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第3章 つなげる

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 今回の内容は以下の3つです。
1.文と文をつなげる
2.不要なつながりの削除
3.論証のつながりを取り出す

1.文と文をつなげる

 まず、文と文をつなげるについて。
 文と文をつなげるとは、文と文を接続語でつなげるということです。

 以下の文章は、接続関係が曖昧だ。

 B男はC子が好きだ。C子が慈悲深いからだ。B男は寛容な人間が好きだからだ。最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。B男には笑える悲しい過去がある。B男が電車内で痴漢行為を取り押さえたら、B男の方が変質者と思われて、周囲の同乗者にB男の方が取り押さえられた時のことだ。

 では、なぜ、上記の文章の接続関係が曖昧なのか。
 それは、文と文の接続関係を示す接続語が補われていないからです。

 そのため、上記の文章の文と文の接続語を補ってみましょう。

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 【添削前】
 主題「B男の好きなC子」
 B男はC子が好きだ。C子が慈悲深いからだ。B男は寛容な人間が好きだからだ。最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。B男には笑える悲しい過去がある。B男が電車内で痴漢行為を取り押さえたら、B男の方が変質者と思われて、周囲の同乗者にB男の方が取り押さえられた時のことだ。

 【添削後】
 主題「B男の好きなC子」
 B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ。ところで、最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。ちなみに、B男には笑える悲しい過去がある。例えば、B男が電車内で痴漢行為を取り押さえたら、B男の方が変質者と思われて、周囲の同乗者にB男の方が取り押さえられた時のことだ。

 以上が先ほどの文章に接続語を補った結果です。
 先ほどの文章はそれぞれの文と文の接続関係が曖昧でした。しかし、それぞれの文と文の間に接続語を補うことで、それぞれの文と文の接続関係が明示化されて、文章全体におけるそれぞれの文の役割がより分かり易くなりました。

 ところで、文と文の接続関係を示す接続語は何種類あるのでしょうか?

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 文と文の接続関係を示す接続語は大きく分けて5種類あります。

 ①論証
 論証は、理由や結論を示すときに使用する接続語です。例えば、「なぜなら、その理由は、したがって、だから、それゆえに、すると、ならば」などがあります。

 ②転換
 文章の方向性を変えるときや文章を対比させるときに使用する接続語です。例えば、「だが、しかし、だけど、では、さて、話題を変えると、一方、他方、それに対して、逆説的に」などがあります。

 ③解説
  狭い範囲から広い範囲までの文章を言い換えるときに使用する接続語です。例えば、「例えば、具体的に述べると、つまり、要するに、言い換えると、まるで、喩えると」などがあります。

 ④付加
 ある文に他の文を単純に付け足すときに使用する接続語です。例えば、「そして、また、くわえて、しかも、むしろ、または、あるいは」などがあります。

 ⑤補足
 文章の本筋の読解を促す、または、発展的な内容を付け足すときに使用する接続語です。例えば「ちなみに、ただし、なお、補足として」などがあります。

 以上の5つの接続語が文と文の接続関係を示す接続語です。

 では、文と文をつなぐメリットとは何でしょうか?

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 文と文をつなぐメリットは主に2つあります。

 
1つ目は、読解力の向上です。
 文と文の論理的な関係が明示化されることで、文章全体におけるそれぞれの文の役割を明確にすることが出来るので、文章全体におけるそれぞれの文の役割が理解しやすくなります。このことを木に喩えます。一般的に木は、まず幹があり、次に幹から太さの異なる枝が生え、最後に枝から木を彩る葉や果実が生えています。以上のことは文章にも言えます。まず根拠があり、次に重要度の異なる主張がなされて、最後に、主張を説明する解説や補足がなされます。そして、文と文の接続語を示すことで、以上のように文章全体の中でその文がどのような役割をしているのかを示すことができるのです。

