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国と企業の架け橋となる。ルールメイキングで新市場を切り拓く、政策渉外部の活動内容




#1. それぞれの前職経験を活かし、政策渉外に携わる


ー皆さんの前職や、これまでTBMで取り組んできたことを教えてください。

笹木:以前の職場である電通時代に、新市場を形成するために、広告代理店として電通内で新しい組織を立ち上げ、官公庁と連携した活動を行ってきました。その後、2016年にTBMに入社し、今年の4月に政策渉外部を立ち上げましたが、部門ができる前から、自治体とのコンソーシアムの立ち上げや包括連携協定、官公庁と連携した活動など、プロジェクト毎にメンバーをアサインして、渉外業務を進めていました。こうした取り組みを組織として体系化し、より戦略的に活動するために、政策渉外部を設立しました。

大場:私は、新卒で環境系ベンチャー企業に入り、資源循環事業や再生可能エネルギー事業に従事し、上場も経験しました。そして、改めてベンチャー・スタートアップ企業で再挑戦したいと思い、TBMに入社し、資源循環事業の立ち上げやリサイクルプラントの運営、行政・業界団体との連携を推進してきました。これらの経験から、資源循環を促進するためには政策から変える必要があると感じ、今年の4月から政策渉外部にも参画しました。

武澤:新卒で日本郵便に入り、官公庁や自治体と連携して、学生時代から関心のあった地方創生事業に取り組んできました。ユニバーサルサービス義務を担う日本郵便にとって、地域の活性化は企業成長に直結します。社会課題の解決や、社会的意義のある取り組みを通じて企業成長に貢献できることにやりがいを感じていましたし、これはTBMの政策渉外部での仕事と似ているところも多く、楽しくやりがいを持って仕事をしています。

2018年に半年間、日本郵便とTBMとで仕事をして以来、ずっとTBMのファンでした。仲間を増やしながらハングリーに前向きに挑戦し続けるTBMメンバーの姿勢に多くの刺激を受けましたし、感動や悔し泣きするメンバーの姿を見ているうちに、私も魂を燃やせる人生を送りたいと強く思ってきました。その気持ちが溢れ返り、ありがたいご縁もあって、2023年にTBMにジョインしました。

加藤:私は官庁出身で、愛知県庁からキャリアをスタートしました。その後外務省に出向する機会をいただき、国と地方両方の機関で経験を積んできましたが、双方の機関で業務に携わる中で、違う立場でルール作りに携わりたいと思うようになりました。その際、複数の企業で渉外部の募集がある中、「スタートアップで政策提言を行う部署を新規で立ち上げたこと」、「新素材をルールメイキングで普及させるという、政策渉外業務の攻めの部分に直に携われること」に魅力を感じ、TBMへの入社を決めました。


#2. 新市場創出を担い、サステナビリティ革命の実現に挑む


ー続いて、政策渉外部発足の背景を教えてください。

笹木:近年の日本企業では、ルールメイキングを通じて新しい市場を創出することが経営のツールになっています。今後、新素材ビジネスや資源循環ビジネス、新規ビジネスを推進していく上で、外部環境の変化を捉えて、官公庁や自治体、関係団体との取り組みを戦略的に行うことが求められていると思っていました。
特に2024年は、TBMにとって事業フェーズの大きな転換期です。サステナビリティ革命を実現するためには、既存事業だけでなくグループ全体の戦略を強化し、牽引していく必要があります。この戦略を先導する役割を担い、社会的影響力(ソーシャルインパクト)を最大化していくために、今年が専門組織を発足するタイミングと判断して、政策渉外部を設立しました。


#3. ユニコーン企業第一世代として、官民連携を加速させる


ー政策渉外部は、官公庁や自治体、関係団体に対してどのようなアプローチをされているのでしょうか

武澤:大きく3つの業務分野に分かれます。

■コーポレート・新規事業
武澤
:1つは、今後のTBMグループの事業戦略を実行していく中で、ユニコーンスタートアップとしてのTBMのさらなる成長と競争力の向上、また新規事業を創出していくための取り組みとして、具体的に2つの取り組みを行っています。

1つ目は、「CEOオーディション-NEXTユニコーン-」というプロジェクトです。これは、気候変動、環境破壊、資源の枯渇など、地球規模の社会課題に取り組み、次なるユニコーン企業を志す挑戦者を発掘し、NEXTユニコーン企業の創出に向けて必要な環境や支援が提供されるというものです。

