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【カラダ】体幹を強くする(完) - ⑤背筋について

 ①体幹とは何か?
 ②骨盤について
 ③股関節について
 ④腹筋について
→⑤背筋について


背筋の話をする前に…関節間の隙間は広い方が良い

③腹筋について の最初に書いた内容と同じものです。

骨と骨の間の隙間、つまり関節間の隙間は広い方がいいです。
それは、骨と動きの特徴が関係しています。
・骨の表面はぼこぼこしていている
・骨が動くとき、支点をずらしながら動いている
したがって、関節間が狭いと
・可動域が狭くなる
・骨がスムースに動くことができない
また、関節間に他の組織(軟骨、腱、血管、滑液包など)があり、それらを圧迫する可能性もあります。

【背骨の場合】
背骨は小さな骨が積み上げられている形状です。骨と骨の間には「椎間板」があり、クッションのようなものと考えるとわかりやすいです。
関節間が狭くなると、
・背が低くなる
・椎間板への圧力が大幅増 → ヘルニアの原因
・背面側にある骨に圧が大幅増 → すべり症分離症の原因


背骨は引っこ抜いてなんぼ

「私はいつも背筋を縮めている」と思っている人はほぼいないと思います。そもそもあまり考える部分ではありません。
しかし、かなりの人に「背筋を伸ばしてください」というと、下の図(右)のように背骨をしならせながら下に向かって力を入れます。背骨と背骨の間(椎間板)に圧をかけています。

左)背筋をまっすぐに伸ばしている
右)伸ばしているように見えて、実は背骨を下げている

これがいけない理由は何か
・背が小さくなる
・椎骨の突起部分に圧がかかり、骨折を起こす(分離症)
・骨折を起こした部分にさらに圧が加わると椎骨ば前方へずれる(すべり症)

【背筋の役割】
背筋の役割は、背骨を安定させて動きを作る、だけでは不十分です。
背骨を引っ張りあげて椎間を広げ、それをキープして安定させながら動きを作ります。

【背骨を引っこ抜くとは】
椎間を開くために背骨を引っ張り上げたいのですが、誰かが頭を引っ張ってくれるわけではありません。では、どうするのか?

ワインオープナーを思い出してください。
コルクを引き抜くのに、両腕のようなものを下に押し下げます。
ワインオープナーがわかりにくい人は、大根やかぶ、もしくは板に打ち付けられた釘を引き抜くことをイメージしてください。
両足で地面または板をしっかりと踏み、そして引っこ抜きます。この両足の踏み込みがなくては抜くことはできません。

背骨を引っこ抜くのも同じです。
下半身はしっかりと地面を踏みます。
体の外側を下方へ引き下げ、中心部分(背骨)を引き上げます。→ここで背筋を使います。

上の図では両腕を下げていますが、実際は、腕の動作は必要ありません。肩甲骨の動きのみで十分な出力を引き出すことができます。


背筋は背骨を常に引っ張り上げるのが理想です。
そしてこれには、体の前面(主に腹筋)と下半身の筋肉が共同作業する必要があります。背筋群単独でできることではありません。


ラテラル・プル・ダウン(ラット・プル・ダウン)

ジムでもよく見かけるトレーニング方法です。
鍛えている筋肉の名称などどうでも良いのです。大切なのはその目的。ラテラル・プル・ダウンで鍛えているのは「背骨を引っ張り上げる力」です。そしてそれには腕の力は全く関係ありません。

足→お尻→骨盤などから力を背筋に伝達していきます。
背骨の伸展、肩甲骨の下方回旋、肋骨を動かして背骨を引っ張り上げます。

背骨を引っ張り上げるとき、気持ちはまっすぐ天井に引っ張りますが、実際は自然に反り返ります。そのことで胸が突き出ることから、自然に左右の肩甲骨が引き寄せられます。左右の肩甲骨を引き寄せる意識は捨てましょう。

【よくある間違い】
・肩甲骨をとにかく引き寄せようとする
 →これは間違い。肩甲骨は寄せようとせずとも、勝手によるものです。
  首や腰を痛める原因となります。
・あごに力が入る
 →あごや奥歯に力が入ると、力の伝達がそこで止まってしまいます。
  首を痛める原因となります。


脊椎の伸展

ラテラル・プル・ダウンで「肩甲骨の下方回旋」を身につけることができたら、腕の動きを使わずに行います。
背骨の引っ張り上げと肩甲骨の下方回旋に、腕の動きは全く必要がありません。

これが「脇を締める」と言う動作になります。

腕の動きを使わずに「脇を締める」ことができるようになったら、腕を胸の前、横、上などに置いて同じように行って見ましょう。

これができるようになると体幹は強くなります。そして、腕を自由に動かすことができます。


肩甲骨の外転

腕を横から挙上させます。
肩甲骨は上角を支点に上方に回旋します。当たり前ですが、下角は動きます。

背骨を常に引っ張り上げておけば、上角が上下に移動することはありません。

【よくある間違い】
腕を上げた時に、上角が上方へ移動する
 →これは肩甲骨の「挙上」と言う動きがプラスされてしまっています。
腕をおろした時に、上角が下方へ落ちる
 →これは肩甲骨の「下制」という動きがプラスされています。
どちらも不要な動きです。首や肩関節に負担がかかり痛みを発症させます。


