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世界の都市・地域の最新事例を紹介するマガジンです(平日毎日更新)。 「case」では海外記事を抄訳して海外の都市計画関連の最新事例を紹介しています。「insight」では海外の最… もっと読む
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記事一覧

NYCとダブリンで始まったパブリックアートを通じたリアルタイムコミュニケーション

case|事例 ダブリンとNYCの街かどにライブストリーム機能が備わった公共彫刻「the portal」が設置された。the portalは、24時間年中無休でライブストリームを行うことができ、ダブリン市民とニューヨーク市民、各都市への来訪者がそれぞれリアルタイムに交流することが可能となる。 ダブリン市のthe portalは、オコーネル通りに設置され、有名なGPOビルと尖塔が画角におさまっている。スマートツーリズムの2024年の欧州首都に選ばれたことを契機に設置され、7

公共空間を人中心に再編し続けている仏リヨン

case|事例 リヨン市は、リヨン都市圏と協働で、人中心でインクルーシブな公共空間を創出し都市の変革を進めている。中でも、「rues des enfants(school for children)」と呼ばれる学校周辺の街路をより安全で環境に優しく、インクルーシブな空間に再編する野心的なプログラムが特徴的だ。 現在、このプログラムは60以上の小中学校で実施されており、生徒とのデザイン検討や交通静穏化、緑化、歩行者を優先する道路空間の再配分などが含まれている。これまでに延べ

釜山市の15分都市形成に向けた取り組み

case | 記事 韓国釜山市は、2010年にスマートシティのコンセプトが誕生したときからスマートシティの形成に取り組んできていたが、2021年の市長選挙でパク・ヒョンジュン候補(後の新市長)は、「幸せな近さ」というアプローチで15分都市をつくることを選挙公約に、釜山市における住民サービスの近接性を大幅に改善することを訴えた。その後の市政では、日常生活に不可欠なアメニティを、全ての市民が簡単にアクセスできる範囲に都市空間に充実させる計画を策定し、単にスマートシティ技術を導入

10年足らずで自動車利用を半減させたゲント

case|事例 ベルギーのゲントは、モビリティ担当副市長のフィリップ・ワッティーウ氏のリーダーシップの下、限られた資源をうまくやりくりすることで、10年足らずで自動車の利用を半減させた。2017年に変革に着手して以降、自動車の分担率は55%から27%へ半減し、自転車の分担率は22%から37%へ増加するなど著しい効果が得られている。一方で、その歩みは容易なものではなく、時にレイジ―マイノリティからのひどい批判や脅迫にあってきた。 ゲントの都市変革はユトレヒトやアムステルダム

公共交通の成功における歩きやすさの重要性を示す政策レポート

case | 事例 歩く権利の確保を目的とする国際NPO「ウォーク21(Walk21)」がこのほど発表したポリシー・ブリーフでは、自動車交通量の削減と都市の居住性の向上には、徒歩と公共交通機関の統合が不可欠であることが強調されている。レポートでは、公共交通機関の成功は、歩きやすさに大きく依存していることが示されている。 レポートでは、公共交通機関は乗客が目指す目的地にピンポイントに到達できないため、本質的には歩きやすい都市環境が必要であるという事実を強調している。歩行イン

バルセロナのルーフトップ活用国際企画コンペ

case | 事例 Reusing Rooftopsは、ミース・ファン・デル・ローエ財団と共同で、バルセロナの屋上を市民の生活の質を高める有用なスペースに変えるための国際コンペを開始した。このコンペティションは、ルーフトップという都市空間を持続可能な形で利用するための革新的なソリューションを提案する参加者を世界中から募るもので、デンマークのビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)、オランダのMVRDV、スペインのポラス・グアディアナといった建築事務所が審査委員を務める。バル

シアトル市は今後20年間の新たな交通計画を策定

case|事例 シアトル市議会は、今後20年間を計画期間とする新たな交通計画を全会一致で承認した。この計画は、シアトル市交通局と市長室、市議会が協働し、2年かけて策定された。 新たな計画では、街路や歩道、公共空間の将来ビジョンを示すと共に、公共交通をより高頻度に運行するためのサービス改善や、バス専用レーンおよび自転車走行空間の拡張、80にもわたるインフラの改善ポイントなどを提案している。インフラの改善ポイントには、将来のLRT駅の整備に向けた準備や老朽化した橋の改修、危険