6月29日(土)に、世界中のイノベーションの結節点になることを目指し東京都が設置したTIB(Tokyo Innovation Base)にて、最終審査となるチャレンジステージを開催しました。合格者への支援内容(創業支援、事業化・提携検討、メンタリング)が決定し、TBM賞など共催各社から特別賞の授賞式も行いました。

TBM単体だけでなく、グループ戦略として競争力を高めていく意味でも、このプロジェクトをキッカケに、TBMとシナジーがあり志高く挑戦されている方々とのネットワークを拡げていきます。

笹木:経団連は2027年までにユニコーン企業を100社創出することを目標とし、また東京都も、ユニコーン企業創出を東京発で10倍にしていくことを掲げています。このようなスタートアップ政策は、国力や民間の活力、経済成長に貢献すると期待されています。私たちも、国や自治体の政策に沿って、今のTBMのポジショニングを最大限活用したアクションとして、CEOオーディションの機会についても企画から関わらせてもらっています。

「CEOオーディション-NEXTユニコーン- ファイナルステージの様子

武澤:2つ目は、金融庁・経済産業省が2023年に立ち上げた「インパクトコンソーシアム」での取り組みです。インパクトコンソーシアムは、社会・環境的効果の創出を、経済・社会の成長・持続可能性の向上に結び付ける好循環の実現に向けて、投資家・金融機関、企業、自治体など幅広い関係者がフラットに議論できる場として立ち上げられました。

常務執行役員CMOの笹木は、コンソーシアムの中の「官民連携分科会」のコアメンバーとして、経済産業省や自治体、他のインパクトスタートアップと共に、官民連携の促進に向けた課題やその解決に向けた議論を深め、事例創出に繋げていくことを目指しています。

分科会では、インパクトスタートアップの立場から、ディープテック領域のスタートアップにはどのような支援が必要か、また自治体側やスタートアップ側の課題、両者のマッチングの課題など、広い視点で発言をしています。
経済産業省からは、社会課題の解決に向けたインパクトスタートアップへの期待を強く感じています。

インパクトコンソーシアムの活動の様子

■LIMEX事業について
加藤
:LIMEX事業については、環境配慮型素材が普及しやすい状況を生み出すために、国に対して既存のルール改定やルールメイキングのアプローチを行っています。これまでもパブリックコメントの提出などを実施してきましたが、今後は法律や制度策定の段階から積極的に関与していくことも重要です。

例えば、「CR LIMEX(カーボンリサイクルライメックス)」は工場から排出されるCO2と廃棄物から作りますが、まだ世の中にほとんど存在していないプロダクトです。ただ、カーボンニュートラルへの貢献を推進できる優れたプロダクトであるので、どうすれば市場で有利になる環境が作れるかを考えています。一案として、CR LIMEXの普及に向けて、CO2排出削減に対する金銭的なインセンティブをつける「カーボンクレジット制度」の活用を検討しています。


■資源循環事業について
大場
:資源循環事業については、TBMとしての提言に加えて、TBMが運営事務局となり設立した「一般社団法人資源循環推進協議会(以下RRC)」として、今後は会員の皆様と協業・連携しながら、提言していく機会が増えてくると思っています。

資源循環を行う中で、リサイクルを主体となって行う静脈産業だけでなく、製品を作っている動脈産業や金融機関、地方自治体、スタートアップや大企業と連携して政策提言することの影響力はかなり大きいです。

TBMは、LIMEXやCirculeXを通してものづくりの動脈産業を行っているだけでなく、横須賀サーキュラー工場やMaar事業部の取り組みを通して、自らも資源循環の事業者の立場として事業を行っているため、業界の課題や現場の一次情報を把握しています。これらの強みを生かして、RRCを取りまとめ、政策提言を推進しています。

また、資源循環に関する設備投資や仕組みづくりの補助金の情報収集や獲得等にも取り組んでいて、これからは必要な補助金制度の策定なども国と連携して作っていきます。



#4. 「ルールを創る」「ルールを変える」挑戦のやりがい


ー様々なステークホルダーの方々と連携してルールメイキングを進められていると思いますが、大変なこと、それと同時にやりがいに感じることを教えてください

笹木:多様なステークホルダ―の方々の賛同や協力を仰ぎながら、業界のコンセンサスを形成していくことにやりがいを感じています。

資源循環に関わる法制度は、近年、変化が激しく、業界全体の在り方や政策が大きく動いている感覚があります。
今後は、動静脈連携のように、これまで静脈産業が取り組んでいた資源循環について、動脈産業も一体となってバリューチェーンをつくっていく動きが加速していきます。このように業界の在り方が変化していく時流の中で、TBMやRRCとして業界を牽引する側に立って行動していくことが必要だと感じています。

