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【夢日記】強張った赤

 海辺の研修所での夜、切れかかった照明の点滅に晒された門口からから僕は抜け出し、砂浜に向かおうとしてた。真っ暗な視界には恐怖を感じたが、蝉と鈴虫が鳴いている声が光の代わりに世界を形作ってくれた。そんなことを考えると砂浜に向かう目的を忘れそうにもなったが、一世一代の思いを告げに行くことを思い出した。

 砂浜に着くと黒い人物の影があった。きっと誰かがここにいる、と予め知らなかったらば、恐怖でしかないだろう。影はナジェーテの影だった。彼女はバンドの練習で忙しそうだったが、砂浜に立っていた。彼女を決して脅かさないように遠くから声をかけたが影は跳ね、顔が見える距離まで近づくと、影の肩の力は抜けていった。お互いの顔を認識して開口一番、肩を掴んで囁いた。

 彼女は不安そうな表情を浮かべていた。ナジェーテの不安の原因を取り除くために、調子のいいことばかり述べていると、彼女の顔から強張りは消えていった。まるで筋肉が全くなくなったように、彼女の表情はスライムとなって砂浜へ落ちた。スライムはあまり音を立てずに海へ帰っていった。その光景を見ると、僕の表情は強張って、気分も有頂天になった。どうやって自宅に帰ったのかさえ覚えていない。

 翌日いつもより気分が良く起きると、どうやら皆騒がしい。河川の方で何かあったようで、街は霧に包まれていた。僕は河川敷の方へ走って行くと、彼女に会った。彼女は赤い川に浮かんでいた。

2020年7月11日

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