 2つ目は、表現力の向上です。
  何かを表現する時は、その文章の文と文の間に接続語を補うことで、その文章の論理的な接続関係が明示化されるので、表現力が飛躍的に上がります。なぜなら、先ほど挙げた5つの接続語は日常会話から専門家の文章においてでさえ、我々人間は忘れてしまいがちだからです。例えば、もしもあなたがNoteやメモ帳を利用しているのであれば、自分の書いた文章を読み返してみてください。すると、自分の投稿した文章が毎回接続語を伴ったものではないことに気付かされるはずです。一方で、新書や専門書という学術的に研鑽を積み重ねた専門家によって書かれた文章ですら事情は同じです。実際に、試しに手近にある本を開いてみてください。すると、全ての文と文の間に接続語が伴っていないことに気付かされると思います。したがって、何かを表現する時は、その文章の文と文の間に接続語を補うことで、その文章の論理的な接続関係が明示化されるので、表現力が飛躍的に上がります。

2.不要なつながりの削除

 次に、不要なつながりの削除について。
 不要なつながりの削除とは、”解説”と”補足”の接続文を削除することです。

 以下の文章は、冗長な接続関係がある。

 主題「B男の好きなC子」
 B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ。ところで、最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。ちなみに、B男には笑える悲しい過去がある。例えば、B男が電車内で痴漢行為を取り押さえたら、B男の方が変質者と思われて、周囲の同乗者にB男の方が取り押さえられた時のことだ。

 では、なぜ、上記の文章は冗長な接続関係があるのか?
 それは、上記の文章には”解説”と”補足”の接続文があるからです。

 では、なぜ、この2つの接続語が不要な接続語になるのでしょうか?
 まず、解説が伴った文が不要な理由は、解説が伴った文は前の述べた文や文章の言い換えでしかないからです。なぜなら、解説の接続語の意味は「狭い範囲から広い範囲までの文章を言い換えるときに使用する接続語」だからです。例えば、「例えば、具体的に述べると、つまり、要するに、言い換えると、まるで、喩えると、など」を指します。要するに、解説の接続語は一度述べた内容を言い換えただけの文章なので、添削しても文章の意味が通じるのです。
 次に、補足が伴った文が不要な理由は、補足が伴った文は前の文、または、文章に対する注釈でしかないからです。なぜなら、補足の接続語の意味は「文章の本筋の読解を促す、または、文章の本筋とは少し離れた発展的な内容を付け足すときに使用する接続語」だからです。例えば「ちなみに、ただし、なお、補足として、など」を指します。要するに、補足の接続語は文章の本筋に関連はしているけれど、決して強い関係とはいえないので、添削しても文章の意味が通じるのです。

 そのため、上記の文章から不要なつながりの削除してみましょう。

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 【添削前】
 主題「B男の好きなC子」
 B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ。ところで、最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。ちなみに、B男には笑える悲しい過去がある。例えば、B男が電車内で痴漢行為を取り押さえたら、B男の方が変質者と思われて、周囲の同乗者にB男の方が取り押さえられた時のことだ。

 【添削後】
 主題「B男の好きなC子」
 B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ。ところで、最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。

 以上が先ほどの文章から不要なつながりを削除した結果です。
 「ちなみに、B男は笑える悲しい過去がある」というB男の補足情報を削除することで、文章全体の最も述べたい趣旨が明確になりました。さらに、「例えば、過去にB男は電車内で痴漢行為を取り押さえたら、B男の方が変質者と思われて、周囲の同乗者にB男の方が取り押さえられたことだ」というB男の補足情報に対する具体例を削除することで、ますます文章全体の述べたい趣旨が明確になりました。

 では、不要なつながりを削除するメリットは何でしょうか?

