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1.Corinne Vionnet's Photo Opportunities

はじめに

こんにちは、この記事の趣旨はこちらでご覧ください。

今回がこの連載の初っ端になるわけですが、取り上げるますのは、コリーヌ・ヴィオネの「Photo Opportunities」シリーズ(1969年)です。
リンクから彼女のサイトに飛べるので見てみてください。とても綺麗な写真です。

さて、『Masterpieces of the 21st Century - art in the digital age』で、ドミニクのおっちゃんはどのようにこの作品を紹介しているのでしょう。

作家紹介

コリーヌ・ヴィオネは、スイスのヴェヴェイを拠点に活動するフランス系スイス人のビジュアルアーティスト。

主に、広範なアーカイブ研究、写真画像制作、クラウドソーシング素材のアプロプリエーション、コラージュを含むプロセスを通して、作品を制作しています。

作品紹介

そんなコリーヌ・ヴィオネのおそらく代表作であろう、「Photo Opportunities」シリーズについてドミニクは紹介しています。
「Photo Opportunities」シリーズは、簡単に言うと写真を何層にも重ねてコラージュした画像として生成されます。被写体となっているのは、観光地としてよく人々が好んで写真を撮っているようなものです。例えば、有名な建築物、タワー、橋、遺跡などの人工物や、標高の高い山、海などの自然が挙げられます。その対象物が被写体となることを欲しているかのように、インターネットには膨大な写真群がアップロードされています。それらを無限にアーカイブし、レイヤーに配置して、それぞれが溶け合うように合成させると、ぼんやりと対象物が浮かび上がり、まるで夢でみたような画像が生成されます。
ドミニクはこの作品に、その繊細さと透明感のある光の扱いに、印象派のような絵画的性質を見出します。
また彼は絵画と写真の性質のある共通性について言及しています。風景画家や写真家は、対象物をフレームの中に収まるよう、最も良い構図を探します。それに伴って、ふさわしい撮影場所や、対象と背景との関係などを探ります。これは写真が手軽にできる時代になってからは誰もができることです。写真を撮ることが好きなアマチュアならそのようなこだわりは強いでしょう。こだわりをもって決定された構図は、ある答えに導かれるように、一点に収束していきます。それが「Photo Opportunities」シリーズに最終的に浮かび上がってくるイメージです。この対象物への集合的イメージが、私たちが共通して持つ美意識であり、善的な快を現前させていると主張します。

これは傑作か?

ここからは、批評文を読んで私が思ったことを少し書いてみたいと思います。

面白いと思ったのは、この作品の時間性に着目しているところです。その中で、モネを引き合いに出しているのが興味深いです。

One, inevitably, thinks of Claude Monet because many temporalities cohabit in his images. The fragments where all the points of view agree then become zones of sharpness. It is here that Corinne Vionnet draws our attention to what unites the multiple perspectives. We can thus speak of compositions, as the nature of the pieces in the Photo Opportunities series oscillates between the pictorial and the photographic, depending on the zones observed.

Dominique Moulon, "Masterpieces of the 21st Century - art in the digital age",Translated by Geoffrey Frinch, 2021, p.205

モネは、時間や天候の変化による光の印象を絵画に反映させて描いたと聞いたことがあります。
ヴィオネの作品も、簡潔にまとめてしまうと、写真による印象的な表現であり、同じ対象を被写体とした幾重にもなるレイヤーがその撮影された場所性や時間性、また撮影した人物を想起させるものとなっています。
確かに、コンセプトとビジュアルの双方に、印象派絵画に近しいものを感じます。違うところがあるとすれば、ひとつは作家性の有無でしょう。コリーヌの作品は、ネットから流用したものであるため、作家性の境界は緩まっているように感じます。と言っても、最終的にはこの作品はコリーヌの作品であることは明白です。
しかし、このような作家性のあり方は、確かに現代ではよくある形式と言えます。

しかし、ドミニクが最後に言及しているように、この作品の作家性云々よりも、写真を撮る行為に関わった人々の中にある、集合的イメージについて考えるほうが重要でしょう。彼は私たちには「待ち望んでいるイメージ」があるといいます。そのイメージが表れる瞬間を写真家や画家は待っているのだと。そしてそのようなイメージがあることを知っているのだと言っています。
そんなイメージが本当にあるのでしょうか?
集合的なイメージ。なんだかプラトンのイデア論を想起させます。

Finally, the instantaneousness of the initial shots on site resonates with the elongated time of the superimpositions in the studio. And one imagines the long-awaited moment when, at last, an image appears that is consistent with what was anticipated. A particular moment that painters of outdoor views know just as well as photographers in the dark room do while developing traditional film.

Dominique Moulon, "Masterpieces of the 21st Century - art in the digital age",Translated by Geoffrey Frinch, 2021, p.205


いかがでしたか?
個人的には、ネットから集めた写真の解像度とかWBをどのように処理したのか技術的な面でも気になる作品でした。実物を一度見てみたいです。

それではまた次回



参照元

この連載は以下の本を参照します。
Dominique Moulon, "Masterpieces of the 21st Century - art in the digital age",Translated by Geoffrey Frinch, 2021

見出しの画像は、以下のサイトのスクリーンショットを使用しています。
https://corinnevionnet.com/Photo-Opportunities

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