![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120801471/rectangle_large_type_2_737295bb0702684b589c174e19f3db8e.jpeg?width=1200)
昭和流の飲み会によりDXが加速した話
もふもふライオン(@mofumofu_LION)です、こんにちは。
先日、弊社の「DX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する取り組みを記事にまとめた結果、問い合わせやコメントをいただきました。
☝️記事では、弊社のDXの取り組みの全体像を紹介してますが、みなさんが気になるのは「DXを浸透させるために何をして、何を感じたのか?」ということ。
たしかに、私もDXって成功してる企業を何件も見て回りましたが、断片的に見ても「へぇー」としか思わなくて、一番気になるのは、DX浸透の過程なんですよね。
リテラシーも意欲もバラバラな人間だらけの中でDXを進めようとするとハレーションが起きるのも目に見えていますが、その状態をどう乗り越えてきたのか?気になるのは、そういう泥臭い部分ですよね。
そこで今回は、弊社でDXにチャレンジした際の生々しい裏話を披露していきます。
「IT投資なんて無意味だよ」と社長に言われ、苦笑した入社初日
弊社はビルや学校などの建物を壊す解体業者、そしてコンクリート廃材をダンプ車で運ぶ収集運搬、一定の大きさに破砕処理を行う産業廃棄物処理業者です。業務イメージは👇
![](https://assets.st-note.com/img/1698826022707-x2DLjdnd6b.png?width=1200)
いわゆる昔からある中小零細企業で、30年以上前からビジネスモデルが変わらないレガシー産業とも言えます。
そして、昨今は2024年問題や少子化の影響から、人手不足で衰退していくと言われる業界です。
この状態を憂いて、国や大手ゼネコンをはじめ、組織改革や業務改革のためにDXを進めてるのが現状です。
しかし、残念ながら、末端の中小零細企業まで、その波が来てません。
弊社も同様で、人手不足をヒシヒシと感じつつも、非合理的な仕組みのオンパレードで、DXとは無縁の企業体質でした。
「えっ、なんでこんなことに時間を割いてるの?どう考えても不要でしょ!!?」
「なんで数億もする重機の購入を一瞬で決められるの?えっ、社長(義父)の感覚で判断してるの?」
みたいな疑問だらけの状態、そして、私が入社したのは、従業員の集団離職による人手不足、管理トラブル、営業不振などで、経営はガタガタ、当期経常利益も赤字の状態の時でした。
そんな状態だったので、入社してからすぐに会社の立て直しをすべく、現状の課題やDX戦略を立てて、社長(義父)説明しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1698827171020-3pafUx3hAV.png?width=1200)
しかし、この説明後、社長(義父)からは「何言ってんだこいつ」みたいな顔をされ、言われたのは
「現場に出て、職人として10年修行してから、偉そうなことは言えよ!IT投資なんて、無意味だ!」
でした。
「入社して間もない若造が経営に口出してくるんじゃねぇ」と思う社長の気持ちもわからなくはないですが、赤字でボロボロの状態だったので、こんなこと言ってる社長の気持ちがわからず、苦笑いしてた記憶があります。
ここで社長(義父)と大喧嘩することになりましたが、赤字の経営状態を理由で、最後は社長(義父)から「言う通りにします。お願いします」という一言で幕を閉じました。
現在考えると、過激なことを言ってるように感じますが、当時はなりふり構ってはいられませんでした。
目的意識がない従業員への説明に頭を悩ませる日々
社長(義父)からお墨付きをもらい、社内で行動しようと思ったものの、私が勝手に行うと従業員は戸惑い、最悪の場合、集団離職に繋がるので、従業員と1on1面談をして、会社の課題を紹介することから始めました。
私「今のサーバーでどこのフォルダに何が入ってるかわからなくないですか?」
事務員「そうなのよ。しかもファイル検索かけても引っかからないこともあって、困ってるのよ」
私「ですよね…ちなみにどういう場面で、ファイル検索かけますか?」
事務員「契約書探したり、過去の打ち合わせ資料探したり…」
こんな感じで、会社の課題を紹介した後は聴くに徹してました。
弊社50名程度の会社なんですが、全員終わるまでに1ヶ月近くかかりましたね(疲弊)
そして、そこからは優先順位を決めて、システム化→運用→改善→システム化→…の繰り返しで、実運用に溶け込ませていくのですが、3年程度進めていった結果としては、失敗9割、成功1割といった感じです。
(失敗した事例は👇)
失敗の原因は、システム化しても運用に耐えられるものではないためです。
