小説家の連載「18歳高3娘の彼氏が35歳?!」第5話
〈前回のあらすじ:18歳高3の一人娘、ヒナコに35歳彼氏ができた事で揺れる一家。父ヒロシと母アオイは、それぞれ職場の同僚や部下にこの件を話し、彼氏への不信感を募らせる。ヒナコは、彼氏のヨウタが両親に会う事を拒否してきた件を両親に報告。父と母は事態の解決に向けて動き出す事に・・・。〉
その日の夜遅く、ヒロシとアオイは夫婦で話し合った。
「私はあの子に彼氏と別れて欲しい。彼氏自体が嫌な訳じゃなくて、いい年して親に会うのが嫌だなんて、絶対にろくでもない男だもの。そもそも私の経験上、トラウマだなんだって言う男は、トラウマがある事を言い訳にしているだけ。そもそも本当にトラウマレベルかもあやしいわよね。本当にトラウマがある人は、簡単にトラウマの話はしないもの。思い出したくないんだし」
「俺もヒナコの交際に反対だ。そりゃ、娘に彼氏ができた事は寂しく思うが・・・それは相手の男がまともな場合。どう見てもあれは・・・うーん」
両親は深刻そうな表情になった。
「でも、ヒナコはあんな人でもいいって思うのかもね」
「ヒナコがダメンズ好きって事か?」
「ダメンズ好きっていうか、そもそもあの子は今まで彼氏ができた事無いから、初めての彼氏だと思うし・・・恋愛経験が無いから、何が普通なのかwかってないんでしょうね」
溜息をつくアオイ。
「もし望まない何かが起きてしまった時、あの男は真っ先に逃げ出すタイプだと思うわ」」
「それは妊娠っていう意味か?」
「ええ。産む事にするとしても、結婚の挨拶にも来るか微妙だし、妊娠を機に結婚しようってなるかどうかもわからない気がする。産まない選択でも、責任を取って手術に同行したり、私達やあの子に謝罪したり・・・そういう思いやりが無さそうに思えるの。私の勘ね」
「そうだな。だが、別れろと言ってもヒナコが別れる決心をするかどうか・・・証拠が必要だな」
「証拠?」
「・・・・考えたんだが、探偵に調査を頼まないか?あの男について調べてもらって、その結果を見れば、ヒナコも納得するだろう」
探偵という言葉にアオイは驚く。
「でも探偵って高いんじゃないの?」
「俺が出すから心配しないでいい」
この家の家計は夫が管理していた。
夫婦は、娘の彼氏を調べる方向でまとまった。
じゃあどこの探偵社に頼むかどうかまた話そうという事になった。
翌日。週4で働いているアオイは、休日だったので義姉とランチに出かけた。夫の姉である義姉は薬剤師の資格持ちで、近所のドラッグストアでパート薬剤師として働いている。彼女も週4ぐらいの働き方をしており、休日が重なった時はたまにランチに行く仲だった。義姉には息子が2人居て、長男は東京で忙しく働いており、次男は大学4年生だった。アオイより年上の義姉は、アオイが結婚した時には既に2人の男の子を育てており、アオイがヒナコを妊娠出産した時は、先輩ママ友として力になってくれた。一人っ子のヒナコにとっては、義姉の息子達は兄のような、頼りがいのある従兄達で、彼らもヒナコを妹のように可愛がってくれた。
「なるほどねえ。あのヒナコちゃんがねえ」
義姉はヒナコの話を聞いて、神妙な顔つきになった。
「挨拶にも来たくないっていうのは駄目だねえ」
「そうなの。今探偵に調査を頼もうかって話しているんだけど」
「探偵?!それって、でも高いんじゃない?」
「ヒロシが出すって言ってるわ。大事な娘のためだもの」
義姉はその話を聞いて考え込んでいたが、やがてこう言った。
「あの、もし良かったらそれ、うちの息子に任せてくれない?」
「ええ?!それって探偵の真似事バイトって事?でもジュン君に任せるのはちょっと・・・忙しいサラリーマンでしょう?!」
「まっさかぁ!頼むのはショウの方よ。あの子、もう就職先も決まってぐーたらしてるから、ちょうど時間たっぷりあるし。可愛いヒナコちゃんのためならきっと人肌脱いでくれるわ。探偵に頼むより安上がりじゃない?」
上の息子の名前がジュンで、ショウは暇を持て余している大学生の、下の息子だ。
アオイは悩んだが、ヒロシと相談してみる事にした。
その晩帰宅したヒロシに相談したところ、まずは甥っ子の意志を確認しようという話になり、ヒロシがショウに電話した。するとどうやら、ショウは引き受ける気満々という事になり、家庭教師代ぐらいの報酬を支払う事で一致した。
翌日、ヒロシとアオイは有給を使って仕事を休み、自宅に甥っ子を招いた。甥っ子は時間通りやってきて、シェパードのシーザーもショウを歓迎した。尻尾を振って挨拶する。
「わんわん!」
「可愛いなあ、お前は。叔父さん叔母さん、お久しぶりです」
ショウは挨拶して、リビングに入る。ヒロシとアオイも久しぶりとかなんとか挨拶をして、本題に入った。
アオイが事の次第を詳しく説明している間、ショウは真剣な顔で話を聞いている。
説明が終わると、ヒロシが口を開いた。
「という訳で、ショウには探偵の真似事をやってもらいたいと思っている。具体的には、ヒナコと彼氏のデート現場を尾行して、2人が解散した後、彼氏の自宅までついていき、どういう生活をしている男なのか、突き止めてもらいたい。できるか?無理強いするつもりはない。もし嫌なら、プロの探偵に頼む」
ショウは真剣な顔で答えた。
「嫌だなんて思わない。俺が自分からやりたいと思ったんだ。ヒナコは俺にとって妹のような存在だから、あいつが駄目男にひっかかってるんだったら、どうにかしてやりたい。俺だって、まともな男が彼氏ならいいと思うけど・・・35歳にして彼女の親に会うのは嫌だって、どうなの?叔父さんと伯母さんが心配する気持ちもわかるよ。安心して任せて欲しい」
「そうか。お前がそう言ってくれるなら、任せたい」
「ところで、ヒナコはこの件について知ってるの?俺に探偵を頼むって」
「・・・まだ決めていない。でも、デート現場を尾行されるのは気分が悪いだろうから、お前に調査してもらって、調査結果次第で話すつもりだ」
「その方が良いね。まあ、俺に任せてよ。一応法学部だし、法律に違反しないよう尾行できると思うよ」
甥っ子は明るく笑い、叔父夫婦を安心させてみせたのだった。
次回に続く
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