雨の日はこの傘と
日本各地から梅雨入りの便りが届く季節となった。
きょうは私の大好きな傘の話を。
購入したのは1997年。東京・台東区の前原光榮商店の傘だ。
あとから聞いて知ったことだが、1997年といえば先代が急逝され、家業を継いだばかりだった現社長がいろいろと苦労されていたころらしい。
私が購入したのは(夫にプレゼントしてもらった)、ヘッダーの写真にある16本の骨で支えられているものだ。
まず四半世紀使っても壊れない丈夫さに驚く。
開閉するときにカチッとパーツがはまる部分(はじき)も壊れたことはない。各骨の先端(つゆさき)もほつれたことがない。
そして美しさ。
16本の骨が作り出す丸く穏やかなフォーム。
丁寧に微妙なバランスで張られた布に雨粒が当たると、小さな太鼓のように軽快な音がする。
この骨の数のおかげで、閉じてもまとまる。
骨をまとめるバンド(上から口ネームバンド、胴ネームバンドというらしい)も美しい。
そして、16本の骨があるとは思えないほど、たたむとスリム。
いまでも雨の日の外出先で「素敵な傘ですね」と言われることがある自慢の傘だ。
年の差の少ない3人の子育ては、ほぼ動物としての習性と勘に頼るようなワイルドな毎日だったが、この傘の凛とした強さと美しさに何度身の引き締まる思いがしたことか。(思いがしただけで実際はたいして変わらず)
日本から遠く離れた地で、私を守り、勇気づけ、誇りを与えてくれたこの傘に感謝している。
最近になって知って驚いたご縁もある。
こちらの折りたたみ傘、これももう20年ほど前になるが、一時帰国してフランスに戻るときに祖父が自分の手持ちの傘の中から持たせてくれたものだ。
ずっと気にすることのなかったネームバンドの裏がたまたま目に入った。
私の傘のネームバンドの裏にもついている。
26年が経ち、傘としての機能的には問題ないものの、あちらこちら傷みも目立つ。
ほつれがひどくなった手元のタッセルは外した。
持ち手の革も一部はがれているところがある。
飛行機にも預け入れができるらしい。
いつか里帰りさせてメンテナンスしてもらおうと思っている。
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