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【カラダ】体幹を強くする - ④腹筋について

はじめに

私はプロになってから様々なスポーツや芸術、様々な症例に出会っています。ですが、ラグビーやアメフトのような衝突のあるスポーツに関わったことはありません。また、ボディビルディングの知識も全くありません。今回の内容は、そういったある特定のスポーツや分野に対しての知識不足から、特定の人たちには適切ではない可能性があります。
ハードな衝撃のあるスポーツ・アスリートを指導をしている世界のトップ・トレーナー(ストレングス・コーチ)たちの動画を見ていると、基本的な考え方は同じだとは思っています。今回の内容は腹筋の基礎中の基礎だと思って読んでください。


体幹を強くする
 ①体幹とは何か?
 ②骨盤について
 ③股関節について
→④腹筋について
⑤背筋について


腹筋の話をする前に…関節間の隙間は広い方がいい

骨と骨の間の隙間、つまり関節間の隙間は広い方がいいです。
それは、骨と動きの特徴が関係しています。
・骨の表面はぼこぼこしていている
・骨が動くとき、支点をずらしながら動いている
したがって、関節間が狭いと
・可動域が狭くなる
・骨がスムースに動くことができない
また、関節間に他の組織(軟骨、腱、血管、滑液包など)があり、それらを圧迫する可能性もあります。

【背骨の場合】
背骨は小さな骨が積み上げられている形状です。骨と骨の間には「椎間板」があり、クッションのようなものと考えるとわかりやすいです。
関節間が狭くなると、
・背が低くなる
・椎間板への圧力が大幅増 → ヘルニアの原因
・背面側にある骨に圧が大幅増 → すべり症分離症の原因


腹筋の役割を考えてみる

動きを作り出す
支える
内臓を守る


腹筋は伸ばしてなんぼ!

「腹筋は縮まって硬い方がいい」「硬め続けておくのがいい」というのは間違いです。先ほどの「関節間は広くしておいた方が良い」という理由から考えると当たり前の話。

腹筋を短く硬くし続けると

  • 単純に背が低くなる

  • 椎間が狭くなり、椎間板に継続的に圧がかかる

  • 椎間板が圧力に耐えられなくなると、外に飛び出し椎間板ヘルニアになる

  • 内臓を圧迫する

腹筋を短く硬くし続けて良いことは何もない

腹筋がしっかり伸びて働くと

  • 背が高く見える

  • 大きく強く見える

  • 大きく動くことができる。動く幅が広がる

  • しなやかに動くことができる

  • ケガをしにくくなる

「腹筋を伸ばすと力が入っていないような気がする」と言う人が時々います。それはおそらく、ただ腹筋を伸ばしているだけだからです。「ただ伸ばす」とはどういうことか?

筋肉が伸びているとき、筋肉を縮ませる働きがゼロになるわけではありません。またその反対も同様です。伸びる力 vs 縮む力 が常に起こっていて、強い方向に動きが出ているというだけの話です。

ですから「腹筋に力が入っていないような気がする」ときは、伸ばすばかりで縮む力がゼロに近い状態になっているのでしょう。

腹筋を伸ばすには重力に逆らう方向に力を入れるので、結構なエネルギーが必要となります。そして、背骨はあらゆる方向に動くため、腹筋を伸ばしたままあちらこちらに体を動かすには、とてつもない力が必要となります。

筋肉 ー 伸びる ー さらにあらゆる方向に伸びる

伸縮性と弾力性、さらには支える力があるからこそ、あらゆる動きを作り出すことができます。

あらゆる方向に背骨を動かす

視点を変えれば、体を自由に動かせない人、大きな動きを作り出せない人は体幹が強いとは言えません。

〜見た目重視で腹筋を鍛えている人には腰痛持ちが多い〜
「腹筋は割れてなんぼ」だと思っている人たちは、筋肉繊維を短く硬く保つトレーニングばかりするため椎間を圧迫し続けます。本当に強い腹筋をや体幹を手に入れるには時間がかかりるのですが、手っ取り早く見た目をかっこよくしたいと思っているために、腰痛になろうが椎間板ヘルニアになろうが、そういったトレーニングをやめられないようでした。


筋肉の名称なんてどうでも良い

トレーナーになりたて、勉強したての「あるある」。やたらと筋肉の名前を言いたがる。「あ〜、〇〇筋ですね」とか。専門家が知識として知らないのは大変まずいですが、名称を知っているからといって指導に役立つことはあまりありません。

専門家ではないにしても、骨格筋などの名前を学ぶのはとても面白いと思います。
ですが、まれに、筋肉名称が書かれている本?を持ってきて、それを開いて「私的にはここの筋肉だと思うんですよ。」と言う人がいます。その知識、全く役に立ちません。

専門家が見ているのは一部の筋肉なんかではありません。先にも書いたように、筋肉は共同作業しながら力を伝達しています。その伝達がどこで狂っているのか、どこで滞っているのか、それがどんな影響を及ぼしているのか、そんなことを考えながら指導をしています。私個人的な意見ですが、指導中に、ある特定の筋肉に興味をそそられると失敗します。

