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学会遠征編ショート版 第36話 国際学会の始まり

前回のあらすじ

 昨日(学会遠征編 5日目 バンコク上陸|シナモンパン (note.com))に、タイのバンコクに上陸した。人生初海外で湧き上がる中、まずは1日CRAZYと一緒に観光した。熱帯の蒸し暑い気候や金ぴかの寺院、汚い川にスパイシーな料理など、日本しか知らない自分にはどれも刺激的で目新しいものばかりであった。

朝食

 前日の夜に朝食は買っておいた。今日は出発が朝の7:30なのでそんなに時間がないからである。ホテルに朝食を付けたとしても、開始時間が7時では十分に食べられないまま出ることになり不毛だ。これもあって朝食なしのプランで部屋を取ったのだ。そのため朝からコンビニ飯である。パンをいくつか買っておいたのだが、たくさんあるので少しは昼飯用にカバンに忍ばせておくことにした。僕の発表の順番は昼休み直後の1番なので、多少お腹が空こうともすぐに食べられるものである必要がある。ただし、コンビニは300バーツ以上でないとクレカが使えないので効率よく無駄遣いしなければならない。そのため、パン以外にもいい香りのする携帯用ミント(合法)と冷えピタを買った。もうUSBの線はいらない。

入場

 7:30に僕のホテル前でCRAZYと合流した。もう既に暑いが、彼はジャケットも羽織っていてさらに暑苦しそうだ。カッター+ネクタイの僕に対してジャケットは着なくていいのと聞いてきたが、この国なら、いやこの温度なら許されるだろうということで気にしないことにした。こういうところで本部には合理的になってほしいものである。
 道は迷わない。昨日予習しておいたので、地図なんて必要ないのだ。会場のホテルに入ってエントランスに尋ねる。我々の会場は3Fでやるらしい。3Fまで上って、学会参加の手続きを行った。これにて正式に開始である※1。この階丸ごと貸し切りらしい。まずはカウンターでウェルカムドリンクをいただいた。コーヒーやオレンジジュースなどいろいろ選べるようだが、自動エスプレッソマシンが楽しそうだったので、1杯目はカプチーノにした。クッキーももらえた。自由席だったが、ちょうど2つ並んで空いているところがあったので、そこを僕とCRAZYが座った。そこには自由に使えるメモ用紙の他に、なんとボトルの水と眠気防止用のスッとするキャンディが用意されていた。なんというおもてなしの精神だろうか。これなら飲み物どころか朝食すら用意しなくてよかったではないか。ちなみに、この学会は参加費無料だ。それなのにこんなに手厚くもてなされては、逆に恐怖すら感じてしまう。また、参加者は日本人とタイ人が半々ずつと発表者リストには書いてあったが、パット見た感じ日本人は少ないようだった。たしかに、オンラインでも参加できるので、わざわざ来ない人もいるのだろう。

発表 午前の部

 午前は僕もCRAZYも出番がないのでただの聴講である。僕は頑張って英語を追ってみようと聞いてみたが、マイクで音がつぶれて全然聞き取れなかったので、あきらめて自分の発表資料の最終調整をして過ごした。奴はもちろん発表資料の作成だ。この時点でまだ発表資料が数ページほど空白なのは控えめに言っても気が狂っている。さすがCRAZYだ。こんなヘラヘラした37歳児も、肩書はドクターである。横目で見た感じ結果は申し分ないくらいに出している。もう原稿の方は見限ってアドリブにしゃべることにしていた。彼にとっては英語は母国語の一つなので全然問題ないのだろう。5人ほど発表が終わるごとに休憩時間がある。最初の休憩時間に会場全体で記念撮影をした。中には3,4歳くらいの小さな女の子もいた。ずっと女性にくっついていたので、子連れで来たと言うことだろうか。周りのおじさんたちはメロメロになっていた。厳正なる国際学会というとたいそうなものに思えるが、割とラフな会なのでこういう癒しも許されるのだろう。その母親(?)は発表もしていたが、子どもはその発表にあまり関心を持っていなかった。
 部屋の外に出てお手洗いを済ませようとしたら、先ほどカプチーノをいただいたカウンターに更なるクッキーの山々が連なっていた。これはもう1つずつもらうしかない。飲み物のレパートリーも増えていた。発表の番が回ってくるのは緊張するが、おやつバイキングをしてけっこう楽しむことができた。音もごみも出さないように気を付けているとはいえ、飲食しながら聞いている人を前に発表者はどんな気持ちになるのだろうか。緊張していてそもそも聴講者の様子なんて気に留めることもできないのだろうか。それとも俺の話を聞けと言わんばかりに腹立たしくなるのだろうか。おそらく僕は気づいたとしても無関心だろう。



※1 本当は「学会」ではなく「研究会」と呼ばれる類のものであるが、ここでは学会呼びで統一する。

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