システム化まではうまくいくんですが、実際に使ってもらった時に「今までと違う」とか「覚えるのがしんどい」とか言われて、頓挫することが多々ありました。
システム化しても、クレームが入ってトラブルになった話は腐るほどあります(苦笑)例えば、👇
建設業の経理業務に携わって、早1年。
— もふもふライオン (@mofumofu_LION) November 12, 2021
6時間かかっていたExcel単純作業を、VBAで1時間に簡略化したのだが、お局社員から「自分の手を動かしてないのは不安だし、計算ミスがあるかもしれない...」とクレームが入る。
「えっ、あなたはミスしないんですか?」とツッコミ入れてもいいですか?ww
みんな、1on1面談の時は困っていると言ってたものの、いざ自分のテリトリーの仕事領域を犯されるとなると必死に抵抗するものです。
できることなら、現状と全く同じ手順で仕事をしてもらいたいのですが、それでは余計な人もかかるし、今まで起こってきたトラブルは続くばかり。
それが余計な費用に繋がり、利益を圧迫し、給与を上げる原資も減っていく。
…ということを理解して欲しいけど、従業員からしたら、そこまで考える立場でないのかもしれません。
こんな失敗だらけの状態だと、気が滅入るもので、毎週土曜日に一人居酒屋に駆け込み、「組織を良い方向に導こうとしているのに、なんでこんなに拒否されるんだろうな…」としょぼくれてた気がします。
判断軸は「誰が」言うかでしかないのだ
そんな失敗ばかりの日が続いてましたが、ある日、大きな転換点に入りました。
その日は部長職での会議がある日でした。
その会議は大荒れで、各部署の部長が1時間以上、怒鳴り合いをしてました。
内容は解体工事で発生するコンクリート瓦礫を受け入れる産業廃棄物工場がキャパオーバーとなり、受け入れ不可となったこと。
解体工事を管轄する部長からすると、産業廃棄物工場が受け入れ不可になるのであれば、前もって通知してくれないと工事のスケジュールに影響出るから、早く言ってほしいという要望をひたすら伝えてました。
それに対して、産業廃棄物工場の部長は「そんなのできるはずない」「そんなこと言うなら、解体工事を管轄する部長がやればいいだろ」といった感情論でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1699110961905-HUSVpHHc6m.png?width=1200)
コンクリート瓦礫を受け入れる産業廃棄物工場のキャパシティ管理については、私が以前システム化を提案してましたが、例の如く、「今までと違う」とか「覚えるのがしんどい」とか言われて、頓挫している状態でした。
各部署の部長の考え方が平行線なため、会社全体の利益を考えて、改めてシステム化の提案を会議内でしましたが、産業廃棄物工場の部長は頑なに否定してました。
それを見た社長が声を荒らげて、一声。
「〇〇(産業廃棄物工場の部長の名前)、改善策が他にないなら、とりあえずシステム化に協力しろ!嫌なら、部長職降りろ!」
その鶴の一声で、産業廃棄物工場の部長はしぶしぶ承諾。
私が提案したシステム化がすんなり浸透し、全てが解決しました。
(システム化の詳細は省きますが、👇な感じでGoogleSlideで見える化して、受け入れ不可ラインになった時点でGoogleChatで自動通知されるようにしてます。)
![](https://assets.st-note.com/img/1699111140597-4FIQMjSNXX.png?width=1200)
この経験からわかったのは、「『何を言うか』よりも、『誰が言うか』の方が、大事だ!」ということでした。
信頼を得ろ、そのために飲め(笑)
「『誰が言うか』よりも、『何を言うか』の方が、大事だ!」と血気盛んな若者を見たことはありませんか?
実際、私も社会人になったばかりの時に、このセリフをよく言っていました(苦笑)
しかし、社会人経験が増してきた現在から振り返ると、恥ずかしいことを言ってたなぁ、と思います。
ビジネス上の「正解」の定義は人それぞれです。しかし、共通するのは「正解」にいかに近づけるか、外れた時のダメージを最小限に抑えることができるか、を予測して、「誰がその責任を取るのか?」を押し付け合うゲームということ。
その「誰がその責任を取るのか?」と言うのは『誰が言うか』と同義なんですよね。
私が前職の大手企業でいかに経験を積んでこようが、中小零細企業で業務経験の浅いポッと出の若造よりも長年会社を支えてきた社長の方が責任を取ってくれるはず、というのが、従業員の気持ちだと思います。
それをひっくり返すためには、従業員から社長よりも責任を取ってもらえるような存在にならなきゃいけません。
そのためには、従業員からの確固たる「信頼」を得るしかありません。
では、従業員からの確固たる「信頼」を得るためには何をすれば良いのでしょうか?
仕事が誰よりもできればいいのでしょうか?業界の中で有名な人から認められればいいのでしょうか?四六時中一緒にいればいいのでしょうか?
