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【書店員さんから】感想が届きました!② -グカ・ハン『砂漠が街に入りこんだ日』


 本書は8篇の短編からなっている。どれを読んでも、孤独を感じる。
 語り手たちはいずれも、慣れ親しんだ環境から抜け出す。
 『家出』のように一時的なものもあるが、「私」が当たり前のように存在する世界から一歩ひいて、目の前に展開する光景をじっと観察している。
 自分もその一片のはずなのにどこかはまりきっていない存在として、周りから気が付かれず世界を見続ける。

 特に印象にのこったのは、『雪』だ。
 朝起きて何気なくSNSをチェックするとかつての知人の姿を見つける。しかしすぐにその人がなくなっていることを知る。
そこから甦るのは私の思い出。もうその人はいないのにSNS上にはその姿が残っている不思議。けれどそれも携帯を置くと消えてなくなってしまう。
 手のひらの雪のようにはかなくて不安定な私の存在について気づかされる美しい短編集だ。
                ジュンク堂書店池袋本店 小海裕美さん


 どこかにあるという都市の砂漠、どこかで切れることなく灯りつづけているという電球、おかしな浮浪者、怪人の祭り、汚い転校生……そして街に放たれる火!
 暗示めいたエピソードが物語としての面白さと意味深さを醸しています。はじめから日本語で書かれたような不思議な読みやすさ。
 都市や街の中で、人が自分を見失いそうになるクラクラ感が巧みに捉えられていて、都市奇譚としても純文学としても楽しめます。
 広く小説を読む人のなかでも、村上春樹さんや森見登美彦さんを好きな方は特に気に入ることでしょう。
 確かにこの小説、事件です! 好きな作家がまた一人増えました。
                 芳林堂書店高田馬場店 鈴木正昭さん


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韓国からフランスへ渡り、自ら選びとったフランス語で
鮮烈な作家デビューを果たした、グカ・ハン。
8作の短編からなる「越境」小説集、ついに日本へ。

砂漠が街に入りこんだ日』 グカ・ハン 著 原 正人 訳
四六変型/164ページ/並製  2020年8月1日より好評発売中!
全国の書店またはオンラインストア、小社WEBショップにてお買い求めいただけます。

◆著者略歴
グカ・ハン(Guka Han)1987年韓国生まれ。ソウルで造形芸術を学んだ後、2014年、26歳でパリへ移住。パリ第8大学で文芸創作の修士号を取得。現在は、フランス語で小説を執筆している。翻訳家として、フランス文学作品の韓国語への翻訳も手掛ける。

◆訳者略歴
原 正人(Masato Hara)1974年静岡県生まれ。訳書にフレデリック・ペータース『青い薬』(青土社)、トニー・ヴァレント『ラディアン』(飛鳥新社)、ジャン・レニョ&エミール・ブラヴォ『ぼくのママはアメリカにいるんだ』(本の雑誌社)、バスティアン・ヴィヴェス『年上のひと』(リイド社)、アンヌ・ヴィアゼムスキー『彼女のひたむきな12カ月』、『それからの彼女』(いずれもDU BOOKS)などがある。

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