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『時間の解体新書―手話と産みの空間ではじめる』田中さをり著:音声言語ではなく手話で哲学を語る試み

哲学を研究し、手話を学んだ著者が、哲学が男性と男性による言語が支配的な学問世界であることに着目し、女性、手話、子を産む人の視点から、時間、生死、出産などを語ろうと試みた本。

こんなテーマがあり得るのか!と、本を見つけて感動を覚えた、意欲作。

西洋哲学は言葉で論理を積み重ねていくイメージが強いが、それとはまったく異なるアプローチと言える。本書は論として未熟な部分がいろいろとありそうではあるが、もっと探究されていい領域ではないか。

海外では、こうした視点の研究も、もしかしたらもっとあるのかもしれない。

書名に「哲学」と入っていないのが不思議だが、あえてそうしたのだろうか?

【目次】
はじめに

第1部 手話と哲学者のすれ違い
1 声と魂の強すぎる結びつき
2 手話―口話論争のジレンマ
3 音象徴と図像性
4 原始的な言語への曲解

第2部 時間論を手話空間で考える
5 時間はリアルなのか
6 手話の4次元空間
7 問題と言語形式の不一致
コラム 日本手話のリズム

第3部 生と死の現実を産む性の視点で考える
8 誰のものでもない現実
9 死ぬことと生まれること
10 誰かの出産と私の出産、そして死

文献一覧

解説 手話から見えてくる時間の流れと出産  森岡正博

おわりに


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