何を言いたいかというと、名称を覚えて体を知った気になったとしても、実際体の1%も理解はできていないので、問題解決にはなりません。ある特定の筋肉ばかりに注目すると、全体が見えなくなるので、誤った解決方法を選択する可能性が高くなります。

学びは楽しく、ですが、それが全てではないと知っておきましょう。


手足が自由に動く

動きの中には、背骨を動かす必要のないものがたくさんあります。
簡単なもの(能力の問題😫)しか実際に紹介できませんが、よく見かけるトレーニング(動作)のみ映像で紹介します。

1)インライン・ランジで両手を交互に動かす
2)4点支持姿勢から3点支持、2点支持に
  ストレッチポールを背中に置いているのは、背骨の動きを確認するため

ヒップ・ヒンジ、スクワット、シングルレッグ・ヒップヒンジ
 棒に頭、背中、お尻を当てたまま行う
 背骨が動かなければ、棒が離れることはない

上記で紹介した内容はとても簡単なものです。
SNSなどでトレーニングを見かけた時、体幹が強く上手な人ほど背骨を動かさずに、動かすべき関節だけで動きを作り出しています。そんなところに注目してみてください。そういった動きは柔らかく、安定して見えます。

【手足が自由に動く】とは
自分の思い通りに、もしくは、他の誰かの指示通りに手足を動かすことができますか?自分ではできているつもりでも、実際にできていない人の方が多いです。

中学生バスケチームを指導していますが、シュートの時の腕の伸ばし方、スタンスの取り方、ジャンプからの着地など理想的な動きからかけ離れている選手はたくさんいます。良い悪いの話をしているのではなく、あなたたちの体幹はもっともっと強くなる伸び代がありますよ、ということを知ってほしいと思います。それは大人も同じです。
周辺の友人たちと比べて、ちょっとくらいできたとしても、理想的な体の動きはもっともっとレベルの高いところにあります。

【姿勢によって柔軟性が変わる?】
座った姿勢や寝転がった姿勢では、脚を簡単に開く・挙げることができるのに、立位姿勢になると途端に難しくなります。

立位では、姿勢を重力とは真逆に維持しなくていけないので、関わる筋肉の数と出力が爆上がりします。これが理由です。
開脚ストレッチで得られることはたくさんありますが、開脚ストレッチだけで筋力がアップすることはありません。


胸周りが自由に動く

背骨(脊椎)は24個あり、その骨と骨の間の関節は全て動きます。
ですが、「胸椎10番と11番の間の関節を動かしてください」と言われてそこだけを動かすことができる人はいないのではないでしょうか。もしいたとしても、非常です。

胸まわり(胸椎)には肋骨が関わっているため(あと内臓を守るため?)動きにくい構造となっています。首(頸椎)と腰(腰椎)はそれだけなのでとても動きやすいです。

動きやすいと過剰に働く傾向にあります。過労しやすいのです。腰や首の痛みは過労で痛みを発症していることがほとんどです。
動きにくいと仕事をサボる傾向にあります。サボった分は働いてくれる部分に任せています。
動きにくい胸椎(胸まわり)が役割を果たせば、腰や首への負担は減ります。

胸まわりを動くようにしたいのですが、、

下の図を見てください。「棒はどこからしなるのか」棒がしなるポイントは、固定されている上下の部分です。握っている部分はしなりません。握った手より離れたところをしならせようとしても、やはり握った部分からしなってしまいます。当たり前のことです。

棒はどこからしなるのか?

これを背骨に変換して考えてみましょう。胸まわりを動かしたいのであれば、その下の部分を固定する必要があります。下の部分とはお腹周りです。

胸まわりが自由に動くというのは、お腹周りが背骨を固定(コントロール)できている証拠です。

ゴルフで腰を痛める人は、スィング(?)の時に、胸椎を回旋せずに腰椎の回旋に頼っているからではないでしょうか?

胸周りを動かしているはずなのに、実は腰や首が動いているということは珍しいことではありません。「胸周りが自由ではない」というのは体幹が弱いことを指しています。


下半身(胸から下)が自由い動く

トレーニングでよく見かけるのは、下半身を瞬時に捻り、またすぐに戻るもの。
腕は下半身と反対に動きますが、胸は正面を向いたままです。
腕や脚の動きに左右されずに背骨の位置をキープしておく、そんなトレーニングになっています。

トレーニング動画を見ると簡単に見えますが、これがなかなか難しい。軸がずれてしまったし、腰を反ってしまったり、いろいろな「エラー」が出ます。

「こんな動きをするのはスポーツ選手くらいでしょ?」

実は、歩く動作の時に使っています。
片方の脚を前に出す。反対側の脚は後ろにある。=下半身を捻っている。そして上半身は正面を向いている。

歩く動作の中でエラーをおこている人はたくさんいます
 ・まっすぐ歩いているようで、お尻を左右に振る=腰を使っている。腰痛になる。
 ・ガニ股歩き=もも内側を全く使っていない。腰痛、膝痛になる。
 ・ペンギン歩き(動画なし)=お尻の筋肉を使っていない。 腰痛、膝痛になる。
 ・足を引きずる(動画な死)必要な筋肉が使われていない。病気になりそう…

私は歩き方の指導もしますが、いろいろな反応があって面白いです。
「こんなに意識しながら歩くの??!!」
→普段歩く時は意識をしなくていいですよ。トレーニングでは徹底的に意識をして、体に染み込ませていきます。洗脳です!
「歩くのが速くなった!」「歩くのが楽になった!」
→洗脳完了です!


