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ハワイから観光客が消えた日

さる3月23日午後4時30分から、4月30日まで、オアフ島全域で外出制限令が発効しました。

そしてその2日後、ハワイで感染者数が90人に達したことを受けて、イゲ知事が3月25日から4月30日までハワイ州全島に外出制限令を発令しました。

これは旅行者にも当てはまります。3月26日以降にハワイに到着する旅行者全員、14日間のself quarantine (自己検疫)でホテル待機の命令です。

もっとも、ホテル待機の期間が過ぎても、基本的に不要不急の外出禁止なので、旅行という感じもしないかもしれません。
この記事ではそんなハワイの今をお伝えしたいと思います。

「水際対策・封じ込めのフェーズ」から「市中感染のフェーズ」になったからこそ意味のある外出制限

パンデミック(世界的流行)になってから、今さら行動制限をする必要があるのか?というのは、いつも議論の出るところではあります。

しかし、今回のコロナウイルス感染症(COVID-19)に関しては、インフルエンザと比べて潜伏期間が長いこと、ウイルスが環境中に安定して存在できる期間が長いこと、そして今のところ有効な治療薬が見つかっていないことなどを考えると、社会全体のためには慎重になるべき、というのが個人的な意見です。

軽症例でも検査できる状況なので、死亡率(死亡者数/総感染者数)はどんどん低くなっています。これはある意味当然です。
流行当初は検査体制も整っていないし、「おや?何か原因不明の重症肺炎が続いているぞ、、、」という感じで、重症例のみしか検査されません。このタイミングでは、軽症例はあえて検査されないので、死亡率が高く出ます。大流行期になって検査体制が整う頃には、軽症例も多く検出されるようになりますので、死亡率は低くなっていきます。また、真の死亡率は真の感染者数がわからないと出ないものなので、死亡率はとても流動的なものだし、真の値はわからないといえるでしょう(全世界の人をいっぺんに検査すれば、その瞬間の死亡率は出せますが、そんなことは不可能ですので)。

当初の中国のデータでは、若年者層の重症例が少ないという報告が出ていました。今でも若い人に重症例が「少ない」のは多分本当ですが、「ならない」わけではない、というのが実情です。アメリカの最近のデータを見てみると、若い人の重症例もかなり報告されるようになってきましたし、実際にハワイでも、若くて基礎疾患のない、いわゆる「健常人」の重症例はいます。

そこへきて、日本は今のところ感染者数が少なく、重症例も他の国に比べて少ないのは、実はかなり注目されています。

もともと社会的距離をとりやすい文化的背景、清潔の観念が浸透していること、マスクをつけたり手洗いをすることが今回のパンデミックに『保護的』に働いていると考えられています。

ただ、日本の感染率や重症化が少ないのはとても素晴らしいことですが、世界でまだ流行のピークに達していない今だからこそ、さらに気をつけて感染を拡げない、あるいはピークを遅らせる努力が必要だと思います。これは、「社会全体を守る」という視点からも重要です。

全世界的に行われている「外出禁止(ロックダウン)をして強制的に社会的距離をとること」は、文化的に感染が拡がりやすい国々や、多様性が裏目に出て統制しづらい国々では特に重要であるといえます。

感染がどのように拡がるのかをシミュレーションした興味深い記事がこちらです:

https://www.washingtonpost.com/graphics/2020/health/corona-simulation-japanese/

そして、感染が拡がる様子と、現在考えられる対策をわかりやすいアニメにしたビデオがStanford大学医学部から発信されています:

ハワイの現状・トランプ大統領の手紙

自宅にこんな手紙が届いていました。
トランプ大統領から国民への要請です:

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個人での健康管理をすることとともに、「感染を拡げないために」健康な人ができることを謳っています(左下の青い四角部分)。社会を守るために、全員がワンチームとなることが重要だというメッセージです。

ハワイの現状・街の様子

3月24日のアラモアナショッピングセンターです。ハワイ随一の規模を誇るショッピングモールですが、この通り全く人がいません。この日は、レストランのテイクアウトを受け取るために訪れました。

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↓こちらは3月27日のカカアコ・ワードの様子。
金曜日の夕方なので、普段ならたくさんの人で大賑わいなのですが、この通り人気もマダラです。

