シェア
liruk
2020年2月12日 14:32
【名を捨てし砂漠】 黒い太陽の下、ソウルレスの男が一人歩く。携えた《大鎌》を杖代わりに、死すらも生温い行軍を続ける。 昨日の昼食は赤蠍二匹。水分を最後に摂ったのはいつだっただろうか。記憶も意識も混濁している。だが、それらを失うことは《大鎌》が許さない。 「三日前の晩だったか」思考が口をついて出る。奴隷隊商から逃げてきた男の心臓を、慈悲なく《大鎌》で刺し貫き……その血を啜ったのだ。 しかし、
2020年2月11日 20:48
【芽生えし双葉のシリコン街――手記】 ――心臓が、ささやかに反抗している――などと考えていた気がする。 あの日は薄曇りだったか、黒雲だったか。私の記憶ではそんな感じの天気であった。事実はともかく、そう思えるくらいには絶不調だった。 とにかく、私は仕事を終えて帰宅しようとしていた。仕事と言っても、脳がストライキを起こし、目は敵前逃亡。全身の筋肉はメドゥーサに睨まれたカエルめいて軋んでしまい、