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過保護と過干渉

カウンセリングのお仕事をするなかで気づくことがあります。20年前に比べ近年は自己中心的で自己愛の強いナルシストが増えているようです。その傾向が特に日本人に顕著に見受けられます。心理学者のNathan DeWallはこのように発表しています。「最近の親は自分の子供が利己的なナルシストになってしまわないかとFacebook やSNSの影響を危惧するが、それらの影響よりもさらにナルシストを作っているのは実は親そのものだ。皮肉な話だ!」と言っています。Dr. DeWallは、最近急増しているナルシストを作っているのは主に親の過保護・過干渉が原因だと言って警笛を鳴らしています。(注:心理学では、D r.DeWallの言うようにナルシストは過保護・過干渉・溺愛によっても育成されるますが、逆に親からの愛情欠乏や比較や否定をされながら育つことによっても形成されるとされています。)

カウンセリングにおいても過保護・過干渉のお母さんや、過保護・過干渉によって育てられた方をお見受けします。我が子が可愛いいあまりに大切に子供を守り育て、嫌な思いや辛い思いはさせない。子供は叱咤激励されて頑張る、そんな経験が無いので、自信が育つこともなく逆境に弱い。頑張らなくても大したことをしてなくても親が褒め続けてくれます。何か嫌な思いをしたら親がすぐにクレイムをつけてくれます。辛いことを乗り越える術も知りません。親戚や近所のおじさんやおばさんに雷を落とされたこともないので、社会に出たらキツイ言い方をするような人に耐えられません。心の免疫も心の体力もないのです。

社会に出てもすぐに仕事を辞めてしまう。結婚も上手くいかない。お酒やドラッグにひたる。親のスネをかじる。そんな我が子を見てお母さんは「どうしたらいいですか?」と聞かれますが、子供はとっくに成人しています。成長しきってしまった人格を育て直すのは至難の業です。その上、親がどうにかしようと思っても、等のご本人が自分で「このままではいけない」と気づいて成長する努力をしようとしないのではどうにもなりません。これから甘やかされて育ってしまった分のつけを本人が払わなければなりません。

「貧しさの中なら、労(いたわ)りだけで十分子供は育つ。だが豊かさの中では、精神的な厳しさを与えなければ鍛えられない」と松下幸之助さんの言葉にあります。親は優しいだけでなく時には心を鬼にして子供を叱咤激励し強さや忍耐力も育ててあげることが大切です(もちろん、躾を理由にした虐待やニグレクトはあってはなりませんが!)。溺愛している親はそれが子供を駄目にしているとは自覚していません。溺愛しているという意識もなく、良かれと思って自己肯定感の高い子にしようと思って頑張っています(自己肯定感については日本では、あまり正確に認識されていないように思います。自己肯定感という日本語訳が良くないように思います。)。しかしそれが実は我が子を駄目にしているとしたらどんなに残念なことでしょうか。褒めて育てるのは大切なことですが、溺愛することと一線を引いてみることも同じように大切なことです。


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