「例の件」でプロジェクトが白紙になり、思いがけず新機能が生まれた
日々ニュースを配信するLINE NEWS。2013年にサービスを開始してから、さまざまな試行錯誤を重ね、現在では月間ユーザーが7700万人になりました。リッチなユーザー体験を目指すべく、日々アップデートを試みています。昨年には「ビッグイベント枠」という新しい枠が誕生。この新機能の開発の裏には「とある事件」がありました。
LINE NEWSの企画チームでPdM(プロダクトマネージャー)をしている渡邉雄介が、新機能と誕生の舞台裏について語ります。
ニュースプラットフォームでの「企画」の仕事とは
LINE NEWSの中の人と聞くと、編集者やデスクの方を想像することが多いと思いますが、記事を作ったり選んだりする編集者や記者を「料理人」に例えると、企画者は「料理を出す器や店、立地を考える人」なのかなと思っています。
せっかく美味しい料理を作っても、食べにくい器に盛り付けられていたら料理を味わうことはできないし、中高年の方が多く住む街に若者向けのバーを出してもミスマッチですよね。
そして、仕事の規模や内容に関係なく「これをするとどう良くなるのか?」を一緒に働く人にきちんと伝えて「共感」してもらうことが大事だと思っています。
と言いつつ、私は会話は苦手な方なのですが(笑)、仕事内容や環境は常に変わるし、人は良くも悪くも感情に左右されるので、決まった方法はない、常に答えは変わる、という意識は頭に入れています。
このようにアイデアを温め、いろんな人の力を借りて「新機能」が生まれてきました。
テレビ視聴の「きっかけ」になる、LINE NEWSのとある機能
例えば、どんな「機能」をこれまで作ってきたかというと、スポーツ中継のハイライトをプッシュ通知で配信する「リプレイキャスト」があります。
サッカーでゴールを決めたり、野球でホームランを打ったり、決定的な瞬間のリプレイ映像をプッシュ通知で配信することで、多くの人に「今、盛り上がってますよ」とお知らせし、"テレビを見るきっかけ"を作ります。
私たちはさまざまな形でニュースを届けようと日々改善を重ねていますが、スマホでの体験において、ディスプレイの大きさはどう転んでも、テレビには勝てません。画面が大きい方が、迫力も臨場感もあるでしょう。スマホは小さい画面ですから、常に携帯しているとはいえ限度があります。
テレビを見ながらスマホを触っている人も多いと思います。そういった人たちに向けて、テレビの補完や導線的な機能を作っていけたらと思っています。
「2020年は東京五輪で一気に伸びるぞ」
こんな風に日々試行錯誤しながらプラットフォームを作っている中で、東京五輪には並々ならない力を注いでいました。
五輪やワールドカップなどのイベントは、普段スポーツを見ない人も興味がありますし、その開催地が東京となれば、期待は跳ね上がるからです。関心がある人が多ければ、トラフィックも増えます。たくさん集まってくれたユーザーに向けて、リッチな体験をしてもらいたいと思い、2019年からチームを組織して準備を始めました。
当時、私のチームは6人体制でしたが、別のチームにも手伝ってもらい、企画だけで合計19人増強しました。
企画や開発以外にも、UIデザイン、数値管理をするデータチーム、サーバーを管理するメンバーや、媒体社さんとコミュニケーションを取るアライアンスチーム、広告チームなど、どんどん規模が大きくなっていきました。
五輪延期で社内失業状態に
2020年、3月24日。東京五輪の延期が決定しました。
世界情勢から見て「開催は厳しいかもしれない」という雰囲気はありましたが、正式発表されるまでは開催の可能性はゼロではありません。当然、開発も中止するわけには行かず、ゴリゴリと設計が進んでいた状況でした。
延期が決まったので、チームは一旦解散しました。私たちはそれまで2020年7月を目処にプロジェクトを進めていましたが、次の開催まで1年ほど空白期間が生まれてしまいます。