バランスが取れる

特に、
①脚が前後にある姿勢
②片足着地の姿勢
安定して力強く姿勢を維持することが理想です。

「バレリーナじゃあるまいし、脚をクロスして立ったり、片足で着地をしたりしないよ」

歩いている時、ほんの一瞬ですが片足で着地します。
この一瞬、バランスが取れているかいないかで、腰痛や膝痛の発症に違いが出ます。
また、足がもつれてクロスしてしまったら??バランスを取れずに転びます。

片足で立つことができたり、バランスの悪い姿勢からしっかりと着地ができるのは、体幹の強い証です。


どんな姿勢でも安定した呼吸ができて、声が出る

特に中高の部活動で「声出しは必要か?」は時々テーマになるようです。

「声を出さなかったら怒られた。パワハラだ!」
「スポーツは声を出さなくてもできる。」

声を出さないから怒るのはどうかと思いますが、「大きな声を出す」は精神を鍛えているのではありません。そう思っている指導者もいるかもしれませんが、実際は体幹を鍛えています。

そもそも大きな声を出すには、お腹に力を入れて空気を口や鼻へ勢いよく送りこむ必要があります。体幹が弱いとそれができません。

私が個人的に思う一番簡単な体幹トレーニングは、運動中に声を出すことだと思っています。疲労が蓄積すると体幹が弱くなります。そこで大きな声を出し続けると、意図しなくても体幹トレーニングになります。チーム競技ならばコミュニケーションをとることにもなるし、一石二鳥だと思うのです。

体幹が弱いと手足を自由に動かすことができないと、先に書きました。
体幹が弱いと大きな声を出し続けることはできません。
ということは、ダンスをしながら歌うことは、本当にすごいことです。音程を保ち、声の質量を保ち、ダンスの質もキープする。すごい体幹の持ち主です。
ダンスが上手な人たちが口パクなのは、ちょっと許してあげてほしいと思います。


クランチは悪か?

10年以上前くらいからでしょうか。「クランチ(上体起こし)は腰に悪い。やってはいけない。」と言われるようになりました。「クランチは害悪だ!」と言う人と「いや、必要だ!」と言う人の両方がいます。

クランチをしているプロのアスリートはたくさんいて、効果を出している人もたくさんいます。腰を痛める人もたくさんいます。この違いは認識とやり方。そして指導者にもよるでしょう。ちなみに私は軽めのクランチは指導します。

クランチが悪いとされる理由は、誤った方法で行うと腹筋を短くして腰椎間の隙間を狭くし、椎間板を圧迫してしまうからです。

ですが、クランチを効果を出している人たちは椎間板を圧迫することなく行なっています。
①背骨全体を引っ張り上げながら行なっている
②腰椎に向かって力の圧をかけるのではなく、腰椎→胸椎の前面をなぞりながら力を伝えている
*こういった人たちは、クランチをしながらでもしっかりを呼吸しています。おそらく、出そうと思えば大きな声が出ます。

私たちは普段の生活の中で腰を丸める場面はたくさんあります。正しい丸めかたを知っておかないと、生活の中で腰を痛めてしまうことになります。正しい丸め方を学ぶ方法がクランチである必要はありませんが、正しい知識は得る必要はあります。


まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。
更新まで3週間近くかかってしまいました。iPadが不調になったり、私自身が不調になったり😅。

腹筋は、とにかく、縮める認識を今すぐに捨ててください。

私のクライアントにソプラノ歌手の方がいますが「腹筋がない」とおっしゃるのです。その理由は「上体起こし(クランチ)ができない」から。そんなものできてくてもいいですよ!あれだけ声を出せるのに腹筋が弱いわけないでしょー!と言い続けています。

反対に、若い学生に多いのすが、腹筋自慢さんはたくさんいます。あるとき、あまり役に立たない腹筋だったので、ついつい「体幹あまり強くないね」と言ってしまい、明らかにムッとしていました。怒って2度と来なくなってしまったこともあります。それから言い方と伝え方にはとても気をつけています。

りとるジムの利用者さんの、特に、ご高齢の方たちから体幹が強くなり生活の質が上がった報告をたくさん受けています。階段の上り下りが楽になった。小走りしても痛みが出ない。旅行で長時間歩いても痛みが出なくなった。などなど。年齢とともに筋力は落ちるなんてことはありません。それを証明してくれる人たちがたくさんいます。

⭐️⭐️⭐️💫💫💫⭐️⭐️⭐️
株式会社りとるジム
カラダとココロのメンテナンス
www.littlegym.jp

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