見出し画像

【夢日記】窓のレストラン

 僕は八王子駅のホームで、リューヌと肩を寄せ合い腕を組みながら、僕はかつて行ったこともないどこか遠くの地へ向かう特急列車に乗り込んだ。見知らぬ地に彼女と行けるからだっただろうか、僕はいつもより気分が高まり、彼女の背丈が少し小さいように思えた。リューヌは、黒いドレスの上にダウンを着ており、右手にはエナメル質の白の紙袋を持っていたが、列車に乗り込むと、彼女はダウンと手荷物を預けたようだった。彼女のドレスは非常に綺麗で、僕は後ろ姿を見ているだけでため息が出るばかりだった。
 僕たちは自分たちの部屋に一度入り、身支度を整えるとレストランへ向かった。列車の揺れで細い通路に頭をぶつけながら、なんとか3両くらいを移動した。僕にバランス感覚がなかっただけかもしれないが、彼女はヒールを履きながら、ホイホイと僕の前を凛と歩いて行った。ただ、彼女は決して僕を振り返ろうとせず、僕を置いていくようだったが、彼女はなんとなくとても笑っていた気がする。
 レストランに着くと、車両はライトで明るく照らされていた。真っ白なテーブルクロスの上には、食器やランプが並んでおり、僕らは一番手前の席についた。給仕が来るのをただ待っていたが、全く来る様子もなく、僕らはしばらく話をしていた。どれだけ待っただろうか。僕の頭にはもう何も話す話題が空っぽになったような気がしたから、徐ろに景色を眺め、少しでも話を続けようとした。
 窓を覗くと特に景色は見えなかった。いや、正確に言えば景色はなかったのだ。列車は進み続けているのに、窓の先の光景は変化はなく、ただ暗闇が存在しているだけであった。ただ、よく見てみればそこには、車内のライトに照らされて映し出された車内の像だけが窓ガラスから見えた。その光景の中には、僕らが入ってきたドアや、ライト、食器などが見えたが、僕は違和感を覚えたのだ。リューヌの姿がどこにもないのだ。椅子に座り、目の前にいるはずの彼女が、その景色の暗闇の中に消えていったようで、僕は窓の中の彼女をひたすら探した。窓ガラスをひたすら見つめるうちに気づいてしまったのだが、いや初めに気づくべきだったのだろう。僕さえも窓ガラスの内には存在していなかった。だから僕は、「これからは窓を信じよう」と心に決めた。

2016年12月26日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?