LINE NEWSには五輪のほかにもやるべき仕事がたくさんあるので、いつまでも人を留めておくことはできません。
五輪以外のスポーツイベントも軒並み中止。私のチームは長年スポーツを中心に仕事をしていたので、延期の発表直後は、ちょっとした失業みたいな感じになっていました。
スポーツイベントだけにこだわっても仕方がない
チームが解散した後、残されたメンバーたちは必要に応じて別の業務をやることになりました。事業者目線で考えると「その時に優先すべきこと」をやった方が生産的ですから。私たちはスポーツイベントを中心にいろいろな企画を立ててきましたけど、「それしかやりたくない」とするのは、違いますよね。仕事なので。
コロナ禍では五輪に限らずスポーツに関する案件は完全にストップしました。その期間は、レシピ検索のプロジェクトを担当するなど、これまでの業務とは全然違う仕事もしました。
ミニマムで再始動した東京五輪プロジェクトと打開策
再び、2020年の10月から東京五輪のプロジェクトが動き出したものの、以前のようなリソースは割けませんでした。というのも、2021年においても新型コロナウイルスが収束せず、さらなる延期になるか、中止になる可能性もあったからです。
企画メンバーは私含めて3人になり、開発にかけるリソースも必要最低限になりました。以前に作った仕様書はあるものの、手を動かす人が足りないので、単に「2020」の数字を「2021」に変えればいいという問題では済みません。
開催が確実ではない五輪に対して、どういう風に立ち回れば会社からOKがでるのか…という悩ましい課題も生まれました。このプロジェクトの音頭を取っている私が音を上げてしまっては誰もついてきてくれません。そこで考えたのが「五輪以外でも使えるものを作る」でした。
選挙や紅白歌合戦でも使える枠が誕生
LINE NEWSではこれまで2016年夏季・2018年冬季と過去2回五輪を経験してきたのですが、毎回ゼロからフルスクラッチで開発していました。しかし、延期にあたってそれをやめました。そもそも五輪は、試合があり、選手が活躍して、メダルを獲得するもので、内容が大きく変わることはありません。今更ではありますが、基本が変わらない中で企画をゼロから出す余地ってないなと……。
結果的にできたのが「ビッグイベント枠」という新しい枠でした。これはLINE NEWSのトップに大きなバナーを設置し、その下に動画や実況記事をおいて、イベントを熱く盛り上げる施策です。LINE NEWSには、選挙や紅白歌合戦にワールドカップなど追わなければいけないトピックがたくさんあるので、いろいろなイベントで使える仕組みを作るように方向転換したわけです。
この図は最初に作ったユースケースです。上が五輪で、下が選挙の例。このように、五輪以外でもさまざまなイベントに対応しつつ、ニュースバリューに応じて運用する枠の数を調整したり、掲載位置を上下させたり、アレンジできるのが特徴です。
不慮の「事件」から得られた、思わぬ成果
東京五輪の開催が未確定な状態だったので、成果にならないものを作るのは開発側としても精神衛生上良くありません。でも、汎用性の高い仕組みなら、もし東京五輪が中止になったとしても、他の機会で成果をあげられます。
2回の五輪と、1回の白紙を経て、使い勝手の良い運用枠ができました。この枠は、イベントのバリューに合わせてアレンジが利くのが大きなポイントです。設置のフットワークが軽くなるのも魅力です。
多分、これまで「特別な機会だからゼロから丁寧に作るべきだ」と思い込んでいたような気がします。手塩にかけた企画がベストだとは限りません。
延期は不慮の事態での白紙でしたが、冷静になった結果、「仕組み化」が実現できたのは思わぬ成果でした。今は、新卒のメンバーにも入ってもらってVer.2にアップデートを試みている最中です。まもなく始まる参議院選挙でもビッグイベント枠を活用するので、楽しみにしていてください。
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