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自由に学ぶ、フィンランドの学校

2016.11.20に書いた記事

フィンランドでインターンを始めて6週間。先週は小学校へ行って来ました。

小学校5年生のある教室に入ると、教室の真ん中に分厚いマットが敷いてありました。

机と椅子は壁に向かってコの字になるように並べてあります。

授業が始まると、「これから10分くらいのお話を読むから、好きな場所へ行って、好きな態勢をとって。」と先生が言います。
女の子5人はマットに寝っ転がり、先生がいる方に顔を上げています。他の子供は、机の上で仰向けになって寝っ転がったり、教室の隅っこで膝を抱えて座ったり、ついたての裏に隠れたり、窓の縁に座ったり、普通に席に着いたままだったり。

そして先生が本を読み始めると、全員がそのお話に聞き入っていました。個人で問題を解く時には、マットに寝っ転がりながら解いたり、マットを机代わりにして解いている子供がいました。

この授業スタイルは、どのように学ぶのが子供にとって良いのかを先生同士で話し合い、今年から始めた取り組みだそうです。フィンランドのどの学校でもこのような授業をしている訳ではありません。 どこでどのように学ぶのが一番リラックスして集中できるかはその子供によって違う、と先生は言います。

また、美術の時間にはBGMが流れていました。子供達は、音楽にノリながら作業を進めたり、自分のスマホで好きな音楽を聴きながら作業を進めています。作品を仕上げるのに必要な資料は自分のスマホを使って調べます。

フィンランドの学校には「こうしなければいけない」という決まりがあまりないように感じます。(新鮮な空気を吸うために昼休みは全員外に出る、というのは決まりだそうです。)
スマホもPCも持ってきて自由に使っていますし、服装や髪型などの決まりもありません。学校全体で一律したルールを設けるのではなく、その授業やその時に合わせて判断をしています。スマホを使うことが、授業によっては学習をより深めるものになりますし、授業によっては必要がないかもしれません。先生達は「ルールだから駄目」というのではなく、なぜ駄目なのか、なぜ良いのかという考えを持っています。子供自身も「先生が言ったからそうする」ではなく、それぞれが自分の考えを持つようになります。

フィンランドは、PISAと呼ばれる国際的な学習到達度調査の結果で10年前に総合1位となり、世界中から注目されるようになりました。日本は同じ頃に大きく順位を落とし、それを受けて学力向上を図ってきました。最近の結果では、日本がフィンランドを上回っています。

かつて学力世界一と言われたフィンランドが、今は順位が落ちているにも関わらず、国も教師もPISAの順位を上げようとはしていません。今年度から導入された新カリキュラムでも、重視しているのは学力ではなく「今の子供達にとって必要な教育は何か」ということです。時代にも子供にも合わせて学校も学習方法も変えていくこと、それがフィンランドで大切にされている考えです。PISAの結果は教育の方向性を確かめるためのものにはなりますが、それが目的ではありません。

日本ではPISAの結果が国の教育方針に大きな影響を与え、順位が下がってからは、学力向上、競争の強化を図ってきました。競争激化を理由に中止となっていた全国学力テストも、2007年度から再び始まり、県ごとの学力とその順位が公表されるようになりました。そうなると、多くの人がその数字に注目するはずです。結果は全国に知れ渡り、上位を逃した県は学力向上のための取り組みをより強化します。

日本も、フィンランドも、これまでに何度も教育内容を見直し、改善を図ってきました。けれど大きく違ったのは、子供のための教育をするという軸があったかどうかではないでしょうか。フィンランドは、子供が幸せに生きていくために必要な教育は何かを常に考え、改革を進めてきました。日本が改革を進める中で一番問題だったことは、教育の目的を見失ったことです。

これから2020年に向けて、日本の学校教育が大きく変わっていきます。時代の変化に合わせて学校も変わっていく今だからこそ、子供の幸せのために本当に必要な教育は何かをもう一度考え直す必要があるのだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます(*´-`) また覗きに来てください。