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【富士山お中道を歩いて自然観察】9 ナース植物

(この記事は、観察マップ地点9 についての解説です)
遊歩道は、砂礫が一面に堆積した火山荒原を横切ります。火山荒原ではイタドリやカラマツなどのパイオニア植物が所々でみられるでしょう。

火山荒原では砂礫(スコリア)の移動が激しく、植物の侵入に大きな妨げになる。この辺りに生えるカラマツやダケカンバの根元には、イタドリを携えていることに気が付いただろうか。

スコリア
火山の噴出物で、火山礫(直径2㎜~64㎜)のうち、玄武岩のマグマが上昇して冷えて固まるときに、含まれていた水などが蒸発して多孔質となったものをいう。

イタドリを携えたカラマツ
イタドリを携えたダケカンバ

イタドリは地下茎を長く伸ばして地面を安定させることができる。地上部の茎は、冬に枯れて、翌春に地下部の芽から茎を伸ばす。イタドリの地下茎の再生能力は大変高く、雪崩やスコリアの移動などによって損傷を受けても再生できる。

イタドリ
冬の間にスコリアが雨で流れ落ちて地下茎が露出したイタドリ
イタドリは地下茎が露出するほど損傷しても、春には新しい葉が出てくる

一方、カラマツやダケカンバなどの樹木は、雪崩や砂礫の移動などによる損傷を受けると枯れてしまう。しかしイタドリ群落の中は地面が安定するため、そこで芽生えたカラマツやダケカンバは、保護されて順調に生育することができる。

イタドリのように他の植物を保護して成長を助ける植物をナース植物という。

砂礫の斜面が崩れ地下部が露出したカラマツとイタドリ
矢印で示した部分がイタドリの地下茎(春先の写真のためイタドリはまだ新芽が出ていない)イタドリが地盤を安定させて、カラマツを支えている様子が分かる。

次回は番外編第3弾として、イタドリと、イタドリの仲間のオンタデについてのお話です。

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