、「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」という固有性に対して、私がA子に告白する以後の「仮に私が彼女に告白した場合、振られる可能性がある」という問題が発生過程に該当します。

 ③深刻性
 深刻性では、その問題が現実に対してどのくらい強い影響を及ぼすかを指摘します。例えば、今回だと、「仮に私が彼女に告白した場合、振られる可能性がある」という発生過程によって生まれる「私は彼女と離れ離れになり、胸が張り裂けるような苦しみに襲われるかもしれない」という被害が深刻性に該当します。

 以下、上記の肯定側立論と否定側立論をまとめました。

画像3

 議題「私はA子に告白すべきか、否か」

 肯定側立論
「私はA子に告白べきだ」
メリット「A子と付き合える」
①内因性
「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」
②重要性
「私は彼女と友達のまま徒に時間が過ぎて胸が苦しい」
③解決性
「彼女と付き合えた場合、私は嬉しい」

 否定側立論
「私はA子に告白すべきでない」
デメリット「A子と離れ離れになる」
①固有性
「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」
②発生過程
「仮に私が彼女に告白した場合、振られる可能性がある」
③深刻性
「私は彼女と離れ離れになり、胸が張り裂けるような苦しみに襲われるかもしれない」

 以上が先ほどの文章をメリットとデメリットで比べる状態にした結果です。
 先ほどの文章が「私はA子に告白すべきか、否か」という議題の下に、 
「私はA子に告白べきだ」という肯定側立論と「私はA子に告白すべきでない」という否定側立論に分けることが出来ました。そして、肯定側立論は「A子と付き合える」というメリットを、否定側立論は「A子と離れ離れになる」というデメリットをそれぞれ3つのポイントを根拠に立論することが出来ました。

 確かに、少々、肯定側と否定側に分かれて行われるメリットとデメリットの立論は、普段、耳慣れないディベートの専門用語が使われていて難しく感じられた方もいるかもしれません。しかし、以下のように考えれば単純なことだと理解して頂けると思います。

画像4

プランが実行される以前は、

【Before】 肯定側 ①内因性(問題がある)⇒②重要性(大変だ)
      否定側 ①固有性(問題がない)

⇓ プランが実行されると...

【After】  肯定側 ③解決性(大変な問題がなくなる)
      否定側 ②発生過程(問題が生まれる)⇒③深刻性(大変だ)

 要するに、メリットとデメリットの立論は、ある議題に対して、その解決策を実行する以前と以後で生まれる現実に対する影響力で決まるということです。例えば、メリットの立論のポイントとなる内因性および重要性は、ある議題の解決策の実行以前の状態です。今回の例だと、私がA子に告白する以前の状態です。そして、解決性は、ある議題の解決策実行以後の状態です。今回の例だと、私がA子に告白した以後の状態です。一方で、否定側立論のポイントとなる固有性は、ある議題の解決策の実行以前の状態です。今回の例だと、私がA子に告白する以前の状態です。そして、発生過程および深刻性は、ある議題の解決策の実行以後の状態です。今回の例だと、私がA子に告白する以後の状態です。要するに、メリットとデメリットの立論は、ある議題の解決策実行以前と以後を比べることで導き出される現実への影響力のことを指すのです。そして、ある議題のプラン実行後の現実への影響力を導き出す過程をディベートの専門用語で内因性や固有性という呼び名で呼んでいるだけなのです。

 では、メリットとデメリットを比べるメリットとは何でしょうか?

画像5

 メリットとデメリットを比べるメリットは主に2つあります。

 
1つ目は、成功確率の向上です。
 様々な問題に対して合理的に判断が下せるので、失敗するリスクを下げることが出来ます。なぜなら、ある行動にデメリットが多く、メリットが少ないことが事前に分かれば、その行動を取り止めることで、我々は行動の失敗のリスクを減らすことができるからです。すると、それに伴って我々の行動の成功の確率は向上します。例えば、先ほどの議題「私はA子に告白すべきか、否か」の下に、肯定側立論と否定側立論を比べることで、私がA子に告白することの失敗のリスクが分かれば、そのことへ事前に対処することが出来ます。

