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【富士山お中道を歩いて自然観察】6 強風地帯

(この記事は、観察マップ地点6 についての解説です)
カラマツやダケカンバは本来まっすぐに伸びますが、お中道を歩くと風の影響で樹形が様々に変化する様子がみられます。地点6付近は最も風当たりが強い場所です。ここでのカラマツはどんな形でしょうか?

富士山は孤立した峰であるため、冬は大変風が強い。冬の季節風は西〜北西から吹くので、特にこの付近は最も風が強い。

カラマツの幹は立ち上がることができず、幹を横に伸ばして地面を這うような樹形になる。ダケカンバは風になびいているような樹形となる。

遊歩道脇の低木状のカラマツ
低木状のカラマツ(黄葉中)

カラマツを風よけにするシラビソ

富士山の風衝地(風が強い場所)では、カラマツが最も強い。これは、カラマツがパイオニア植物であり厳しい環境に強いことと、冬に落葉することにもよる。

これに対して、冬も葉をつけているシラビソは冬の強風によって葉が傷みやすい。そのためここでは、カラマツが最前線で風を受けて、その風下に守られるようにシラビソが生育している様子を見ることができる。

カラマツ(白線)がシラビソ(緑線)の風よけになっている

冬の風景

ところで、風衝地では降雪が強風に吹き寄せられて美しい模様が作られる。これはシュカブラと呼ばれる。

雪面に現れた波のような模様(シュカブラ)
調査中にも関わらず見とれてしまうような美しい光景が広がる

北アルプスなどでは森林限界を超えるとハイマツというマツ科針葉樹が見られます。この強風地帯のカラマツと同じように、地面を這った姿をしています。ハイマツは氷河期後に高山に隔離分布されたものと考えられていて、新しい火山の富士山にはハイマツが分布していません。

カラマツは風の状況によっていろいろな形に変化します。次回(地点7)は、ほんの少しだけ風が弱まった場合のお話です。

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