31.ままとこ

 日々のエセー『まいにちとことこ』。
第31回は、「ままとこ」ママについて。

 思えばママはずっと誰かの世話をしていた。

 ぼくが生まれたときから、ママは介護老人保健施設で働いていた。
 それに加えて、母方の祖父と祖母、そして伯母が病気がちだったのもあって、その世話もママがしていた。もちろん、ぼくたち兄妹の子育ても。

 本人に直接聞いたことはないけど、ぼくが想像できないくらいに、つらいことや、反対に嬉しいことが、たくさんあったと思う。
 本人に直接聞いたことはないけど、ぼくが知らないところで、ママはパパと出逢って、愛し合ってきたんだと思う。
 ママの生い立ちもなれそめもほとんど知らないぼくにとって、でもママのいろんな表情やぬくもりを知ってるぼくにとって、ママは生みと育ての親ということ以上にどんな存在なんだろうか。なにかがあるのは感じてるけど、それをうまく言葉にできない。

 ママは、幸せなんだろうか。ぼくといて幸せだっただろうか。時折、そう考える。
 そしてそれは、ぼくにはわからない。でも、今はまだいい。
 きっとそうなのかもしれない。ペーター・ハントケの『幸せではないが、もういい』を読んで、その思いを深めた。

[2024.9.11]