 2つ目は、多角的視点です。
  メリットとデメリットを比べられるようになると、直観的な判断ではなく、多角的な視点の元、情報に合理的な判断を下せるきっかけが手に入るようになります。なぜなら、我々は直観に基づいて判断してしまい、合理的な決定が出来ない場合があるからです。例えば、2020年8月19日の現在、コロナウィルスが世界中に蔓延しています。そして、日本政府は暫くの間は首都圏を一部閉鎖していましたが、現在は自粛解禁をすることで、人々は従来とほぼ同じように経済活動を営めるようになりました。しかし、政府が自粛解禁することによって、再びコロナウィルスが日本中に蔓延もしました。なぜなら、人々が自粛以前と同じように、街中を出歩くことで、コロナウィルスが広まってしまったからです。確かに、一見、政府が自粛解禁したことはコロナウィルスを蔓延させることにつながるようなデメリットしかない政策のように思えます。しかし、政府が自粛解禁させることで、停滞した経済が回るようになって、売上が出せずに生活するのも困難になりつつあった飲食業や観光業の方々の生活の基盤を整えられるメリットもあります。ちなみに、ここで政府の自粛解禁の判断の良し悪しに結論を出すつもりはありません。それよりも、ここで重要なことは、直観的に言ったら責めらるような自粛解禁という政府の判断にも、実は国民の生活の基盤を安定させるというメリットがあるということに気が付くことです。実際に、政府が延々と自粛状態を続けた場合、コロナウィルスの感染者を減らすことが出来ても、国民が食品を生産することや生活費を稼ぐことが出来ずに、飢え死にしてしまったら本末転倒だからです。したがって、上記の具体例のように、メリットとデメリットを比べられるようになると、直観的な判断ではなく、多角的な視点の元、合理的な判断を下せるきっかけが手に入ります。

2.想定される反論や批判と比べる

 次に、想定される反論や批判と比べるについて。
 想定される反論や批判と比べるとは、"主張"、"根拠"、"論拠"を否定することです。

 以下の先ほどの肯定側立論の内因性に反論や批判をしましょう。

 メリット「A子と付き合える」の内因性
 私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ。実際に、私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった。しかし、付き合ってはいない。

 では、どのように上記の文章の反論や批判をするのでしょうか?
それは、この文章の”主張、”根拠”、”論拠”を否定すればよいのです。なぜなら、論証は”主張、”根拠”、”論拠”によって成り立っているので、それぞれの要素を否定すれば、それが反論や批判になるからです。

 ところで、”根拠”と”論拠”の違いはなんでしょうか?

4.比べる

 メリット「A子と付き合える」の内因性
 ①主張
 「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ。」
 ②根拠
 「 私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった。しかし、付き合ってはいない。」
 ③論拠
 「数年間遊ぶ仲だが、付き合わない男女の関係を友達以上、恋人未満の関係と呼ぶ。」  

 根拠も論拠も何らかの主張の理由です。しかし、両者が異なる点は、根拠はある主張の明示化された理由であることが多いですが、一方で、論拠はある主張とその根拠をつなぐ非明示的な理由であることが多いところです。例えば、先ほどのメリット「A子と付き合える」の内因性では、「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」という主張に対して、「私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった。しかし、付き合ってはいない」が根拠に該当します。そして、これらの主張と根拠を非明示的に結ぶ「数年間遊ぶ仲だが、付き合わない男女の関係を友達以上、恋人未満の関係と呼ぶ」が論拠に該当します。ちなみに、なぜ先ほどのメリット「A子と付き合える」の内因性に明文化されていない上記の論拠が伴うのかというと、仮に「私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった。しかし、付き合ってはいない」という根拠を認めても、「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」という結論は導き出されないからです。実際に、人によっては、私とA子が大学4年間ともに遊びに行く仲だが、付き合っていない関係を「友達以上、恋人未満の関係」と呼ばずに、単に寂しさや肉体的欲望を埋め合わす「都合のいい関係」と呼ぶ人も考えられるからです。したがって、根拠と論拠の違いは、ある主張の明示化された理由が根拠、一方で、その主張とその根拠をつなぐ非明示的な理由が論拠ということになります。

 では、本題に戻って、上記の文章への想定される反論や批判と比べる状態にしてみましょう。

画像8

 メリット「A子と付き合える」の内因性への想定される反論・批判
 ①反論
 「私はA子と友達以上、恋人未満の関係ではない。」
(その理由を挙げるなら、例えば、A子と私の間には肉体関係しかなかったからなどが挙げられる)
 ②批判
 「私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった。しかし、実際、大学4年間で遊んだ回数は何回か?」
 ③批判
 「数年間遊ぶ仲でも、何回遊ぶ仲ならば、友達以上恋人未満の関係なのか?」

