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ヒエラルキーへのアレルギー -天邪鬼の矜持-

私は、天邪鬼です。

私の地域では、退職すると地元の「退職校長の会」というのに入るのが通例になっています。
もう何十年も続いている会です。

定期的に会報も出しているし、教育関係の内容はもちろん、趣味の領域に関するさまざまな行事も組まれています。
退職すると、人とのかかわりが極端に減ってしまいますから、そういう会も意味のあるものだとは思います。

けれども、私は一応年会費は収めているものの行事には一切参加したことはありません。
それどころか、役割分担を依頼されたときも断りました。
今後、何かしらの運営上の仕事を依頼されたら退会してもいいとさえ思っています。

私はやはり天邪鬼なのでしょう。

おそらく、この会をいつやめてもいいと考えている人間は私以外にいないのではないかと思います。
なぜ、すぐに退会しないのかというと、年会費を惜しんでいると思われたくないからです(この辺が器の小さいところなのですが)。

私がこの会に違和感を覚えるのは、この会が主催する講演会や飲み会の行事に、現役の教諭や管理職を巻き込んでいるからです。
純粋に退職校長だけが集まるのなら、さほど違和感はなかったと思うのですが、現役の人に半ば動員をかけるようなことはいかがなものかと思うのです(特に、現役の管理職は忖度します)。

私も現役の管理職の時には、飲み会にも参加していました。
すると、どうしても現役が先輩に教えを乞うような雰囲気になってしまうのです(悪気はないとは思うのですが)。
私は、それが嫌で仕方がないのです。

かつて、県の指導主事をしていたとき、同様の会があって指導主事1年目に事務局の仕事をさせられました。
おそらくそこで経験したことが、一種のトラウマになって、この手の会に拒否反応を示すようになったのだと思っています。

それは、表面上は母校の卒業生が集まる同窓会の形をとってはいましたが、卒業生以外にも現在母校に赴任している校長や、これから指導主事をめざそうと考えている者(母校の卒業生以外も含む)、果ては県会議員や県教委の教職員課長などが必ず参加していました。

悪く言えば、「飲み会人事」のようなものです。
そこでは、卒業年度によって上座から厳格に座席位置まで指定しなければならず、一人ひとりの自己紹介に当たっては、事務局の者(当時は私)が順番にマイクを回していかなければなりませんでした。
しかも、マイクを素手で持つことは許されず必ず、手に持ったおしぼりにマイクをくるむようにして渡し、一人が終わるとまたおしぼりで受け取り、次の人のところにおしぼりを使って渡していくのです。
総勢50名ほどの参加者に、すべて同じように続けます。
その上、順番を間違えるとものすごく叱られます。
「なんで、あいつの方が先なんだ!」
といった具合に。

ヒエラルキーというのはこういうものなんだと実感しました。
20年以上も前のことなので、今はもうそんなことはしていないとは思いますが……。

ちなみに、ひどい「先輩」もいました。
私は当日の受付もしていました。
受付では二次会に参加する人から、一次会と合わせた金額を徴収するシステムになっていました。
ところが、「ちょっと、考えさせてくれ」と言って二次会のお金を払わないまま自分の席につく人が何人もいたのです。
しかも、何食わぬ顔で二次会に参加しているのです。
二次会の費用は5000円くらいだったと思いますが、それを出し惜しんでごまかそうとしていたわけです。
何とも「せこい」話です。
私は上司の命を受け、二次会の真っ最中に「未納」の人のところに近寄り「集金」するはめになりました。
私も意地になって「絶対、全員に払わせる」と思って、ぎゅうぎゅう詰めになった二次会のスナックで必死に集めました。

その後、上司(幹事長)に「全員徴収しました」と報告したら「お前、すごいなあ」とほめられました。
ということは、過去には最後まで逃げ切った(いわゆるただ飲み)「先輩」がそれなりの数いたということなんでしょう。

話がそれてしまいましたが、私はそういう「上位下達」の世界が大嫌いなので冒頭の退職校長の会にも消極的なのです。

私は、年長者が若い人に助言するのを悪いことだとは思っていません。
でも、「俺の時代はもっとすごかった」みたいな話になりやすい酒の席での助言は生理的に合わないのです。

これからの学校は大きく変わらなければなりません。
そんなときに、自分の過去の経験の枠組みの中だけで自慢話をする「先輩」にだけはなりたくありません。
それこそ「老害」です。
退職してもなお現職の人に何か言おうと思うのなら、忙しい学校現場では気づきにくい新しい視点を持つ「矜持」は必要だと思うのです。

こんなことを考えていること自体、私が天邪鬼である何よりの証拠だとは思いますが。

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