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第2回 〔訪れる〕720店の中から見つけた小さな出版と本づくり

たくさんの『小さな出版』が集まる文学作品展示即売会

先月大阪で開催された『文学フリマ大阪11』は『作り手が「自らが文学と信じるもの」を自らの手で販売する』がコンセプトの文学作品展示即売会イベントです。

個人やサークル、団体や出版社などが出店し、小説・評論・研究・ノンフィクション・誌歌など、さまざまなジャンルの本が販売されていました。

私は昨年初めて一般来場者として参加しましたが、今年は出店・来場者数が大きく増加したこともあり、ブースが並ぶ列は昨年よりとても長く感じました。

▶文学フリマ大阪 出店と来場者数の比較
2022年 9月25日(日)  出店数:462(506ブース)/来場者:2,676人
2023年 9月10日(日)  出店数:720(800ブース)/来場者:4,283人(出店者:1,148人/一般来場者:3,135人)

引用:文学フリマ公式サイト https://bunfree.net/event/osaka11/ 

会場外の見本誌ブースでは、出店者から提供された見本誌(実物)が机いっぱいに並べられ、一度ゆっくり選んでから会場に入ることもできます。
出店ブースでは、作り手の方と直接お話ができる良さもありますが「対面だと緊張してゆっくり見づらいぞ」という(私のような)方には、見本誌ブースの事前チェックがおすすめです。

魅力あるたくさんの小さな出版や本の中から、今回私が気になった出店者や本をご紹介します。

研究室 はださん

1. はたらきアリ出版

2023年5月に東京・西荻窪で開業した出版社『はたらきアリ出版』。
文芸誌や歌集・写真集など、1ページずつじっくり楽しめる雑誌や本が揃っていました。

イベントで配られた『奇刊 はたらきアリ新聞』は、当日東京から大阪に向かう新幹線の中で書き上げたということもあり、遠征の高揚感とともに、最近読んだ本の紹介や今日の運勢(!?)まで中身も盛りだくさん!
何よりも「文字を組んで印刷するぞ!」という熱意がひしひしと伝わり、即売会ならではのライブ感も感じられ、読んでいて嬉しくなりました。

はたらきアリ出版 https://workingants.official.ec/

 

2. DIY BOOKS つくれる本屋

兵庫県尼崎市武庫之荘に今月(2023年10月27日)オープン予定の『DIY BOOKS つくれる本屋』。
古書・新刊(絵本/人文/アート系など)・リトルプレスを取り扱う予定で、リソグラフ印刷機◆や丁合機◆(ちょうあいき)、断裁機、中綴じ機◆(なかとじき)も置かれ、店名どおり本もつくれる書店になるそうです。

兵庫県では、書店+リソグラフの組み合わせは珍しく、本づくりの新しい場所になる予感がして、今からとても楽しみです。
オープンしたら行ってみよう!

DIY BOOKS https://www.diybooks.jp/

 

3. ビーナイス出版

東京都港区の出版社『ビーナイス出版』。
安達茉莉子さんの表紙イラストが目に止まり、立ち止まって眺めていると、次々と気になる本があり、思わず長居してしまいました。
遅めの時間だったこともあり、既に売り切れてしまった本もありましたが、当日お店に立たれていた、ビーナイス出版の代表の杉田さんから丁寧に説明いただきながら、色々と見せていただきました。

ビーナイス出版 http://benice.co.jp/

杉田さんは〔本づくり協会〕の理事もされていて、年に1回発行する会報誌『BOOK ARTS AND CRAFTS』は『本と街』『本を編む』『本のある場所』とどれも読んでみたくなる特集ばかり。毎号表紙と本文の紙にもこだわられていて、手に取って奥付◆を確認したくなるような、質の高い冊子でした。

BOOK ARTS AND CRAFTS VOL.4
使用用紙:表紙(玉しき・黄)/本文(タブロ) 用紙協力:竹尾

研究室 おのさん

後日、購入した『BOOK ARTS AND CRAFTS』を研究会でもおのさんに紹介したところ、竹尾さんのタブロは新聞紙をイメージした用紙で、ざらっとした質感が良く、素敵な紙だと教わりました。

本づくり協会会報誌 『BOOK ARTS AND CRAFTS』 VOL.4


【メモ】他にもある!気になる出版と本

・大阪工業大学 知的財産学部 水野ゼミの本屋『女のくせに』著者:中平 文子
・2019年設立 京都の小さな出版社 灯光舎『送別の餃子』著者:井口 敦子
・オフショア アジアを読む文芸誌『オフショア』編集・発行:山本 佳奈子


▶今後の開催予定は
• 2023年10月22日(日) 文学フリマ福岡9
• 2023年11月11日(土) 文学フリマ東京37
• 2024年  1月14日(日) 文学フリマ京都8

引用:文学フリマ公式サイト https://bunfree.net/

▶用語集

◆リソグラフ印刷機
ガリ版などの孔版印刷の原理に、理想科学工業㈱が独自の技術を融合させた高速デジタル印刷機。

◆丁合機(ちょうあいき)
製本するために1ページ大の大きさに折り畳まれた折丁(刷り本を折った製本上の1単位)を機械に並べ、順次積み重ねていくことで、自動的に丁合いを行う製本用の機械。

◆中綴じ(なかとじ)
表紙と中身を重ね、中心を針金や糸で綴じ、二つ折りにして仕上げる。
比較的ページ数の少ない(8~60ページ程度)小冊子に用いられる。
ポイント:二つ折りで仕上げるため、ページ数は4で割り切れる数にします。

◆奥付(おくづけ)
書物のおわりに書誌学的に必要と思われる情報をまとめてしるしたもの。
一般には、書名・発行年月日・著者名・発行者(所)名とその所在地などの情報を記載します。『BOOK ARTS AND CRAFTS』は使用した用紙も記載されていたので参考になります!


▶小さな出版と本の研究室は、本や冊子づくりをサポートします

この研究室は大阪市内の印刷会社で働く二人が中心となり運営しています。「こんな製本できますか?」「この色と組み合わせる紙は何がいいですか?」など、少しこだわりのある本や冊子づくりを考えている方のサポート(時には一緒に考えます)をいたします。
小さな出版・本づくりについてのご相談や、印刷・製本・用紙のご質問などは【小さな出版と本の研究室】はだ 宛にメールをお送りください。
contact@littlepress-lab.jp

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