画像8

 以上が先ほどの文章の想定される反論・批判を比べる状態にした結果です。
 まず、①主張「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」を否定して、①反論「私はA子と友達以上、恋人未満の関係ではない」を主張しました。次に、②根拠「 私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった」の部分に対して、②批判「しかし、実際、大学4年間で遊んだ回数は何回か?」と疑うことで、②根拠の具体性を追求しています。最後に、③論拠「数年間遊ぶ仲だが、付き合わない男女の関係を友達以上、恋人未満の関係と呼ぶ。」に対して、③批判「数年間遊ぶ仲でも、何回遊ぶ仲ならば、友達以上恋人未満の関係なのか?」と疑うことで、仮に根拠②「 私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった」が正しかったとしても、友達以上恋人未満の関係の基準に到達していない場合は、①主張「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」とはいえないので、③論拠の基準を追求しています。

 では、想定される反論・批判を比べるメリットは何でしょうか?

画像9

 想定される反論・批判を比べるメリットは2つあります。

 1つ目は、批判力の向上です。
  論証の妥当性を検証することが出来るので、自分や相手の論証の間違いに気づくことができます。例えば、先ほどのメリット「A子と付き合える」の内因性への想定される批判②「私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった。しかし、実際、大学4年間で遊んだ回数は何回か?」に対しての私の返答が「私がA子と郊外で遊んだ回数は4回程度」だった場合、根拠②から導き出される①主張「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」の信憑性が低いものとなります。なぜなら、大学生の男女同士が郊外で年4回程度に遊ぶくらいならば、単に「私とA子が友達の関係でしかない」ともいえるからです。したがって、論証に対して反論や批判をすることが出来るようになれば、自分や相手の論証の間違いに気づくきっかけが手に入ります。

 2つ目は、思考力の向上です。
  論証の妥当性を検証することが出来るので、自分や相手の論証をより妥当なものへと高めることが出来ます。例えば、先ほどのメリット「A子と付き合える」の内因性への想定される批判③「数年間遊ぶ仲でも、何回遊ぶ仲ならば、友達以上恋人未満の関係なのか?」に対して私の返答が「男女が郊外で4回以上遊ぶ仲は、友達以上恋人未満の関係といえる」ということに加えて、「男女がネット通話を通じてオンラインゲームを毎日3時間する仲は、友達以上恋人未満の関係といえる」という返答も返ってきたとします。その場合、根拠②から導き出される①主張「私はA子と友達以上、恋人未満の関係だ」の信憑性が上がると思います。なぜなら、②根拠「 私はA子と大学4年間ともに遊びに行く仲だった」ということには、郊外で遊ぶことの他にもオンラインゲームで遊ぶことも含まれていたということが判明するからです。すると、②根拠は「私は大学4年間、A子とオンライン・オフライン含めて個人的に遊ぶ仲だった」というように書き直した方がよいことに気が付けます。したがって、論証に対して反論や批判をすることが出来れば、相手や自分の論証をより妥当なものへと高めるきっかけが手に入ります。

3.暫定的結論を下す

 最後に、暫定的結論を下すについて。
 暫定的結論を下すとは、メリットーデメリット=純利益を導き出すことです。

  以下の議題「私がA子に告白すべきか否か」の肯定側/否定側立論の暫定的結論を下しましょう。

 肯定側立論
 「私はA子に告白すべきだ」
 メリット「A子と付き合える」
 ①内因性「私はA子と友達以上恋人未満」
 ②重要性「私はA子と友達のまま時間を過ごして、胸が苦しい」
 ③解決性「私がA子と付き合えた場合、嬉しい」
 
 否定側立論
 「私はA子に告白すべきではない」
 デメリット「A子と離れ離れになる」
 ①固有性「私はA子と友達以上恋人未満」
 ②発生過程「私はA子に振られる可能性がある」
 ③深刻性「その場合、私はA子と離れ離れになって胸が苦しい」

 では、どのように暫定的結論を下すのでしょうか?
 それは、メリットーデメリットで残る純利益で決めればよいのです。なぜなら、メリットとデメリットのどちらが大きいかを決めるためには、お互いのメリット/デメリットの量と質を引き算して、いずれか残った方がより大きいものであると分かるからです。

  そのため、上記の文章に暫定的結論を下してみましょう。

画像10

 まず、肯定側立論と否定側立論のメリットとデメリットの立論へ想定される反論や批判を加える。

 【計算前】
 メリット「A子と付き合える」
 ①内因性、②重要性、③解決性に対して反論や批判を考えた結果、特に問題はなさそうである。

 デメリット「A子と離れ離れになる」
 ①固有性、②発生過程は問題なさそうだが、③深刻性は違和感を覚える。なぜなら、私がA子に振られても、そのまま友達以上恋人未満の関係が持続されて、私はA子と離れ離れになるとは限らないからだ。

