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世界の都市・地域の最新事例を紹介するマガジンです(平日毎日更新)。 「case」では海外記事を抄訳して海外の都市計画関連の最新事例を紹介しています。「insight」では海外の最…
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記事一覧

スマートグロースに対してTODがもたらす5つの価値

case|事例 アリゾナ大学の研究チームが、公共交通指向型開発(Transit Oriented Development:TOD)がどのように都市を変えていくかを長期にわたって検証したレポートを公開した。2007年から2009年までのリーマンショックに伴う大不況から2020年から2023年までのCOVID-19までを含む期間で、アメリカ国内のTOD事例を分析し、TODが雇用をどのように増加させ、世帯動態をいかに変え、通勤パタンや不動産価値、ジェントリフィケーションにどのよう

アムステルダム市はスキポール空港の夜間の発着禁止を要求

case|事例 アムステルダム市は、市民の生活の質を高めることを目的に、スキポール空港の発着便数の削減と23時から翌7時までの完全な飛行禁止をオランダ政府に求めている。発着便数の削減量は現状の9%(年間40万便)を要求しており、その代替として短距離フライトに替わる長距離列車の改善などを検討している。また、併せて飛行距離に比例した航空税の導入も提案している。 アムステルダム市の副市長は、今回の提案について、「近年、生活の質や気候、労働条件への配慮が不十分であった。地域住民の

3Dデータがバリアフリー都市への道を開く

case | 事例 スイスのバーゼルで3Dデータを用いて、誰もが不自由なく移動できるインクルーシブな都市づくりに向けた試みが進んでいる。バーフュッサー広場(Barfüsserplatz)はバーゼル市の中心にある、トラム8路線が集まり、有名なバーが広場を取り囲み、年間を通じてマーケットやフェスティバルが開催され、スイスのサッカークラブFCバーゼルのイベントが開催されたりする広場である。ここは活気に満ちた広場である一方で、障害物も多い。段差、縁石、トラムのレール、石畳などは、足

ベルリン市とハンブルク市は持続可能な地域交通の構築に向けた戦略的な協定を締結

case|事例 ベルリン市とハンブルク市は持続可能な地域交通の構築に向けて戦略的な連携協定を締結した。この協定では、交通事業者や行政をはじめとする関係機関の知識を結集し、様々な交通課題に対して、ソリューションを共創していくことを目的としている。 都市は様々なニーズと課題を抱えた集合体であることから、今回の共創関係の構築には価値がある。ベルリン市とハンブルク市は、すでに行政単位では定期的に交流を行っているが、今回の協定によってさらに関係者を巻き込み、自動運転の導入やバス停な

公共空間で女性と女児の安全を確保するための新たな計画ハンドブック

case | 事例 ロンドンレガシー開発公社(LLDC, 2012年のロンドン五輪会場の再生を担うロンドン市の財団。公園、住宅コミュニティや商業地区の整備を進めている)は、国際的な総合エンジニアリング企業であるARUP社の支援を受け、自治体、開発者、設計者向けのハンドブック「女性と女児のために機能する場所の創造」を発表した。 このハンドブックは、女性や女児のニーズが考慮されないことが多かった従来の都市のデザインや、都市計画に組み込まれたジェンダーの偏見に対処するための広範

ゲント市は物流企業と協働での排出量削減に向けた実証を検討

case|事例 ベルギーのゲント市は、物流の排出量削減に向けて2つの実証実験を企画しており、都心部で商品配送をおこなう企業に対して実証への参加を呼び掛けている。現在、ゲント市都心部では毎週7,000トンの商品が配送されており、そのために40,000トリップもの移動が発生している。ゲント市は、健康的な都市環境を創出するために物流の改善が大きなインパクトを持つと考えている。 ひとつめは物流企業に無償で電気自動車を貸与するもので、1週間にわたって電気自動車での配送を試行してもら

自転車レーンが都市の経済にもたらす5つのメリット

case|事例 (5年前の記事ですが引用している論文やレポートも多く、今読んでも参考になる記事です。) 自転車の利用促進は、様々な立場から多様な論争や主張がある。例えば自転車レーンの整備は、自転車利用者の安全性を確実に高める一方で、整備にかかるコストや空間のありようなどについては議論の余地を残している。このような中で、健康や環境に対するメリットに加え、都市の経済に対するメリットを明らかにするような研究が行われつつある。そのメリットは大きく5つに分類できる。 1.地域の小

