見出し画像

百瀬文「鍼を打つ」シアターコモンズ'21:はり師に治療されながら音声を聞くセラピーパフォーマンス

6人の参加者が会場で6ページ分の問診票に答え、それぞれイヤホンを着けて横たわり、1人ずつの元にはり師が来て、問診票に目を通し、参加者にはり治療を施していくパフォーマンス。

イヤホンからは、問診票に書かれていた文や書かれていなかった文も(?)流れてくる。「むくみやすい」「腰痛がある」など、実際のはり治療院でも聞かれそうなことに加え、「国境はなくていいと思う」「「いじめ」はいじめられる側も悪いと思う」といった項目もある。はり師も同じ音声を聞いていたのだと思う。冒頭で「緊張している」、施術が進むにつれて「人に触られるのが苦手である」など、パフォーマンスのタイミングと言葉を合わせているのだろう。

鍼を打たれる部位は、肘下、膝下、おなか、そして頭(!)。鍼は初体験。「ずーん」とした鈍い響きのようなものを感じる、と言われる意味がわかった気がする。少しだけ痛みを感じる部位もあったが、注射器のような痛みではなかった。頭のときは、ミシミシ、ピリピリ、みたいな、鍼が入っていっています、という音と感触を感じた。

ある箇所に鍼を打たれると、身体の別の部分が急にドクドクとして、血の巡りがよくなったのか?なるべく力を抜いて横たわっていると、眠くなる・・・。おなかに刺されるときはさすがに少し「うおっ」となりました。

ちょっと怖がっていたものの、大丈夫だった。しかし施術後しばらくしてから影響が出てくることもあるそうなので、体の変化に気を付けたい。

じんわりと体が温かくなり、やはり人が人に触れられるのは快楽なのだろう。

終了直後、座ると猛烈に眠気が襲ってきた。もしかして問診票の「寝つきが悪い」にチェックを入れたから、それを解消する鍼を打ってくれたのか?通常の治療ならどういう施術をしてどういう効果が見込まれるという話をするのだろうが、今回のパフォーマンスではそういう話はしないので、何をされたかまったく不明なのだ。

はり師に任せて、自分を明け渡す感覚。これは(コンテンポラリー)ダンスに通じると思う。身体を開く、というのが。なるべく怖がらず緊張せずリラックスして。マスクで顔が覆われて目しか見えない初対面の人に、体に触れられて「ばれて」しまったかもしれないという恐怖と快感。

鍼の体験が新鮮過ぎて、パフォーマンスとして味わえたかどうかが心もとなかったが、この機会がなければ怖くて鍼治療に挑戦できなかったかもしれないし、参加してよかった。

(※トップ画像の写真は本作品とは関係がなくイメージです)

作品クレジット

構成・演出|百瀬 文
鍼師|石上絵里奈、久世綾乃、佐藤太一、中島瑞穂、長谷川洋介、比嘉優貴、松波太郎、和田彩芽
ナレーション|はぎわら水雨子
製作|シアターコモンズ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?