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130. フランス人マダムへのはなむけに、日本画で筑波山を

bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
このフランス滞在記にたびたび登場するフランス人マダムが、いよいよフランスへ帰国することになりました。その折に悩みに悩んでわたしがプレゼントしたものとは?


2023年7月。
昨年、ギャザリングパーティに持っていった栗の渋皮煮のレシピを尋ねられたことからフランス人マダムとの交流がはじまった。それから、クレープの作り方を教えてもらったり、家庭料理のレシピを交換しあったり、お家に呼んでもらってフランス流のランチ時間の過ごし方を教えてもらったり、我が家で手巻き寿司パーティをしたり・・。食を通して、本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。

以前、マダムから「7月にフランスに帰ることになりました」とメールをいただいてはいたけれど、「まだまだ先のこと」と思っていた。しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎゆき、気がつけば6月。先月は、マダムからお別れパーティの招待が届くと、とてつもなく寂しい気持ちになっていた。

「寂しい。わたし、本当にマダムが好きで、すごく楽しかった」
そう夫に呟くと、

「寂しいね。でも、同じ地球に住んでいるんだから、また会えるよ。それにフランスに遊びにいく楽しみが増えたじゃない」と励まされた。

そうだね。確かにそうだ。
同じ地球に住んでいるんだから、また会える。
でも、気軽に玄関先にお惣菜を届けたり、道路でばったり会ったりできないのはやっぱり寂しいな・・。

お別れ会の日に、つくばで過ごした思い出になるようなものを、何か一つプレゼントしたい。以前からそう考えていて、6月はずっとバタバタと忙しく過ごしながらも頭の片隅にずっとプレゼントのことを巡らせていた。うちに遊びに来てくれた時、わたしが描いた日本画を気に入ってくださっていたから、日本画をプレゼントしてみる?小さなキャンバスなら軽いしかさばらないしいいかも?と思ったけれど、その時。

「そうだ、桐箱に描いて渡そう!」
とひらめいた。


桐箱の中にはシンプルで綺麗な夫婦箸を入れてプレゼントしよう。喜んでくれるかしら・・と、さっそく京都の老舗のお箸屋さんからお箸が二膳入る桐箱を取り寄せました。桐箱に描くモチーフはご夫婦の良縁を願って、筑波山。

表面をヤスリで滑らかにして、ドーサ(にじみどめ)をひき、盛り上げ胡粉を塗る。
盛り上げ胡粉は、ぷくっとエンボス加工のようになって可愛い。胡粉と混ぜた朱色の水干絵の具でうっすらベースを作る。
上から荒めの岩絵具の赤を重ねると、角度によってしたの淡い薄紅色が透けてみえてきれい。まるでお化粧をしている気分です。
続いて、山肌を作っていきます。まずは淡い緑色から。このあと、黙々と色を塗り重ねて・・。
ゴツゴツとした山が現れました。岩絵具を重ねているので、横からみると宝石のようにキラキラと輝いて綺麗です。
金泥で太陽や、花・雲を縁取って、完成。


日本画の工程は一つ一つに時間がかかる。まず絵の具を作るところから始まって、塗っては乾かし、塗っては乾かしを繰り返す。下の絵の具が完全に乾かない状態で重ねて塗るとひび割れを起こしてしまうから、一工程ごとに待つ時間が自然と生まれる。

この、待つ時間がとても良かった。
この時だけは、忙しい流れから解放されて、手渡したい想いにまっすぐ向かっていける気がしたのだ。

さぁ箱は上出来。
あとは、この中に入れる素敵なお箸を、と探し求めるが・・?

次回につづく。

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