マガジンのカバー画像

lirukの超短編小説群

27
運営しているクリエイター

#ファンタジー小説

ぽてとぴあ

ぽてとぴあ

 「ようこそ、極地からの旅人さん。歓迎するぜ」
 閑散とした《塩の地亭》の亭主は、私がカウンターに座ったのを見計らい、こう言った。
 「なぜあそこから来たと分かったかって? 単純だ。奴らの版図は塩の地と極地以外全てを網羅しているし、お前は奴らではないよそ者だ。それだけの理由だよ」
 聞き流し、ブルービートのリキュールを水割りで頼む。
 「ああ、そいつはおすすめだ。今やビートの酒はここでしか飲めんか

もっとみる
liruk石版-4

liruk石版-4

【名を捨てし砂漠】
 黒い太陽の下、ソウルレスの男が一人歩く。携えた《大鎌》を杖代わりに、死すらも生温い行軍を続ける。
 昨日の昼食は赤蠍二匹。水分を最後に摂ったのはいつだっただろうか。記憶も意識も混濁している。だが、それらを失うことは《大鎌》が許さない。
 「三日前の晩だったか」思考が口をついて出る。奴隷隊商から逃げてきた男の心臓を、慈悲なく《大鎌》で刺し貫き……その血を啜ったのだ。
 しかし、

もっとみる