La Pineapple

在米26年の米国臨床心理士。米国健康保険を取り扱うメンタルヘルスプロバイダーとして診断とサイコセラピー(心理治療)に従事。過去に掲載・出版された拙コラムがどなたかの健康・幸せ・成功のヒントになれる事を願って、noteに掲載。(出版社から拙コラムを他に掲載する承諾は受領済み)

La Pineapple

在米26年の米国臨床心理士。米国健康保険を取り扱うメンタルヘルスプロバイダーとして診断とサイコセラピー(心理治療)に従事。過去に掲載・出版された拙コラムがどなたかの健康・幸せ・成功のヒントになれる事を願って、noteに掲載。(出版社から拙コラムを他に掲載する承諾は受領済み)

最近の記事

許したほうがいい ある理由

みなさんには許せない人がいますか? 許せないままに心に持ち抱えていることなどありますか? “許し“は以前はよく宗教で扱われてきたテーマでありますが、近年、心理学や医療の分野でも注目されるようになりました。”許し”という精神的な作用が心身の健康に大きな影響を与えることが証明されるようになったからです。 Finally Outの著者で精神科医のDr. LOREN A. OLSONは“許し”と心身の関連を調べた研究で、「許すことによって、私たちは怒りを手放し、社会性が改善され、

    • 長生きの秘密

      健康と幸福と成功をテーマに調べた研究があります。1938年から始まって以来長期にわたり続いているハーバード大学医学部で始めたグラント・スタディで、268人のハーバード大学の白人男性が被験者となりました。奨学金による学生も多数含まれ、被験者のバックグラウンドはさまざまです。これらの被験者を対象に2年ごとにデータが収集され研究が続いています。 2012年には、後半の35年の間この研究の監督をしているジョージ・バイラント教授が“長生きの秘密”を発表しました。その秘密には3っつ要素

      • 無理矢理なポジティブ思考と鬱の関係

        ポ ジティブな言葉を使ったり強く頭に描くことによる影響など、ポジティブ思考の大切さが広く認識されるようになりました。その一方で困ったことが起きていま す。ネガティブな言葉を避けたりネガティブな感情を持たないなど、極端に自分の言動や感情を抑圧している人がいることです。 いつも“嬉しい、楽しい、つい ている、ありがとう、感謝” などのプラスの言葉しか口にしない。頭で考えることもプラスのことに制限する。気分が滅入れば滅入るほど“嬉しい、幸せ、つ いてる、、、”と唱えつづけ、こうす

        •  適応障害ってどういうこと?

          今回は適応障害についてお話します。 適応障害とは、ストレッサーと言われるストレス因子が存在し、そのストレッサーからくる精神的な疲労のために、家庭・学校・仕事などの社会生活に支障をきたすようになることです。 XX障害といわれてしまうと、、何か精神病を患っているようなすごいことのように感じられるかと思いますが、軽度の適応障害をおこしている方、実はとても多いといっても過言ではありません。よくあるストレッサーとしては大学や仕事でのプレッシャー 、経済的な問題、夫婦の問題、将来の不

          恐怖体験をしたら! こうして下さい!(PTSDを防ぐ応急処置)

          (2011年に書かれたものです) 強い恐怖を経験をしたり目撃したことがトラウマとなって起こるストレス障害をPTSD(心的外傷後ストレス障害/Post Traumatic Stress Disorder)といいます。症状は人により様々ですが、悪夢、睡眠障害、吐き気、フラッシュバック、過度の驚愕反応、パニック障害、対人恐怖、離人感、怒り・イライラ、焦燥感、感情や感覚の麻痺、ウツなどがあります。 同じような恐怖体感をしてもPTSDになる人もいれば、ならない人もいます。New Y

          恐怖体験をしたら! こうして下さい!(PTSDを防ぐ応急処置)

          自然とウォーキングと癒しの研究

          前回は、犬の散歩が飼い主の精神的健康の維持と幸福感に貢献しているというお話をしました。今回は、犬を飼っていない人でも、簡単に生活に取り入れられそうなメンタルヘルスケアのお話です。 心身の健康促進、病気の未然予防の研究とその普及に力を注ぐDr. William Bird は、病気になってから治療をするよりも、未然予防の知識を得て、それを実践することの方が良いと述べています。Bird医師の著書『Walking for Health and Happiness』では、私たちの心身

          自然とウォーキングと癒しの研究

          虐待を受けた子に見られるダメージ

          虐待を受けて育った子供は、心身に大きなダメージを受けます。虐待には身体的虐待の他に、精神的虐待、言葉による虐待、性的虐待、およびネグレクトが含まれます。言葉の虐待や精神的虐待も身体的虐待や性的虐待と変わらないほどの強力なパワーを持って心身を傷つけます。特に小さな子供が受けるダメージは深刻です。 1998年、ハーバード・メディカルスクールのMartin Teicher博士は、小さい時にひどい虐待を受けた人の脳を調べ、健全に育った人の脳と比べました。そして、虐待を受けて育った被

          虐待を受けた子に見られるダメージ

          犬の散歩がもたらすメンタル効果の研究

          盲導犬をはじめ、特別な訓練を受けた犬が警察、空港、ミリタリー、病院など、世界のあちこちで活躍しています。中には戦地で大変重要な役目を受けて働いている犬もいます。医療の分野では、ガン細胞を嗅ぎ分ける訓練を受けるなどして、今後益々期待が持たれています。 心理学の分野でも、犬と人間のメンタルヘルスに関連した研究が益々盛んです。自閉症の子供や、戦地から帰った軍人の重度のPTSDなどへの効果も認められています。心のケアの進んだ病院や老人ホームでは、セラピー犬が人の心を慰め、癒してくれ