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レストランの中での食事はできませんが、テイクアウトはできます。大抵、電話かネットでオーダーしてから取りに行きます。こちらはカカアコの人気店・Piggy Smallsです。道路はほぼ歩行者天国状態なので、みんな店の前に路駐して受け取ります。

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ハワイの現状・スモールビジネスを社会で守る取り組み

『ローカルのスモールビジネスを社会で守ろう』というコンセプトのもと、こんな取り組みも行われています:

Central Pacific Bankという銀行が融資しているレストランでテイクアウトをオーダーすると、1回のオーダーにつき$100までは半額をキャッシュバックしてくれる、というものです。要は、$100までの食事が半額になるというのです。条件は、SNSに食事とレシートの写真を指定されたタグ付きでアップすること。SNSのアカウント一つにつき1日1回可能なので、複数のアカウントがあれば、かなり節約できます。かなり太っ腹!!
こうやって、困ったときは助け合おう、ということなのでしょう。もちろん、銀行としては、融資先が潰れてしまうのはマズイので、協力するのは当然かもしれませんが、消費者に利益のある形での対応策は素晴らしいです!

ハワイの現状・公園

外出禁止令とはいえ、日常的に行う運動のために外出することは許可されています。ウォーキング、ハイキング、ジョギング・ランニング、サイクリング、そしてサーフィンは許されていますので、外を歩いている人はほぼ運動している人です。そこで、近所のアラモアナビーチパークに散歩に行ってみました。
↓アラモアナビーチパークに入るには、半ループ状になっている車道の両はしから入るか、川を渡って入ります。全ての橋に立ち入り禁止の看板が出ていましたが、すでに誰かによってどけられていました、、、(注・現在は板によるバリケードでブロックされて入れないようになっています。)

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↓道路からアクセスすると、歩行者天国状態です。散歩でビーチに行くことはできますが、公園内に駐車してはいけないので、車では来られません。みんなジョギングしたり、サーフボードをかついでビーチに来ていました。

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↓普段はホームレスの溜まり場になっているトイレ付近も、すっかり人がいなくなっていますが、むしろ近寄りがたい雰囲気。

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↓こちらは別の日のカイルアビーチパーク。車道にあるストリートパーキングも駐車禁止になっていて、パトカーが巡回しています。停めると罰金は免れないでしょう。

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ハワイのビーチは全て州の管理下にあり、ほぼ全てのビーチは併設されているビーチパークからアクセスします。
↓ここは数少ない、公道からビーチに直接アクセスできるポイント。

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↓やはり、地元の人がビーチでの散歩でリラックスしていました。

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まとめ

ロックダウン後のハワイの現状を報告しました。
今のところ、みんな辛抱強く守っています。その中で大打撃を受けている飲食店は、地元の力で救おうと、さまざまな取り組みが始まっています。
こういったスピード感は素晴らしいなと思います。

ハワイは現段階で感染者数が120人です。検査数がおよそ6000人、死亡者は公式にはゼロです。外出禁止令が発効された翌日、飛行機でハワイ入りした人はおよそ1600人、そのうちおよそ300人がハワイ居住者およびフライトクルー、残りが旅行者とのこと。この時期は毎年、旅行者が1日30000人訪れるので、5%まで落ち込んでいることになります(95%減)。

こうした徹底的な取り組みが、感染のスピードを遅らせ、社会全体を守ることにつながると信じています。もちろん、経済的・精神的な代償は大きいものですが、『空けない夜はない』ともいえ、必ず終わりが来るはずです。

日本は感染が拡がり始めた初期の対応(学校の休校措置など)が世界的に注目・評価されました。また、日本の文化的な背景が疫病に対して抵抗力が強いのも、素晴らしいことだと思います。ただ、世界的にはまだ感染者数が増えている段階ですし、気を緩めると、再度感染が拡がる危険性もあります。

今度は日本が後出しジャンケンをできる立場なので、手遅れになる前に、社会を守るための対策を考えて欲しいな、と切に願っています。大事なのは、全てを禁止することではなく、不要な外出を避け、大きなクラスターをつくらないことです。あとは、日本人の文化的・精神的な強さで、この難局を乗りきれると信じています。

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