武澤:ルールに変革を起こすためには、1社ではなく複数社の必要な声を集めた政策提言や、社会実証などを行っていく必要があると思っています。企業を超えた連携の輪が拡がることと比例して大変さもありますが、大変な分だけやりがいを感じています。
協力を仰ぐ際には、目指すことや意義をしっかり語り、対等な立場でこちらがリードし引っ張っていくという気概やスタンスを心掛けています。

また、私は、TBMが事務局となって設立したRRCの運営事務局を立ち上げ期から担当しています。
企業や業界の枠を越え、資源循環市場の創出に向けて取り組みを進めており、現在は約170の企業・団体に入会いただいています(2024年7月時点)。

官公庁や会員の方々と連携しながら、RRCから、日本の資源循環のルール自体にも変革を起こしていきたいと考えています。そして、RRCに期待や関心を寄せていただけていることは、TBMとしてもとても嬉しいことです。例え負の側面に向き合うことがあっても、ポジティブなエネルギーを持ちながら行動しています。

加藤:私は3ヶ月前まで役所にいたため、政策提言をされる立場でした。ただ、役所で働いていると、どうしても外の流れやニーズが見えづらくなることがあり、公的機関勤務時に「こうすれば世の中がより良くなる」という意見を外部から言ってもらえて助かったこともありました。自身のキャリアからこうした行政側のニーズを熟知しているので、政策渉外部の業務がそのまま世の中を良くする行動に直結する実感を得やすいことはモチベーションアップにつながります。

ただ、政治の世界にはタイミングと流れがあります。良い意見は良いタイミングで切り出す必要があるので、そこは常に意識しています。

政策渉外部のMission/Vision/Values


#5. 社会的インパクトを最大化させ、最速で最短の事業成長を牽引する


ー今後部署として、社内外にどのような影響を与えていきたいですか?

加藤:「既存のルールを変える」という発想で、他部署の人に頼ってもらえる存在になり、新素材の普及や資源循環の促進を大きく躍進させていきたいです。

営業や開発の方々は、「既存のルールの中でどのように市場で勝っていくか」という市場戦略の面では非常に長けていると思います。しかし、私たち政策渉外部が行っているものは「非市場戦略」と言って、「どのように事業環境を変えるか」という発想です。

そのため、政策渉外部の業務は単独で成立せず、必ず他部署との連携が必要になります。今後も他部署と積極的に連携を取り、新素材の普及や資源循環を促進させるルール創りを行っていきます。

大場:社外においては、今までのルールを打破して、新素材や資源循環の領域で新しい市場を創り出していきたいです。再生可能エネルギーのビジネスなどは近年大きく伸びていますが、資源循環ビジネスに関しては、一定の市場があるものの、まだまだ夜明け前です。そのため、正しく市場定義を行い、活性化することが政策渉外部の役割だと考えます。

社内においては、規制緩和等を通して営業機会を創出し「売りやすい」状況を創る、事業が行いやすい状況を創ることも重要だと考えています。

新たに政策を提言し、ルールが変わることは、周りに大きな影響を与えます。社内で新たな仕組みを創る必要や、新たなルールに合わせた試験などを行わざるを得ない状況になることもあります。関連各所で新たな調整・検討が発生するため、大変になると考えていますが、新市場・新たなルールの中で揉まれて強くなることも重要なことだと考えています。そのような市場に揉まれて自社が強くなれる場を創造することも、私たちがやらなくてはいけないことです。

笹木:今の資本市場の世の中で自由競争があるのは当然なので、政策渉外部としては、その中でいかにTBMの競争力を高めていくかを強く意識する必要があります。そして新素材を広め、資源循環を推進してイノベーションを起こし、TBMとしても社団としても、政策提言能力を高めなければなりません。

環境や社会課題の解決のために、今までも多くのルールが塗り替えられてきました。政策渉外部としてその歴史をきちんと学び、勉強する必要があります。TBMのVisionでもありますが、まさに「過去を活かして未来を創る」ことを体現したいです。

政策渉外部のVisionは、「スーパー高速社会実装」です。
これは政策渉外部が鎌倉で合宿した際に全員で考えたものです。社内外の情報のハブとなり、社会的インパクトを最大化する活動を、最短、最速で進めていきます。

そして、「次代の道を創り道を拓く」ことが私たちのMissionです。ロビイングの力でサステナビリティ革命を引き寄せて、新市場創出して新しいパラダイムシフトを起こしていきます。