広背筋の確認

筋肉の名前を出してしまいました。別に出す必要はないのですが、この筋肉の役割は複数ありとても重要です。その中に「肩の関節(上腕骨)を内旋(内回し)させる」と言うものがあり、これがとっても強力です。
肩(上腕骨)の内外旋はインナーマッスル(Rotator Cuff Mms)が担っていると思っている人も多いようですが、内旋に関して大きな役割を果たしているのがこの広背筋です。よく「前肩」などと呼ばれている“肩が内巻き“になってしまうのも、広背筋が原因であることが多いのです。

広背筋を強化するとか、ストレッチするとかそういった認識ではなく、「機能させる」と覚えましょう。広背筋の内旋の働きが強すぎると腕を上げる動作に支障が出ます。そして、肩の痛みに繋がります。当然体幹力も低下します。

手と肘を内側に向けたまま、前からまっすぐ頭上に伸ばす

【広背筋が動きの邪魔をしている証拠】
・肘・手の平が正面に向いてくる(向きをキープできない)
・肩が上がる(肩甲骨が挙上する)

肩甲骨が挙上すると背骨は下方にめり込みます=体幹力が弱くなります。


いろいろな動きをしてみる

肩甲骨の引っ張りあげは、下半身がどのような動きをしていてもキープします。
例えば、スクワット。重心を下に落としている時でも、背骨の引っ張りあげはキープします。

左)OK            右)NG

下のような姿勢をとる時も同じです。

左)OK                    右)NG

腕がどこにあっても、足がどのような形であっても、ジャンプする時でも、着地の時でも、体をひねっている時でも背骨は必ず引っ張り上げておきます。
言葉を帰ると、地面から得た力は常に上方へ流し続けます。


五十肩と体幹

五十肩の与える体幹への影響をお話しする前に、五十肩だと思っていて実はそうではない方がたくさんあることを知りましょう。

肩が痛くて腕が上がらない=五十肩 と診断したり思い込んだりする専門家もたくさんいますが、実は単なる「機能不全」であることが多いのです。
「機能不全??」
肩の機能不全とは背筋と腹筋が働いていない状態です。

これを改善するには、力の伝達と考えると、下半身から強化する必要があります。私は実際、肩の痛みがある人たちを下半身強化だけで改善しています。最初は「肩が痛いって言っているのに、どうして下半身の運動させられるの?」と少し不満があったそうです。痛みが軽減して方が上がるようになって本当に驚かれていました。ですが、そう言うものなのです。

本来の五十肩はというと、原因不明と言われています(私の知る限り)。
そして実際、機能不全ではなく、原因不明の五十肩を患っている人たちにも何人にもお会いしています。私自身、現在右肩五十肩です。体の近くで腕を動かすことができない。体の遠くへ腕を伸ばすことができない。といった症状です。最初の一ヶ月は、手をほんの少しぶつけただけで、うずくまるほどの痛みでした。一年経ち、だいぶ普通に動かせるようになりました。

完全な私の経験上の話ですが、五十肩を無理やり動かそうとしても無駄だと思います。とにかく固まっている。エネルギーが留まっている。そんな感じです。筋肉が動きたいのに(動かせるのに)動いていないのとは全く別の感覚です。

五十肩は体幹の機能不全を起こします。

体幹の機能不全は肩の痛みを引き起こします。

これがグルグル循環すると、肩が痛い→体幹働かない→肩に負担をかける→体幹が弱くなる・・・悪循環になります。

五十肩であっても、機能不全による肩の痛みであったとしても、やることは体幹の機能を改善させること。つまり、足、下半身、腹筋、背筋をできるだけ適切に動かすことです。


まとめ

体幹について最後まで読んでいただきありがとうございました。
これを書いている最中にも新たな発見がありました。日々勉強だなと感じています。

指導者や体育の先生対象の講習会を行うと、体幹は腹筋と背筋を鍛えれば良いと単純に考えている方がたくさんいます。本当の意味での体幹の強さや、力の伝達方向まで考えている人はなかなかいません。新しいトレーニングを学び直す必要はありません。新しい認識を持ってこれまで行なっていたトレーニングに取り組むだけで、結果は変わってきます。

中学生のスポーツチームを指導していますが、監督・コーチたちから「大会に行くと、うちの子たちが1番姿勢が良いんですよ!」と嬉しそうに話をされました。新1年生が入ると、2、3年生の姿勢の良さがわかります。そして、翌年同じことが起こります。指導をしていると「理解してくれているかな?」と時々自分を疑ったりする時もありますが、結果は出ているようでとても嬉しく思っています。

繰り返しますが、認識を変えるだけで結果は変わります。
「体幹」と言う知識の見直しをぜひしてください。

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株式会社りとるジム

カラダとココロのメンテナンス
www.littlegym.jp

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