ChatGPTにこども六法を書かせてみる(AI vs こども六法)
はじめまして、こども六法の企画・制作を行った、小川凜一と申します。
こども六法は、子ども向けに法律を伝える本で、おかげさまで発行部数が70万部近くとなり、多くの方の手に取っていただきました。
こども六法の詳しい制作経緯はこちら。
さて、昨今ChatGPTなるAIが話題です。僕も去年から触っておりその凄さには驚かされます。
特徴を挙げるとすれば、口語でお願いしたことでも、人間のように意思を汲み取って考えてくれることでしょうか。
例えば、お題を与えてみましょう。
「アナと雪の女王」のストーリーの舞台を、幕末日本に変えてください。
こんな感じで、無茶振りにもちゃんと考えて答えてくれます。
さらにすごいのは、それに口語でフィードバックをすると、ちゃんと直してくれることです。例えば・・・
登場人物を日本人風の名前にして、忍者や忍術が登場し、物語のキーマンとして坂本龍馬も登場させてください。
「阿奈と忍術列伝」になりましたね。
ちなみにタイトルも直させてみましょう。
「忍者の光:阿奈と絵美の旅」
シリーズ化しやすそうなタイトルになりましたね。
こんな感じで、本当に人間にお願いするように、文章をどんどんと描いてくれたり修正してくれます。さらにプログラミングやエクセルシート作りまでできるそうで、人間のお株が奪われそうなほど優秀なAIです。
さて、制作を行ったこども六法をみてみましょう。
こども六法は、簡単に言えば大人でも難しい法律を子どもにもわかるように直した本です。これ、もしかしてChatGPTでもできてしまうのでは、と思い実験してみました。
※この記事は、著者の山﨑聡一郎さんにも許可を得て作成しています。
まずは、メインとなる、法律の本文を書かせてみます。書籍では下記の部分ですね。
元々の法律は
刑法第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
なのですが、
こども六法では、
人に乱暴な行いをしたけれども、相手にケガをさせなかった場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金か勾留、科料とします。
と直したわけですね。
ちょっと難しく感じるかもしれませんが、罰金や勾留、科料などは事前に説明があるので、それを考慮すればだいぶわかりやすいかと思います。
では、早速元々の刑法の条文を、ChatGPTに直させてみましょう。法律の文章を小学生でもわかるように言い換えるよう、指示してみます。
おお、だいぶできている・・・。特に、
「暴力はダメだ」ということを知って、「他の人を傷つけない」、「優しい行動を心がける」ことが大切です。
の部分、こども六法にはない、子ども向けの教訓が添えられているのが良いですね。
でも、刑罰の内容が「ジャングルにいって2年以内」・・・?どういうことでしょうか。
何度指示しても必ず懲役のことをジャングル行きと言ってしまうので、よくわからず、ChatGPT本人に聞いてみました。
小学生に向けた彼なりの気づかいだった。
小学生には、刑務所とか懲役とかはわからないだろうな、ということで、帰りにくくて少し嫌な場所として、ジャングルをチョイスしたようでした。ジャングルジムが牢屋っぽいのも関係あるのかな。
ジャングルは使わないように指示すると、下記のようなものを返してくれました。
かなりいいですね。元々のこども六法の、
人に乱暴な行いをしたけれども、相手にケガをさせなかった場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金か勾留、科料とします。
に負けず劣らず、わかりやすい文章になりました。
では、次にキャッチコピーも付けさせてみましょう。
上記の「ケガをさせなくても暴行になるよ」の部分ですね。
こども六法を作るときにも、法律にキャッチコピーをつけることはミソになった部分です。早速お願いしてみましょう。
うーん、悪くないのですが、「ケガをさせなくても暴行になるよ」に比べて、法律の内容を一発でイメージしたり気づきを与えるものにはなっていないですね。こんな時は、たくさん案を出させてみましょう。
・・・。
ChatGPTをやっている時の注意点なのですが、指示をはっきり伝えようとするあまり、だんだんこちらが嫌味な上司みたいな言葉遣いになりますね。人間に対しては絶対こんな言い方しないのですが。
SF映画など見ていて「ロボットとはいえ流石に扱いが酷すぎるだろ!」と思うことがありますが、こういうことなんですかね・・・。
ともあれ、案がいくつかもらえました。
とても良いですね。では、一番最初に挙げてくれた
1.暴力をすると、傷つけなかった場合でも法律が決めた罰則があります。
これをタイトルということにしてみましょう。
「ケガをさせなくても暴行になるよ」よりもキャッチーではないですが、法律を一言で理解するには良い文章に見えます。
最後にイラストを書かせてみましょう。
ChatGPT自体にイラストを出力する機能はないので、ChatGPTが指示を出し、他のイラストを描くAIに出力させましょう。
まずはChatGPTに、ここまで考えた文章に、動物たちのイラストをつけるならどんなイラストにするかを考えてもらいます。
おお。良さそうですね。猿が小動物に暴力をふるい、それを裁判官の鳥がみている場面を考えてくれました。
偶然ですが、法律の裁判官(例えば鳥など)が立っているという表現。こども六法の案内役もオカメインコです。
では、この指示をもとに、別のAIにイラストを書かせてみましょう。
お絵描きAIはたくさんあるのですが、今回は手元にあった、AI Picassoにお願いしてみましょう。
先程のChatGPTの文章をAI Picassoに入力してみます。
今回は、「いらすとや風タッチ」を選んでみました。
ではいってみましょう。
暴力行為をする猿が他の小さな動物を傷つけているところに、法律の裁判官の鳥が立っているというイラスト
・・・?ちょっと要素が混ざっちゃったようですね。イラスト生成アプリは、複雑な状況を正しく表現するのはちょっと苦手みたいです。
仕方がないので、大体の構図を僕の方で指示してみました。
微妙ですが、状況は少しわかりやすくなりました。
猿が青くて小さい何かをいじめていて、それをアザラシと鳥の間みたいなやつが止めています。
もっと人の手を入れれば完成度は上がりそうですが、今回はなるべくAIだけの手で行って欲しいので、これで留めておきましょう。
これで、キャッチコピー、イラスト、本文が出揃いました。
では、全ての要素を1ページにまとめてみましょう。
こちらが、AIが作った、こども六法の1ページです!
・・・どうでしょうか。
元のこども六法と比べてみましょう。
イラストは残念ではありますが、本文とキャッチコピーのクオリティはなかなかのものになったのではないでしょうか。
AIの機能は日進月歩なので、文章のクオリティやイラストのクオリティが上がれば、2~3年以内には、プロと遜色ないものが作れそうな気がします。
しかし、編集はまだまだ人間が必要そうですね。
ここまで制作して分かったのですが、ライターやイラストレーターはいずれAIで代替ができそうな気がしますが、今回僕が行ったように、
コンセプトや方向性を決める。
ライターやイラストレーターに指示を出す。
出来上がったものにフィードバックをする。
いくつか案を出させ、その中から最適なものを選ぶ。
といった、書籍作りでは編集の方が担う部分は、人間の裁量がなければ良いものにはならないような気がします。
そうなると、手を動かすより、全体を見回して方向を示したり、適切な情報を選択する力が、これからのAIが当たり前となる社会には必要なのかもしれないですね。
最後に、種明かしとして人間の作ったこども六法を、AIに評価してもらいました。
「傷つけなかった場合」の要素が強調されていないため、法律に関する内容がはっきりとしないという欠点があります。
確かに!!さすが最新AIですね!!参りました!!
文:小川凜一
こども六法(https://www.kodomoroppo.com/)
こども六法制作企画:LUCK株式会社(https://www.luck-inc.com/)
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