          犬の散歩がもたらすメンタル効果の研究

          「自分を愛する」ということ

          心理学では自分を愛することの大切さを説明しています。アメリカでは多くの心理学者がそういった内容の本を一般読者向けに執筆しています。近年の日本でも“自分を愛しましょう”というメッセージが広まり、自己肯定感が大切であるという認識と相まって、“自分を褒めてあげましょう”、“自分にご褒美をあげましょう” などといった事が言われるようになったようです。 近年 “ナルシストタイプの人が増えている” という報告がありますが、この “自分を愛しましょう” というメッセージが、一部誤解されて

          「自分を愛する」ということ

          過保護と過干渉

          カウンセリングのお仕事をするなかで気づくことがあります。20年前に比べ近年は自己中心的で自己愛の強いナルシストが増えているようです。その傾向が特に日本人に顕著に見受けられます。心理学者のNathan DeWallはこのように発表しています。「最近の親は自分の子供が利己的なナルシストになってしまわないかとFacebook やSNSの影響を危惧するが、それらの影響よりもさらにナルシストを作っているのは実は親そのものだ。皮肉な話だ!」と言っています。Dr. DeWallは、最近急増

          過保護と過干渉

          森の香りが私達にしてくれる事

          森を歩くと、なんとも言えない爽やかな香りがしますね。緑豊かな公園で澄んだ空気を胸いっぱいに深呼吸すると身体中がリフレッシュする心地がします。今回は、森の香りの正体とその働きについてのお話です。 ある種の木々や植物は、抗菌・防虫、消臭の力を持つ揮発性物質を放出します。これによって動くことのできない樹木は昆虫や動物に葉や幹を食べられないように自分を守り、微生物を避けたり誘ったり、悪い菌に感染しないように殺菌を行ったりします。生い茂った森の中で、枯葉や腐った木の実、昆虫や動物の屍

          森の香りが私達にしてくれる事

          笑の効用

          笑いが心身に及ぼす影響についての研究が盛んに行われています。 ア メリカでは1982年に医師や心理学者によって「笑い療法研究会」が結成され、「笑い療法」による治療効果がシンポジウムなどで報告されるようになりまし た。「笑い療法」とは、病気などで入院中面白い本や映画などをみて大笑いすることで免疫機能を活性化し治療に役立てる、という療法です。 今回は笑いの効用についてのお話です。 まず身体面での効用です。色々あるなかでも主な効果としてはこんなものがあります: (1)健康な

          笑の効用

          涙はストレスを解消する

          思いっきり泣いてみたい時、ありませんか? 一人になってワンワン泣いたらスッキリした、なんて経験ありませんか? 泣くという行為にはストレス解消効果があるようで、涙は伊達にある訳ではないようです。 米国の人口統計学者ウイリアムH. フレイ2世博士は「感情的な涙」についての調査をしました。涙を流す原因となった感情で一番多かったのが「悲しみ」で50%、次いで「喜び」20%、その次が「怒り」10%、その他、同情、心配、恐怖、となっていました。このような感情からくる涙を流した後、男性で

          涙はストレスを解消する

          セルフエスティーム(自己肯定感)

          私たちの幸福感を左右するものの一つに「セルフエスティーム」というものがあります。「自己価値感」「自信」「自己評価」を合わせたような意味です。セルフエスティームが健全であると、ありのままの自分を受け入れて自分に対してポジティブな姿勢を持てます。これは深層心理レベルの意識で、学歴、地位、名声、特別高い能力、経済力などによって評価される表面的なものではありません。 セルフエスティームがしっかりしていると、こういうものがなくても自分の存在を肯定的に受け止められると共に自分の短所も認め

          セルフエスティーム(自己肯定感)

          誰でもできる! 関係が負のスパイラルに落ちないためにできること

          前 回のコラムで、相手への批判や文句が負のスパイラルを生む原因となり、悪循環が進むと抜け出すことが難しくなる、というお話をしました。負のスパイラルがどのように作られるか、そのフォーメーションについてもお話しました。今回はもう少し積極的に、「ではどうしたら負のスパイラルを避けられるか」というお話 です。 それは「プラスのやりとり」をつくることです。プラスのやり取りとは、夫婦間の色々なやり取りが総合的にプラスであること、例えば文句より感謝の表現の ほうが多い、ということです。今

          誰でもできる! 関係が負のスパイラルに落ちないためにできること

          破局の元になる負のスパイラルって何?

          マッ リッジカウンセリングで負のスパイラルに入って出れなくなってしまったご夫婦のお手伝いをすることがよくあります。負のスパイラルに入ってしまった後に、 自力でスパイラルから出たり、上昇の方向へと転換させるのはたいへんなことです。マリッジカウンセリングでも早いうち(通常数年以内)だったらいいのです が、あまりに時間が経って悪化した後での回復はかなり難しくなります。なので、負のスパイラルを作らないようにするのが一番です。今日は負のスパイラルが どうやってできるか、ある一つのタイプ

          破局の元になる負のスパイラルって何?