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 不要なつながりを削除するメリットは2つあります。

 1つ目は、情報の明瞭化です。
 不要なつながりを削除することで、文章全体に無駄な情報がなくなるので、自分が情報を伝達、または、他者の情報を理解しやすくなります。実際に、先ほど主題「B男の好きなC」でも、”補足”と”解説”の接続文を削除することによって、文章全体の述べたい趣旨が明確になりました。

 2つ目は、伝達速度の向上です。
 相手に伝達する上で不必要な情報を削除することで、伝達速度が向上します。実際、私たちはその文章の意味と関係ないことを伝達しがちです。例えば、ある会社員が来週の仕事の大まかな予定を上司に聞かれた場合、以下のように答えたとします。「来週は社内で自らが企画したコンテンツのプレゼンテーションがあります。ちなみに、日時は6月10日の午後5時に行われて、その企画したコンテンツが制作、販売されて上手く利益が出せれば、私はその会社の役員に昇進することができるかもしれません。要するに、私の将来に大きく関係するプレゼンテーションなのです。そのため、緊張しています。」しかし、上司がその会社員に求めている情報は、来週の仕事の大まかな予定なので、最も伝えるべき内容は「来週は社内で自らが企画したコンテンツのプレゼンテーションがある」という情報だけです。そのため、それ以下の補足の内容は、仮に上司に日時や今回のプレゼンの重要性や今回のプレゼンにかける想いを聞かれたら答えればよいのであって、情報を伝達する上では削除するべきポイントなのです。そして、意外と私たちは上記のように問いに対する答えとして余計な補足情報を含めて答えてしまいがちです。そのため、上記のように、伝達する上で不必要な情報を削除するだけでも、飛躍的に情報伝達能力が上がります。

3. 論証のつながりを取り出す

 最後に、論証のつながりを取り出すについて。
 論証のつながりを取り出すとは、”論証”で接続された文を取り出すということです。

 以下の文章は、文章の骨子が明確ではありません。

 B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ。ところで、最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。

 では、なぜ、上記の文章は文章の骨子が明確ではないのでしょうか?
 それは、文章の骨子を示す”論証”の関係が取り出されていないからです。

 では、なぜ、論証は論理的な接続関係に置いて一番大切なのでしょうか?
 それは、論証こそ自分の意見を理解できない他者を理解させるときに最も効果的な説明の方法だからです。なぜなら、第一章で確認した「論理的思考の意義」について思い出して欲しいのですが、論理的思考の意義とは「自分とは異なる意見を持った他者を想定したときに、自分や他人の意見を飛躍なく説明、理解するために考えること」です。そして、論証とは「ある前提からある結論を導き出したもの」を指すからです。したがって、自分とは異なる意見を持った他者を想定したときに、自分や他人の意見を飛躍なく説明、理解する時に、ある前提からある結論を導き出す論証が使用されることによって、初めて自分や他人の意見を飛躍なく説明、理解できることになります。要するに、論理的思考の意義を実現する手段こそがこの論証なのです。
 ちなみに、どの論理に関する本を開いても、説明の仕方の違いはありますが、この前提から結論を導き出す”論証”という関係は必ずといっていいほど、共通して取り上げられます。要するに、論理的思考と論証は切っても切り離せない関係にあるということです。

  そのため、上記の文章から論証のつながりを取り出してみましょう。

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 【添削前】
 主題「B男の好きなC子」
 B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ。ところで、最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。

 【添削後】
 主題「B男の好きなC子」
 論証①
 B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ。

 論証②
 最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ。

 以上が先ほどの文章から論証のつながりを取り出した結果です。
 上記のように論証のつながりを取り出すことで、主題「B男の好きなC」は2つの趣旨を持った文章ということが分かりました。1つ目は「B男はC子が好きだ」(論証①)ということ。2つ目は「最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる」(論証②)ということです。

 では、論証のつながりを取り出すメリットは何でしょうか?

