飛行機で観る映画の話
今回は、飛行機について。
長時間の国際線フライト。機内で観る映画は、欠かせない旅のお供です。そんな機内映画、日本語吹替版で観る機会が多いですよね。
今日のお話は、機内映画の日本語吹替についてのお話です。
近年、LCCを除く国際線の多くは、各シートにモニターを標準装備。ゲームや映画を個々の座席で楽しむことができます。かつては飛行機で移動中がヒマ過ぎて、どう過ごすか苦戦したもの。でも最近は、ひたすら映画を観て過ごすというのも定番です。
機内映画は言語設定をして観ることが殆ど。私たち日本人だと洋画を観る時、言語設定→日本語=日本語吹替。
しかし機内映画で多くの人が、ある違和感を経験したことがあるのでは?
それは「日本語吹替が、なんだかヘン」ということ。
機内映画の日本語吹替は、2種類あります。
ひとつは、劇場公開またはDVD等ソフトバージョンの吹替。これは、我々が通常目にするクオリティの吹替ですので、特に違和感はないかと思います。
もうひとつは、機内上映専用吹替。これは日本劇場公開前の作品に多く見られます。
主にロサンゼルスだと言われていますが、機内映画専門の吹替制作会社が存在し、そこで制作された日本語吹替なのです。声優は、残念ながら素人レベル。もしかすると日本語得意ではない?と思う様なクオリティも。また、ひとりで何役も吹き替えをこなしたりする場合もあります。
あまりにヘタ過ぎて、映画に集中できないことも。
日本での劇場公開前作品を機内で観ることができるとお得感がありますが、そういった作品は日本でまだ吹替版が制作されていない場合が多く、上記の機内映画専門会社版の吹替になることが多い様です。
また、機内映画では日本語字幕が設定されていること少ない様で、洋画の場合は選択肢が吹替のみが結構多いです。
ここからは、余談。
日本で劇場公開される洋画は、字幕が主流です。
一方で、特に欧米諸国で他言語映画が劇場公開される際は、吹替が主流です。
なぜ日本の洋画は字幕文化になったのか。
映画に音声が付いた、つまりサイレントからトーキーへの転換期は1929〜1930年です(史上初のトーキー(一部)作品は、1927年の作品『ジャズ・シンガー』と言われている)。
日本で劇場公開された初の洋画トーキーは1930年、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の『モロッコ』でした。
制作したパラマウント社は日本市場での拡販を狙い、ハリウッドで日本語吹替版を制作します。その時吹替声優として起用されたのが、ロサンゼルス近辺に移住してきた日系移民の人々でした。
実は声優として参加した方々は広島出身者が多く、皆さん日本語で話すと広島訛り。しかしパラマウント社のアメリカ人は、日本語の標準語や方言など分かりません。
こうしてハリウッドで制作された日本語吹替版『モロッコ』が日本で公開されると、主演のゲイリー・クーパーやマレーネ・ディートリッヒが広島弁を喋っているのです。
もちろん方言が悪いわけではありません…が、『モロッコ』広島弁バージョンは、さすがにイメージと違い過ぎました。残念ながら観客の失笑を招き、以降日本での洋画吹替文化は衰退し、字幕文化が主流になったと言われています。