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「日経SDGsアイデアコンペティション」5作品から見るSDGsの取り組み方

こんにちは!
今回の記事を担当いたします、神部です。

SNSマーケティングエージェンシー株式会社コムニコのソーシャルメディアマネジメントセンター高知で、新規事業・サービス開発を担当しています。SDGsはこれからのビジネスに欠かせない要素になると考え、弊グループで行われた第2回第3回目のワークショップに参加しました。
今回で2本目の記事を書きます。1本目はこちら

【1】はじめに

前回は世界三大広告賞の一つである「The One Show」の受賞作品に関する記事を書いて、私自身とても良い学びや刺激になりました。
今回は、2020年11月末に日本で開催された「日経SDGsアイデアコンペティション※」で、エントリーされた121作品の中から選ばれたファイナリスト5チームの作品をご紹介いたします!

※「日経SDGsアイデアコンペティション」とは:
日本のクリエイターたちが、SDGsを「自分ゴト」として考え、実際のアイデアに落とし込む機会を提供することを目的に設立。2019年より、日本経済新聞社は「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」の日本事務局業務を開始。カンヌライオンズを社会課題の解決につなげるために、クリエイティブの役割について議論する場ととらえ、積極的にカンヌライオンズに関わっていくための取り組みを行っている。
引用元)日経SDGsアイデアコンペティション アワード(ゴールド、シルバー、ブロンズ)受賞者決定 | カンヌライオンズ日本公式サイト

「自分ならこういうアイデアにするかも」、「このアイデアやってみたい」など思いを馳せながら読んでいただけると嬉しいです。

【2】エントリー課題と出題背景

今回、参加者に対し出題された課題は、「CO2の排出量を抑えていけるようなシステムの提案と、それを達成・定着に導くコミュニケーションプランを考えること」でした。
詳しくはこちら↓

「日経アイディアコンペティション」課題:
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の経済活動が停滞したことで、IEA(国際エネルギー機関)の見通しによると、今年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量は前年比8%(約26億トン)減少すると予測されています。パンデミックがもたらしたCO2削減効果を「一時的な現象」で終わらせないためには、以前とは違った新しい社会システムを追求しなければなりません。そこでパンデミックが終息したあとも、CO2の排出量を抑えていけるようなシステムの提案と、それを達成・定着に導くコミュニケーションプランを考えてください。
引用元)日経SDGsアイデアコンペティション 

この課題を出題した背景には以下の理由があったからのようです。

・日本では他国と比較して、気候変動に対する各種行動を「社会をアップデートする前向きな機会」としてではなく、「負担」ととらえる割合が大きい
・気候変動に対して行動することは、個々人の行動のみで満足するのではなく、社会システムの変化を推進するリーダーシップを支援し、世の中ゴト化する機運を高めることが必要

引用元)日経SDGsアイデアコンペティション - 課題について(背景と与件)

「日経SDGsアイデアコンペティション」の特別審査員であり、この課題作成に協力された江守正多さんの記事「なぜ日本人は気候変動問題に無関心なのか?」 を読んでさらに理解が深まりました。
記事のなかでは、“個人に必要な行動としてより本質的なのは、「システムの変化」を後押しするための意見表明、投票行動、消費行動における選択、地域社会での取り組みへの参加などである”と述べられていました。

出題背景を理解した上で、ファイナリストの作品を見てください。5作品全てが、江守さんがいう「社会システムに変化を与える」ことで、SDGsに大きく貢献できるアイディアばかりだと感じられるはずです。

同時に、卓越したクリエイティブやデザインにもご注目ください!
「カンヌライオンズ」と関わりのあるコンペだけあり、どの作品も素晴らしいです。
それではさっそく見ていきましょう!

【3】「日経SDGsアイデアコンペティション」―最終プレゼン5作品!

①<「カメさん便」 便利じゃないことが、いいことに思える>

1つ目は、惜しくも受賞は逃してしまった「カメさん便」です。
内容は、一部の配送をカメさん便も選択できるようにして、CO2排出量の多い飛行機やトラックの代わりに、CO2排出量が少ない船舶(鉄道)に切り替えるという仕組みです。ぜひ可愛らしいスライドも見ていただきたいです。

https://www.canneslionsjapan.com/nikkei-sdgs-competition2020/assets/pdf/finalist_20031.pdf

定期的に買う物や、急ぎじゃないけど買っておきたいものは、カメさん便に切り替えることで「負担なく」かつ「システムとして」利用できるのではないでしょうか。

日本では当たり前になっている「再配達無料」や「早すぎるお急ぎ便」に疑問を持ち、ユニークな解決策になっていると感じました。
「本当にすべて早くないといけないのか?」、「誰か負担を強いられていないか」という観点から改善ポイントが見つかるかもしれないですね。

②<Green License Project>

2つ目も、ファイナリストに選出されたものの、惜しくも受賞を逃した「Green License Project」です。
シニアの免許返納問題と気候変動への取り組み、免許返納したシニアを気候変動に取り組むヒーローにするアイデア。Green Licenseのデザインもかっこいいですね!

