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【富士山お中道の生物図鑑】 カラマツ
見られる場所・・・亜高山帯上部で森林をつくる
お中道での黄葉の時期・・・10月
カラマツ
マツ科カラマツ属
学名:Larix kaempferi
〈落葉松〉
同定のポイント/ 落葉高木、高山では低木。長枝と短枝がある。葉はすべて線形、長枝にはまばらに互生し、短枝には束生する。
カラマツは亜高山帯に生える針葉樹で、森林を形成します。
私たちが目にするカラマツ林の多くは植林で作られたものですが、お中道周辺には貴重な天然林が広がります(それも広大に)!
カラマツは日本で自生する唯一の落葉性の針葉樹で、春には薄い緑の優しい色の若葉、秋には黄金色と言ってもいいくらい圧倒的な黄葉を楽しむことができます。
針葉が芽生え始めるのは例年5月下旬です。
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夏(7月〜8月)は葉を茂らせますが、葉の密集度が薄いため林の中に光が差し込みやすく、カラマツ林は明るい林の印象です。
林床では、ハクサンシャクナゲ、コケモモなどの中低木、ベニバナイチヤクソウやシロバナノヘビイチゴなど、比較的明るい林床を好む草木を見ることができます。
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明るい林床で、コケモモの大群落が広がる。
10月の富士山の山肌はカラマツの黄葉で当たり一面が金色に染まります。
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![奥庭展望台から見上げたカラマツの黄葉と富士山。](https://assets.st-note.com/img/1687481987723-LMHm5Rau7o.jpg?width=1200)
11月になるとカラマツの葉は落葉し、林の印象もガラリと変わります。
カラマツの落葉は地面に大量に積もり、堆積した落ち葉は分解され植物の栄養源になります。
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上記の夏のカラマツ林と同じ場所で撮影。林床では常緑樹のコケモモの緑の葉が目立つ。
かたち
カラマツの枝には長枝と短枝があります。
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短枝(破線で囲んだ部分)は年に数 mmしか伸びない。
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カラマツは、本来、幹をまっすぐ伸ばす樹高20 mほどの高木ですが、風あたりによって樹形を変化させます。
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樹形変化が見られるスポットについてはこちらをご覧ください↓
パイオニア植物としてのカラマツ
カラマツは、日当りのよい乾燥したところを好み、火山荒原や山崩れ跡地にいち早く侵入します。遷移途上の富士山では、遷移初期に侵入する代表的なパイオニア植物です。
パイオニア植物
遷移の過程で、初期のまだ植生が十分に発達していない段階で定着・成長できる植物種のこと。一般に、明るい場所を好み、乾燥や栄養不足に強い。
お中道を歩くと、火山荒原や溶岩上にいち早く定着したカラマツの幼木を見ることができます。
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カラマツの定着についてはこちらをご覧ください↓
富士山の森林限界前後を制するカラマツ
高い山では、標高が上がるにつれ亜高山帯の森林は途切れ、低木が群生し、さらに上部の高山帯では草本がまばらに生えるだけになります。生態学では、森林が成立できる限界の標高を森林限界と呼びます。
日本の多くの高山の森林限界付近では、シラビソやオオシラビソなどによる森林限界を過ぎると、樹高は1〜3 m程度にしかならないハイマツという針葉樹が群生します。
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ハイマツは、氷河期にシベリアなどユーラシア大陸北部から南下してきた植物です。そのため、最終氷期以降にできあがった富士山ではハイマツが分布していません。
富士山の森林限界付近では直立したカラマツ林の森林限界を過ぎると、ハイマツの代わりに、這うように低木化したカラマツが群生します。
つまり、日本では珍しくカラマツのみで森林限界前後が成り立っています。
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富士山北西斜面の森林限界は、現在、富士スバルライン終点の5合目駐車場付近(標高約2,200 m)にあります。しかし、北西斜面よりも遷移の進んでいる西側(大沢付近)では森林限界が2,800 m付近まで達しています。
これは、北西斜面の森林限界はまだ上昇の余地があるということを意味しています。数十年後(?)の5合目駐車場は今とは違った景色になっているでしょう。
ちなみに、富士スバルライン沿いで見られるマツ科針葉樹は、標高が上がるにつれ変化します。麓から5合目に向かう車中、移り変わりを観察してみるのも楽しいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください↓
富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓
「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓
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