 次に、それぞれ残ったメリットからデメリットを差し引いて、自分なりの体験・価値観を根拠に暫定的結論を下してみましょう。

 【計算後】
 暫定的結論「私はA子に告白すべき」
 「私はA子に告白すべきだ」と考える。その理由は、仮に私がA子に告白して振られても、今までと同じように友達以上恋人未満の関係を持続することが出来るからだ。しかも、このままA子とずるずると友達以上恋人未満の関係を持続させると、徒に時間が過ぎてしまい、ほかの女の子と付き合う機会を逃してしまうからだ。実際に、筆者も似たような経験をして後悔したことがある。

 以上が先ほどの文章を主語と述語に分けた結果です。
 まず、私がA子に告白した場合、【計算前】ではメリット「A子と付き合える」は特に問題がなさそうでした。しかし、デメリット「A子と離れ離れになる」の③深刻性に対して違和感を覚えました。次に、これらのメリットからデメリットを差し引いた結果、【計算後】では暫定的結論として、筆者の個人的な体験・価値観も参考にして「私はA子に告白すべき」という結論を導き出せました。

 では、暫定的結論を下すメリットは何でしょうか?

画像11

 暫定的結論を下すメリットは2つあります。

 1つ目は、思考力の向上です。
 メリットとデメリットを比較して、暫定的結論を導き出すことで、物事の良し悪しを比較出来るようになります。例えば、先ほどの私がA子に告白すべきか否かの暫定的結論では、直観的には判断が難しい決断ですが、私がA子に告白するべきか否かのメリットとデメリットを比較することで、暫定的にでも結論を下すことが出来ました。

 2つ目は、行動力の向上です。
  人間は完璧な判断を下せないにせよ、暫定的結論を下すことで、様々な選択肢をスムーズに決定することが出来るようになります。なぜなら、人間は完璧な結論を求める余り、身動きが取れない場合があるからです。これは実際にあった筆者の話ですが、私にはある気になる女の子がいました。その女の子をS子としましょう。しかし、長らくS子とは友達以上、恋人未満の関係が続きました。そこで、私は以下のように考えました。「仮に私がS子に告白したとする。そのメリットは、S子と付き合えるかどうかが分かる上に、今後、曖昧なS子との関係に時間を割く必要がなくなることだ。一方で、そのデメリットは、もしもS子に私が振られた場合は、S子と友達以上、恋人未満の関係ではなくなるリスクがあることだ。しかし、仮に私がS子に振られたとしても、S子とは仲がいいので友達以上、恋人未満の関係を続けることが出来ると思う。よって、S子に告白するデメリットはないので、告白しよう。」そう私は考えてS子に告白しました。その結果、見事に私はS子に振られました笑。しかし、後悔はありませんでした。なぜなら、そのままずるずると友達以上恋人未満の関係を過ごすメリットよりも、他の女の子と時間を共にできる機会が損失するデメリットの方が怖かったからです。したがって、皮肉にも教訓話のようになりましたが、人間は完璧な判断は出来ないので、暫定的にでも結論を下せるようになると、無駄な時間を過ごす必要がなくなって、行動のスピードを上げることが出来ます。ちなみに、決して後付けではありませんよ・・・

 ただし、暫定的結論を下すうえで一点だけ注意点があります。

画像12


 それは、暫定的結論は、最終的に自分の経験・価値観に基づいた判断で構いません。なぜなら、肯定側・否定側立論の出来の良し悪しとは別に、現実ではそれらを参考にして最終的に判断するのは自分自身だからです。例えば、ある日、あなたが昼食にラーメンを食べるのか牛丼を食べるのか、悩んでいました。そして、前日はラーメンを食べていたとします。この場合、確かに二日連続でラーメンを食べることは、栄養も偏るし、味に新鮮味もなくて、一般的によい判断とはいえないでしょう。しかし、あなたがそれでも二日連続でラーメンを食べて新鮮味が落ちないほどラーメンが大好きだと思うのなら、二日連続でラーメンを食べればよいのです。要はメリットとデメリットを比較することで一般的な合理的結論を導き出したとしても、大事なのはそれらの一般的な合理的結論を参考にしつつ、最終的に個人的な暫定的結論を導き出すということです。

第4章のまとめ


1.メリットとデメリットを比べる:ある問題への解決策の実行以前と以後の現実への影響力を比べる
2.想定される反論や批判と比べる:"主張"、"根拠"、"論拠"を否定する
3.暫定的結論を下す:メリットーデメリット=純利益を導き出す

画像14


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?