サクラメント市の2045年までに市域の樹冠を大幅に増やす計画

case | 事例 サクラメント市は、2045年までに市域の樹冠被覆率を19%から35%まで増やすサクラメント都市森林計画案について、パブリックコメントを開始している。計画によると、市、市以外の組織・機関と市民は、あわせて年間約25,000本の木を植え、100万本の既存の木を保護する必要があり、市単独では目標を達成できないとしている。市は新しい樹木をすべて植えるのに十分な土地を所有しておらず、現在約10万本の樹木を管理しているに過ぎない。市は都市林作りのリーダーであり、公共

8km未満の移動の25%を電動自転車に置き換えることは33.8万台分の自動車交通の削減と等しいと試算

case|事例 ロッキーマウンテン研究所(RMI)は、電動自転車の普及が環境や社会に及ぼす影響を評価するためのツール「E-Bike Impact calculator」を公開した。このツールでは、短距離移動を電動自転車に置き換えた際の効果を2つのシナリオで評価することが可能。ひとつは、現在の与条件の下で都市全体の影響を評価するもので、10年間の累積効果が算出できる。もうひとつは、電動自転車の普及のためのインセンティブを変数として評価するもので、市の予算やスケジュール、車両タ

パリ市内の移動手段は自転車利用が自動車を上回った

case | 事例 パリ地域研究所の最近の調査によると、パリ市内の移動手段はすでに自転車が自動車を上回っており、全移動の11.2%を自転車が占めており、自動車は4.3%に過ぎなかった。ラッシュアワーの時間帯でも、自転車での移動が18.9%を占め、車での移動は6.6%にとどまった。同様の傾向は、パリ郊外と中心部間の移動にも見られ、全移動の14%を自転車が占めており、自動車は11.8%となっている。調査は、GPSトラッカーを装着することに同意した首都圏の住民3,337人を対象に

ソルトレイクシティの社会包摂を意識した新たなTOD開発

case|事例 ソルトレイクシティ再開発庁(RDA)はリオグランデ地区の再開発に関する将来ビジョンと実行計画を発表した。今回構想が発表された再開発は公共交通指向型開発(TOD)となる予定で、都心西部のアートやコミュニティ・ウェルネス、経済成長の拠点となることを目的としている。ビジョンには地上階を小売りやメーカーズスペースとした住宅や新しいホテル、非営利活動用のスペースなど、多様な用途を混合させたウォーカブルな地区が示されている。 今回のビジョン策定は、世界的な設計会社「P

シアトル市の増税案に対して市民グループが持続可能な交通と住宅への投資を要求

case | 事例 シアトル市は、同市史上最高額の8年間で13億5000万ドルに及ぶ、戸建住宅所有者への固定資産税増税案を提案している。「交通賦課金案(Transportation Levy Proposal)」と題されたこの法案では、税収を幹線道路の改善と舗装、特定橋梁の補修、歩道の整備と補修、自転車専用レーンの拡充、新規交通信号の設置に充てることとしている。これに対し、市民団体は税収の用途として、徒歩や自転車での移動も含め、公共交通機関の利用機会の拡大と、住宅への投資を

アメリカは27億円をかけて公共交通指向型開発を促進

case|事例 アメリカ連邦交通局(US Federal Transit Administration:FTA)は公共交通沿線のアフォーダブル住宅の整備などへの補助として1,760万ドル(約27億円)の財源を確保した。補助は、超党派のインフラ法に基づくTODパイロットプロジェクトを通じて提供され、延べ16州の20地区が補助を受ける見込み。今回の補助は、公共交通沿線の住宅開発やオフィス開発を通じて交通の利便性を高めるための計画策定を対象としており、計画の中にアフォーダブル住宅

パリオリンピックの水泳競技はセーヌ川で実施できるか?

case|事例 フランス政府とパリ市はセーヌ川の水質改善を着々と進めており、今夏のパリオリンピックの水泳競技をセーヌ川で実施することに自信を持っている。 一方で、サーフライダー財団が実施した水質調査レポート(フランス語)では、セーヌ川で高レベルのバクテリアが確認されたと報告されており、懸念もある。サーフライダー財団は、昨年の秋以降、パリ都心部2カ所でサンプル採取し水質の分析を行ったところ、基準値以上の大腸菌と大腸球菌が見つかったと発表している。 パリ市の担当副市長は、「