『夏物語』川上未映子 著:生殖、出産、子育てを独身女性の視点から語る小説
30代の駆け出しの作家である未婚女性が、子どもを出産しようとする物語。
第一部では主人公が30歳くらいのとき、東京に訪ねてきた姉と姪との夏の数日間を描く。第二部では、その約8年後、作家デビューした主人公とその周囲の人々の1年間ほどが描かれる。
主人公が結局この男性の子を出産する、という展開になったら、この本あほやん(主人公とその家族の大阪弁がうつった)、と思いながら読んでいたら、割とそのとおりになった。そういう結末を読者が求めているから?それとも、それが著者の書きたかったものなのか?
同じ著者の『ヘヴン』はもっとすごかったという印象だったけどなあ。
最近では日本でも主要メディアで報道され、知られるようになってきた「AID(非配偶者間人工授精)」について、きちんと調べて執筆したのだろうなあという気はする。
社会問題については、新聞などより、実はこうした「物語」を読む方が、真剣に考えられるというところもあるかもしれない。その点で、意義はある本だと思う。
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