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 主語と述語に分けるメリットは2つあります。

 1つ目は、読解力の向上です。
 その話者の最も言いたい主張とその理由が何なのかを明示化することが出来るので、その話者の主張を素早く理解することができます。実際に、先ほどの主題「B男の好きなC子」では、「B男はC子が好きだ」と「最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる」という2つの主張がなされている文章だということが分かりました。

 2つ目は、批判力の向上です。
 その話者の最も言いたい主張とその理由が何なのかを明示化することが出来るので、本当にその主張を裏付ける根拠が正しいものなのかを吟味しやすくなることです。例えば、「今朝の天気予報で今日の降水確率は80パーセントだとアナウンサーが述べていた。今日は傘を持っていくべきだ」という文章があった場合、結論は「今日は傘を持っていくべきだ」であり、根拠は「今朝の天気予報で今日の降水確率は80パーセントだとアナウンサーが述べていた」であることが分かります。そして、上記のようにその文章の論証を分析することで、その論証の根拠を批判する時に、「果たして本当に今朝の天気予報で今日の降水確率は80%だとアナウンサーは述べていたのだろうか?」とその論証の根拠へピンポイントで批判しやすくなります。ちなみに、論証への詳しい反論や批判の仕方については第四章「比べる」で取り扱いますので、そちらの方をご参照ください。 

 ちなみに、論証には大きく分けて3種類の論証があります。

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 それは、単純論証、結合論証、合流論証、です。
 ただし、これらの論証の種類は覚える必要はありません。なぜなら、これらの論証の分類を覚えずとも、文章の根拠と主張に着目して、その根拠と主張の関係を分析すれば、おのずと論証は分類されるからです。ですので、以下の3種類の論証については、より専門的に論証について学びたい方だけお読み下さい。

 ①単純論証
 単純論証は、ある一つの前提によって、ある結論を導く論証のことです。例えば、先ほどの「最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる。なぜなら、B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ」という論証は、「B男はC子と友達以上恋人未満の関係が途切れることが怖いからだ」という1つの前提によって、「最近、B男はC子に告白しようか悩んでいる」という結論が導き出されているので、単純論証といえます。

 ②合流論証
 合流論証は、ある二つ以上の前提がそれぞれ単独で、ある結論を導く論証のことです。例えば、先ほどの「B男はC子が好きだ。なぜなら、C子が慈悲深いからだ。しかも、B男は寛容な人間が好きだからだ」という論証は、「C子が慈悲深い」という1つの前提だけでも、「B男はC子が好きだ」という結論を導くことができます。一方で、「B男は寛容な人間が好きだ」という1つの前提だけでも、「B男はC子が好きだ」という結論を導くことが出来ます。したがって、この論証は、それぞれの前提が単独である結論を導くことが出来るので合流論証といえます。

 ③結合論証
 結合論証は、ある二つ以上の前提が組み合わさることによって、ある結論を導く論証のことです。例えば、「私は今日のお昼にラーメンを食べない。なぜなら、昨日のお昼もラーメンを食べたからだ。そして、2日連続で同じものを食べると、栄養バランスが偏るからだ」という論証は、「昨日のお昼もラーメンを食べた」という1つの前提だけでは、「私は今日のお昼にラーメンを食べない」という結論は導き出されません。なぜなら、昨日のお昼にラーメンを食べたとしても、その次の日もお昼もラーメンを食べる場合はありえるからです。一方で、「2日連続で同じものを食べると、栄養バランスが偏る」という1つの前提だけでは、「私は今日のお昼にラーメンを食べない」は導き出されません。なぜなら、2日連続で同じものを食べることのデメリットの情報のみでは、今日のお昼に私がラーメンを食べることが2日連続でラーメンを食べることになるかどうかは分からないからです。したがって、この論証は、それぞれ2つの前提が組み合わさることによって、初めてある結論を導くことが出来るので、結合論証といえます。

第3章のまとめ

1.文と文をつなげる:文と文を接続語でつなげる
2.不要なのつながりの削除:”解説”と”補足”の接続文の削除
3.論証のつながりを取り出す:”論証”の接続された文を取り出す


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