この答えは私にはわかりません。
ただ、現在まで築き上げてきたものに対して、敬意を表し、相手の気持ちに寄り添わなければいけないというのは必須だと思っています。
そして、その期間は一朝一夕というわけにはいかないのです。
では、具体的に何をしたかと言うと、業務終了後に従業員を誘って飲みに行きました。それも1日2日というわけではなく、2ヶ月間毎日のように行きました。
最初は日常生活の会話してましたね。プライベートな話に突っ込みまくりました。
「へぇー、趣味でトライアスロンしてるんですか?私もロードバイク乗ってますよ!」
「おー、お子さんがインターハイ出場したんですか?すごい!今度、写真見せてください!」
みたいな感じです。
そこから、徐々に現在まで築き上げてきたものを教えてくれたり、仕事をしている時の悩みをしてくれるようになるんです。例えば、
「若手がどうやったら一人前になってくれるかなぁ…」
「実はヘルニアで、ダンプカーに乗るのがしんどくなってきて…」
みたいな普段の仕事中では出てこないことをポロッと言ってくれるんですよね。
こういう飲みニケーションの話すると、「昭和じゃないんだぞ!現在は令和だぞ!」「うわぁ、昭和臭いわぁ」のようなこと言われるかもしれません。
でも、飲み会をすることで、仕事以外にも家族のこと、趣味のこと、それ以外の悩み、価値観を聞けるようになると思うんです。そして、それらが仕事にも影響出てくるはずで、そこを理解するのって大事だと思うんです。
(もちろん、強制はしませんよ笑)
徐々に態度が変わってくる従業員
飲み会に次ぐ飲み会も1年が経過する頃。徐々にDXも浸透していくのを感じました。
その一つが勤怠管理システムです。
恥ずかしながら、今まで
出勤・退勤はタイムカードなし
有給申請は紙申請
勤怠情報をエクセルにまとめた後に給与システムに手打ち入力
という状態でした。
こんな状態なので、遅刻はうやむやになってたし、有給漏れが出てたりしてました。
その結果、給与振り込みが発生する月末月初になると、総務、経理がヒーヒー言ってました。
それを解決するためにノンコードツールGoogleAppSheetでシステム化したんですが、残念ながら最初は誰も使ってくれませんでした。
出勤・退勤の漏れは出てくるし、指摘しても無視する従業員もいました。
それが、飲み会を重ねる度に浸透していくのを感じました。
![](https://assets.st-note.com/img/1699124623755-vGsRaxxGo8.png?width=1200)
最初は誰も使ってくれなかったシステムを従業員が使うようになったのはなぜか聞いてみました。
私「なんで急にやってくれるようになったの?」
従業員「これ入れないと給与を正確に振り込まれなくなるんでしょ?だったら入れるよ」
私「それ、システムの説明会した時から言ってたがな…」
従業員「正直、最初は偉そうなこと言ってるなぁくらいしか思ってなかったけど、飲んで話を聞いてたら必死に頑張ってるのを感じたんよね。そこから何をしたいのかを理解したよ」
なるほど。私もようやく従業員から認められたんだ、信頼を得られたんだ、と感じました。
最近では👇な感じで、手本を見せたら、勝手に動いてくれるようになりました。
年配の事務員さんが言語化が苦手なので、今困ってることや直近のタスクを整理して、管理表やタスクリストにまとめてあげたら、目を点にしていた。こういうのって継続しないと意味ないと思うので続かないだろうなって思っていたけど、自分で更新し続け、事務全員で共有して仕事してた(嬉)
— もふもふライオン (@mofumofu_LION) April 10, 2023
老舗中小零細企業のDXは、イントレプレナー精神を持つ経営者がいると激変する
こうした経験から、私の中で老舗中小零細企業のDXに関して、ある結論が出ました。
ITに親和性がある人が経営層に付いて、既存従業員から信頼を勝ち得ないとDXは成立しない
まず、間違えて欲しくないのは、プログラミングができるとかIT企業出身とか専門的な知識がないとDXは進められないかと言うと、そんなことはありません。
弊社でDXと称してやってることは、Excelを整理してグラフ化するとか、メールで運用していたことをGoogleChatに移したりとか、IT企業出身者からしたら「その程度でDXとか言ってんのww」と笑われてしまうような施策ばかりです。
でも、そんな小さいことを繰り返すことで経営判断に必要な情報が集まってきて、合理的な判断ができるようになります。
逆に、ITの必要性を理解し、嫌悪感を抱かない人が経営層に付かないと、戦略も立てられないし、予算も付けられません。
大事なのは、マインドです!
また、ITの必要性を理解し、嫌悪感を抱かない人が経営層にいても従業員からしたら、「何言ってんだ、こいつ」と思われるでしょう。
だからこそ、ここまで説明してきた通り、新しい取り組みをしても、全責任を取ってくれる存在にならなきゃいけません。
そして、そのためには既存従業員が現在まで築き上げてきたものに対して、敬意を表し、相手の気持ちに寄り添う必要があります。
そこまでして初めて、DXをする意図が従業員に届くと思いますし、施策も浸透するはずです。
ここまでを踏まえると、老舗中小零細企業でのDXでは、社内起業家的な観点(いわゆるイントレプレナーシップ)が必要とも言えます。
ここまでが、弊社でDXにチャレンジした生々しい裏話と中小零細企業のDXに思うことでした。
DXに限らず、新しい取り組みをするのは、反発だらけで心が折れることも多いでしょう(汗)
そんな時はいつでもビール片手に鼓舞しますので、心が折れかけてる同士よ、是非ご連絡ください。
※普段、X(旧Twitter)を徘徊してます。よろしければフォローしてみて下さい
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?