https://www.canneslionsjapan.com/nikkei-sdgs-competition2020/assets/pdf/finalist_20137.pdf

平成の間に109万人→1130万人へと70歳以上の免許保有者が約10倍になっていると書かれています。日本の総人口の1割弱。
これは、とても大きなインパクトが生み出せる可能性を秘めている領域ですね。ただ免許返納を促進するだけでなく、どういったメリットが享受できるのか「システム」で構える素敵な作品です。
電気で動くサポカー(セーフティ・サポートカー)も登場しているので、免許は返納せずとも気候変動に取り組みながら高齢者の事故も減らせるのではないかと頭をよぎりました。
これからも色々な解決策が出て来て、その中でベストな選択肢を選び、気候変動問題にも貢献できればハッピーですね。

③<Earth Cost>

3つ目は、BRONZEを獲得した「Earth Cost」です。
気候変動に対する行動への「負担意識」を、自ら選択する「前向きな意識」に変化させるためのCO2排出量の商品表示規格「Earth Cost」を掲示するアイデア。私はロゴを見てこれがシールになり、スーパーの商品に貼られているイメージができました。

https://www.canneslionsjapan.com/nikkei-sdgs-competition2020/assets/pdf/BRONZE_20067.pdf

CO2排出量が見える化されることで、一般生活者1人1人が意識を持つ機会が増えると予想されますね。CO2排出量に応じた値引きが行われることで、一般生活者が受け入れやすいシステムになりそうです。
前回紹介した「DO Black」は、日々の消費活動で排出するCO2を測定・管理し、カードの利用制限がされるというものでしたが、値引きされることで「負担」ではなく、「ポジティブ」に捉えられ広く浸透するのではないかと思います。
業務でも見える化によって意識が高まることは、よくありますよね。
私の住む高知県では、スーパーマーケットの「サニーマート」が食品ロス削減の取り組みとして「もぐもぐチャレンジ」を実施しています。もしかしたら、「Earth Cost」がいち早く導入される日もあるのではと期待しています。

④<BEEF OR CHICKEN OR PLANT>

4つ目は、SILVERを獲得した「BEEF OR CHICKEN OR PLANT」です。
この作品は、セクシーと言いたくなってしまうほど、キレイな展開・普及が考えられているアイデアです。

https://www.canneslionsjapan.com/nikkei-sdgs-competition2020/assets/pdf/SILVER_20084.pdf

タイトルから飛行機と思いきや、まさかの学校給食がソリューションになっています。
「知らない・食べない・広がらない」という3つの障壁を「給食提供→種明かし×新たな食育」と、学校で体験から学習へと連続性のある取り組みが非常にスムーズです。私も中学校で勉強した環境問題(アラル海の干ばつ)のことを思い出しました。学校での教育は大きな影響力を持っていると思います。
ぜひ、植物由来の代替肉が美味しいことや意義を体感・学習して子どもたちから広げていって欲しいなと感じました。
最後のスライドに他業界・他給食のスピンアウトで「機内食」も入っているのが、タイトルから連想したことを回収されていて惹かれます。

⑤<時限絶景遺産>

最後は、見事GOLDを獲得した「時限絶景遺産」です。
この作品は、まさに先述の江守さんが言わんとした「システムの変化」だと感じるアイデア。

https://www.canneslionsjapan.com/nikkei-sdgs-competition2020/assets/pdf/GOLD_20106.pdf

日本各地の四季折々の絶景を保護対象として遺産認定し、絶景が姿を消すと予測される日に向かってカウントダウンが進む時計塔を時間のシンボルとして設置するというもの。一目で分かり、各地であとどのくらいの時間が残されているのか比較もできるなど、秀逸なシステムになると感じました。
私は、この時計を見たときに、世界終末時計を思い出しました。小学生のころにニュースで見て、強い衝撃を受け脳裏に焼き付いています。自分の住んでいる近くにこの時計があれば自分ゴト化され、認知も広まり世の中ゴト化しやすいのではないかと思います。そして、どこにでも設置ができる可能性を持ち、他国でも展開ができそうなアイデアですよね!さすがGOLDの作品です。

私たちにも素敵なアイデアが突如舞い降りてくるかもしれません。その時に、先述した江守さんの記事にあったように、個人行動でとどまらずにシステムに変化を与えることができないかを考え、新規サービス・事業にすることも可能かもしれません。

【4】おわりに

今回は、「日経SDGsアイディアコンペティション」の最終プレゼンまで残った5作品をご紹介しました。
私は今回、江守さんの記事を読み、SDGsへの本質的な取り組み方はシステムに変化を与えることだと学び、この5作品によってより理解が深まりました。

優秀な作品を見てアイデアが膨らんだり、飛躍したりすることもSDGsへ関心を高める行動の一つではないでしょうか。
この記事を読んで「SDGsをテーマに行動してみるのも面白そうだな」とか「来年度は応募してみようかな」など意識や行動に変化が起きると嬉しいです。
また秀逸なクリエイティブを見て、インスピレーションを得る機会にもなると思いますので、ご紹介した事例が広告や企画のアイデアとして参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

神部さん


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