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少女の待ち人(下)

※学生時代に書いた作品を一部改訂しました。漆記事を初見のクリエイターさんは上巻から読んでみてくださると嬉しいです。



レンが戦地に行ってから早くも2年が経とうとしていた。月が替わるごとに仕送られてくる多額の金額で、今ではユリィたち4人は人並みの生活を送っている。

(レン…)

仕送りがあるということで、レンが無事でいることも証明された。そして今回は仕送りと一緒に手紙も同封されていた。その内容はあまり良い内容ではなかった。思った以上に戦争が長く続きそうであるということが書かれていた。ユリィは不安を覚えながらも無事でいてくれるレンに安堵した。

しかし、2年経っても戦争は終わる気配もなく、また、一時帰還を求めていたレンも帰ってくることができなかった。

「ねぇ、ユリ姉。レン兄はいつ帰ってくるの」

「もう戦争のお仕事なんかしなくても大丈夫でしょう」

この2年でヤムとミンもずいぶん大きくなった。

「大丈夫。もうすぐ帰ってくるわよ」

「おなはみたい」

そう答えたのはクムであり、みんな少しずつ成長している。

「そうね、じゃあみんなで花畑に行こうか」

4人で花畑へ向かった。花畑も年月が過ぎる度に花は増え、美しかった。この花畑に来ればレンが今すぐにでも帰ってくるような気がした。

レンが戦地に向かって4年半が経ち、ようやく戦争は終わった。4人はレンが帰ってくるのを楽しみにしていた。戦争終結の話が町中に伝わった時、ユリィは毎日花畑に足を運んだ。町では戦地から帰還した人々や、待ち人の歓喜の声が響いた。

「必ず帰ってくる」

この言葉を信じて、ユリィは待ち続けた。戦地からこの町まで3ヶ月ぐらいの道のりがある。戦争が終わって半年が経とうとしていたが、未だにレンは帰ってこなかった。

「今日も行くね…」

ユリィはそう言って花畑へ向かった。

「…ねぇ、ヤム。レン兄帰ってくるよね」

「…うん」

ヤムもミンもなかなか帰って来ないレンを心配している。ここ数ヶ月は仕送りも途絶え、連絡もなかった。しかし、なかなかレンは帰って来なかった。それでもユリィは毎日花畑へ行った。花畑はいつもきれいであった。この花畑の向こうから帰ってくる。そう信じて。

「ゴホッ、ゴホッ」

(帰ってくるよね、レン)

ユリィは最近悪い咳をするようになった。寝込むことも多くなり、それでもずっと待ち続けた。

あれから25年の時が経ち、ヤムやミン、クムは立派な大人になり、それぞれの道を進んでいた。

今日も花畑には1人の少女が待っていた。いや、病気で体はやつれ、少女と呼ぶには少し歳を取りすぎた。もう春の風が暖かく吹き始めている。ユリィはふと目を閉じた。

「ユリィ、ユリィ」

「?」

「風邪ひくぞ、こんなとこで寝ていると」

「…レン。ずっと待っていたのよ」

「悪かった。でも、ちゃんと帰ってきたじゃないか。ははっ、すっかり歳取ったな、ユリィ」

「もぉ、…帰ろう。ヤムやミン、クムが待っているわ。まだまだ子供で・・・手がかかるんだからね」

「あぁ、これで結婚できる。待たせたな、ユリィ」

「…うん」

そうして2人は帰っていった。


春の風が暖かく吹く。

少女に幸せを運んできたように。

花は枯れることなく美しく咲く。

2人を祝福しているかのように。

家族の笑顔が絶えなく浮かぶ。

それは少女の幸せを意味していた。

              (了)



ここまで読んでいただきありがとうございました。

だいぶ話を書き換えたので??な部分なとこもありますが、この手の書き方は難しいなと感じました。

そもそも一人称と三人称の違いを勉強してはいますが、一人称はともかく、三人称の書き方はやってみてまだ難しいかなと思いました。

しかし、書いてくうちにだんだん違和感を覚えたり、自分でダメ出しして直していくと、これだけでも技量はあがっていると思い前向きに改訂しました。

下巻は特におかしな点が多く、とにかくユリィを中心に少しでもわかりやすくなるよう直しました。上巻では改めて読み直すと視点の切り替えがこれで良いのか?という疑問も残ります。

それでも新しく書き直した「少女の待ち人」を書ききれたのは良かったと思います。


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