コペンハーゲンの新しいグリーン・エコノミー・プログラム「コペンペイ」

case | 事例 デンマークの首都コペンハーゲンは今夏、観光客に環境に配慮した選択を促すための新しいプログラム「CopenPay」を試験的に開始する。調査データによると、旅行者の82%が持続可能な行動を取りたい意欲を示している一方で、実際に行動を変えたのは22%に過ぎないとの結果を得られている。この結果をもとにコペンハーゲンの観光機関Visit Copenhagenは、環境に配慮した行動を文化体験の通貨に変える取り組みとしてCopenPayを導入する。旅行者は、自転車の利

ロンドンは2025年からEVも混雑課金の対象とすることを決定

case|事例 ロンドン市交通局(TfL)は2025年12月から電気自動車(EV)の混雑課金免除を解除し終日の課金対象とすることを発表した。現在、EVは年間10ポンド(約2,000円)の支払いを課されるだけで、1日15ポンド(約3,100円)の日々の課金は免除されている。 TfLは、EVに対する混雑課金の免除はあくまでも大気汚染対策の段階的な計画のひとつであり、混雑課金の免除を解除する今回の決定によって、ロンドン都心部の混雑対策がより有効性を増すとコメントしている。現在、

SFはビジョン・ゼロの達成に向け都市間比較のためのダッシュボードを整備

case|事例 サンフランシスコ市および郡は2014年にビジョンゼロを政策に位置付け交通事故での死亡者数0を目指している。サンフランシスコ市はビジョンゼロの進捗をモニタリングするために米国12都市と比較するためのダッシュボードを開発した。ベンチマーク都市との比較によって、サンフランシスコの交通安全に関する指標がどのような状況にあるのか理解を促すことが期待される。市の担当は、交通安全は複数の様々な要因が関係しており、ビジョンゼロを達成するためのメカニズムには複雑さがあるが、少

コンパクトシティはCO2排出量が少ない一方で、大気質が悪く、緑地が少なく、死亡率が高い傾向

case | 事例 バルセロナ国際衛生研究所(ISGlobal)は、欧州の919都市について、人々の健康状況と、都市の環境、CO2排出量について、都市のレイアウトの視点からの分析研究を行った。研究では、欧州大陸の都市を (1) コンパクトな高密度都市、(2) 開放的な低層・中密度都市、(3) 開放的な低層・低密度都市、(4) 緑豊かな低密度都市 といった4つのカテゴリに分類した。 コンパクトな高密度都市:市街地面積が小さく、人口密度が高いことが特徴。歩行者エリアの密度が

シティとその近隣自治区で大気質のリアルタイムモニタリングツールを導入

case|事例 ロンドンのシティとハックニー区、ニューハム区、タワー・ハムレット区はリアルタイムの粒子状物質の飛散状況やNO2レベルの可視化ツール「Air Aware」を導入した。このツールの導入によって、市民の大気汚染への曝露を減らすことができると期待されている。 英国の環境・食料・農村地域省からの支援を受けて構築されたAir Awareは、スクエアマイルや各ネイバーフッドの大気質状況が可視化されるだけでなく、質問に答えるためのチャット機能や地域イベント、ニュースなどが

ハッピー・シティ・インデックス2024(都市ランキング)

case | 事例 英ロンドンに本部を置く生活の質研究所(Institute for Quality of Life)が2024年のハッピー・シティ・インデックス(HAPPY CITY INDEX #2024)を発表した。ランキングは、都市で人々が幸せになる要因を特定するためのプロジェクトとして進められてきたものである。「幸福度」は主観的なものであり、都市がコントロールできない多くの要因に左右されるため、都市のランク付けにおいて、幸福度そのものを測ることをせずに、都市の行政

ヘルシンキは記録的なペースでCO2排出量が減少している一方、交通分野の低炭素化が課題

case|事例 ヘルシンキ市が発行した最新の環境レポートによると、2022年比でCO2排出量が25.4%減少しており、記録的なペースでCO2の削減が進んでいることが明らかになった。その内訳をみると、地域暖房で35%減、電力消費23%減と、この2つが特筆して削減量が大きい。ヘルシンキ市役所は、この大幅なCO2の減少の要因として、ロシアのウクライナ侵攻の影響が平準化されたことに加えて、石炭火力発電所の閉鎖や市営エネルギー企業「ヘレン」の低炭素への着実な投資をあげている。 一方